米ツアー撤退を宣言した有村智恵(28)。3年間の苦労を帳消しにする″智恵人気”を呼び戻せるか?!

ティーグラウンドで準備する有村智恵(左)。右はアン・ソンジュ(韓国)
ティーグラウンドで準備する有村智恵(左)。右はアン・ソンジュ(韓国)

米国ツアーに挑戦していた女子プロゴルファーの有村智恵(28)が、突如米ツアーを撤退して日本ツアーに復帰すると宣言して驚かせています。といっても、3年間の米ツアー生活は苦労続きで実績が上がらず、今季もメインツアーの出場権はなく下部ツアーのシメトラツアーを主戦場にして辛い米国4年目に入っていました。4月に一時帰国しているとき、故郷の熊本で地震に遭遇、実家も大きな被害を受けて家族も知人宅に身を寄せるなどしたアクシデントを受け「自分の中でいろいろ考えた結果、帰国を決断した」(有村)とのことです。日本では06年にプロテストトップ合格を果たし、5年間(08~12年)で13勝して″ポスト(宮里)藍”ポスト(上田)桃子”ともてはやされ、13年から米ツアーに本格挑戦していました。まだ28歳。キュートなルックスで人気のあった智恵の″再起”が待たれます。

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飛距離よりも正確なショットを身上とする有村智恵。
飛距離よりも正確なショットを身上とする有村智恵。

震度7を連発した4月14日と16日の熊本地震は、一時帰国中だった有村智恵に大きな衝撃を与えました。15日から開催予定だったKKT杯バンテリンレディス(熊本空港CC=中止)にエントリーしていた有村の実家は、震源の益城町に隣接する御船町。「もうベッドにしがみついて動けなかった。仏壇や大きな棚も倒れてガラスも飛び散った」(智恵)と、恐ろしかった当日を振り返っています。国内開幕戦のダイキンオーキッドに出場、1打足りなくて予選落ちしていた有村にとっては貴重な2戦目でしたが、それどころではありませんでした。3年間を米ツアーで戦い、日本ツアーのシード権は昨年限りで切れており、現時点での国内戦は主催者推薦など最大9試合にすがるしかありません。KKT杯バンテリンもフイにしたこの後、推薦を受けているのはとりあえずサントリーレディス(6月9~12日、兵庫・六甲国際)とアース・モンダミンカップ(6月23~26日、千葉・カメリアヒルズ)です。

コンパクトでしっかりしたショットを放つ有村智恵。
コンパクトでしっかりしたショットを放つ有村智恵。

12年のQTを経て13年から米ツアーに本格挑戦した有村。1年目はショップライト・クラシック5位、アーカンソー選手権7位、マラソン・クラシック7位など、トップ10にも入る頑張りでした。アーカンソーの2日目にはトップに立つほどの勢いがありましたが、飛距離も足りない有村のゴルフでは米ツアーの長丁場では苦しかった。実績が出ないと、武器にしてきたショートゲームやパットにも苦しむようになって辛い日々を過ごしました。1年目、13年の賞金ランクは61位でシード権を確保しましたが、2年目の14年は106位でシードを失い、3年目の15年もシードなしで臨んだものの、出場は僅か8試合にとどまり賞金ランクは132位にまで落ちました。

昨季10月には下部ツアー最終戦、シメトラ・ツアー選手権(フロリダ州デイトナビーチ)にも森田遥らとともに出場。最終日68と伸ばして8位に入りましたが、年間賞金ランクは15位に終わり、10位までが獲得できる16年のツアーシードには届きませんでした(森田遥は賞金ランク11位)。

ショットを放ち、打球を追う有村智恵。
ショットを放ち、打球を追う有村智恵。

12月に同じフロリダ州で行われた16年度の出場権を争う最終予選会(5R競技)。これにも挑戦した有村は、通算2オーバーで43位。20位までに与えられる優先出場権は獲得できず、21位~45位には制限付きの出場権がもらえますが、有村は下部ツアーのシメトラ・ツアーに専念することを宣言していました。

米ツアー4年目を迎えた有村は、年々下降する成績には、やや自信を失いかけていたのも事実です。生まれは火の国・熊本ながら、2年年上の宮里藍を慕って宮城・東北高へゴルフ留学。メキメキ腕を上げて06年のプロテストは2位に7打差をつけてトップ合格。宮里藍に続く有望株には若くして多数の企業から所属契約などのオファーが殺到。08年にはIT企業として世界一ともいわれた日本ヒューレット・パッカード社と早々と所属契約を締結。その他4社とのスポンサー契約を結ぶなどの売れっ子ぶりでした。日本で戦った5年間では日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯のメジャーも含めて計13勝。日の出の勢いで米ツアーへと階段を上げていっただけに、米国での″挫折”は苦しかったでしょう。

大勢のファンの中、ショットのあとティーグラウンドを降りていく有村。
大勢のファンの中、ショットのあとティーグラウンドを降りていく有村。

故郷での地震ショック?もありましたが、3年間の米ツアーでの苦節を糧に、もう一度日本ツアーでやり直そうとの思いに至ったのは正解かもしれません。復帰宣言のあとは、いま一度米国に戻ってシメトラ・ツアーに出場。実績は依然上がっていないようですが、この後は全米女子オープン日本地区最終予選(5月30日。茨城・大利根CC)に出て、6月のサントリーとアース・モンダミンに備えます。国内女子のレベルも上がっているのでそうたやすくは勝てないかもしれませんが、米国に比べれば距離も短く、グリーンの難易度も低い日本のコースならば、28歳の有村にもチャンスは残されているはずです。もう一度、あの″智恵人気”を呼び戻せるかどうか。メンタル面での立て直しが上手くできれば、の話ですが・・。