リオ五輪、ゴルフ強豪選手の辞退相次ぐ「ジカ熱」騒動。日本勢はどうなる?7月11日決定へあと1試合。

長嶋茂雄招待セガサミー杯で断然の強さをみせて今季初優勝した谷原秀人。世界ランク日本勢では4位から2位にランクアップするのが確実とみられる。
長嶋茂雄招待セガサミー杯で断然の強さをみせて今季初優勝した谷原秀人。世界ランク日本勢では4位から2位にランクアップするのが確実とみられる。

112年ぶりにオリンピックの正式競技に復帰するゴルフの日本代表争いが白熱しています。次週、日本プロ選手権日清杯終了後の7月11日時点での世界ランキングを基に決定します。リオ五輪に出場できる日本勢の枠は、男女各2人ずつが濃厚。男子では米ツアーで戦っている世界ランク16位の松山英樹と、先週の長嶋茂雄招待セガサミー杯に勝った谷原秀人がランクアップして池田勇太と入れ替わり日本勢2位に浮上するのが有力。

女子はやはり米ツアーを主戦場とする野村敏京と大山志保が現時点での日本勢の1、2位です。男女とも今週最後の1試合で日本勢「2位」が決まる大激戦になり、運命の日まであと1週間。ジカ熱感染や治安不安を懸念して出場を辞退する世界のトッププレーヤーが続出、日本の谷原も「もし資格を得ても行きたくない」ともらすなど、不穏な状況も隠せない中で、日の丸を背負って戦う選手はだれになるのか、注目が集まります。

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シャープなスイングが魅力の大山志保。ここ1ヵ月、背中の痛みで実戦から遠ざかっているのが心配。
シャープなスイングが魅力の大山志保。ここ1ヵ月、背中の痛みで実戦から遠ざかっているのが心配。

男子の世界ランキングは、米ツアーで今季1勝(2月のフェニックスOP)、トップテンにも5回入っている松山のリードは他を大きく引き離しています。松山の世界ランクは16位。日本ツアーで戦う池田が同じ1勝し、トップテンにも5回入っているにも関わらず、世界ランキングは90位あたりを前後し、松山とは大差がついています。世界ランクポイントは、同じように試合をしても米ツアーが高ポイントをもらえます。世界ランクを上げるためにはやはり米ツアーへ挑戦することが早道ということです。
代表選手決定は大詰めにきて、日本勢2番手争いは大混戦の様相になってきました。男子では池田が2位をキープしていましたが、セガサミーに勝った谷原が先週までの日本勢4位から一躍2位にランクアップする可能性が出てきました(4日発表)。この二人に続くは片山晋呉ですが、いずれにしても今週の日本プロで「日本勢2位」に決着がつきます。

米国ツアーで戦う宮里美香。世界ランク女子日本勢では、「2位」の大山志保を微差で追う「3位」。今週の全米女子OPが最後の勝負だ。
米国ツアーで戦う宮里美香。世界ランク女子日本勢では、「2位」の大山志保を微差で追う「3位」。今週の全米女子OPが最後の勝負だ。

一方女子の方は23歳の野村敏京が、2月のISPSハンダ女子豪州オープンで米ツアー初優勝、4月のスウィンギングスカート・クラシックで早くも2勝目を挙げるなどでぐんぐんランキングを上げ、五輪候補の筆頭に急浮上しました。現在世界ランク22位。41位の大山志保に大きく水をあけており、日本代表1位は決定的です。

しかし女子ももう1枠を狙っての「2位争い」がし烈です。ポイント微差で米ツアー主戦場の宮里美香と日本ツアーの渡辺彩香が最後の勝負をかけます。今週7日からメジャーの全米女子オープン(カリフォルニア州)が開催され、この3人とも全米には出場するので、まさに直接対決の4日間。ここでの順位によっては「2位の座」が入れ替わります。

世界ランク女子日本勢「4位」の渡辺彩香。野村敏京に続く代表1枠を宮里美香と争う。
世界ランク女子日本勢「4位」の渡辺彩香。野村敏京に続く代表1枠を宮里美香と争う。

日本勢2位をキープ、リオ五輪出場を早くから熱望している大山は、代表決定への最後の試合とあって6月30日、早々と渡米しました。「何とかいまの位置を死守して日の丸を背負いたい。気持ちでカバーする」(大山)と、意気込みを語りましたが、体調不良が心配されています。5月頃から背中痛に悩まされ、5試合を欠場。復帰を目指していた先週のアース・モンダミンカップも、新たに首痛が加わってこれも欠場。1ヵ月余にわたって実戦から遠ざかっているのは不安材料です。しかも設定が厳しい全米最高峰のメジャーで、ポイント微差の美香と彩香と争う最後の戦いはシビアです。

 

世界ランク16位で日本選手最上位の松山英樹。「ジカ熱」騒ぎを乗り越えてリオ五輪に挑むか?!
世界ランク16位で日本選手最上位の松山英樹。「ジカ熱」騒ぎを乗り越えてリオ五輪に挑むか?!

ところが、ここへきてリオ五輪出場選手に″辞退〝が続発しているのは問題です。現地で流行しているといわれるジカ熱への感染と治安の不安が選手たちを怖がらせているのです。ゴルフ世界ランク4位、アイルランド代表として五輪出場が決定的だったロリー・マキロイが6月下旬に出場辞退宣言。メジャー通算4勝、27歳のマキロイは、数年以内に婚約者と結婚する意向とかで「リスクがあって五輪に出場する気になれない。自分や家族の健康が大切」と、マネジメント事務所を通じてコメントを出しています。

マキロイに代わってアイルランド代表として出場が予測されたグレーム・マクダウエル(英国)も出場しない意向を表明。これに続き、男子ゴルフの世界ランク1位、28歳のジェーソン・デー(豪州)も辞退すると明らかにして波紋は広がっています。やはりジカ熱感染を恐れてのものとみられ、ツアー10勝、昨年の全米プロでメジャー初制覇を果たしているトッププレーヤーの辞退は衝撃的です。賞金ランク12位のブランデン・グレース(南ア)もジカ熱を理由に、豪州のアダム・スコットは多忙を理由にそれぞれ不参加の意向を表明。

女子でも米ツアー1勝のリーアン・ペース(35=南ア)が、ジカ熱への懸念から出場辞退の声明。「難しい決断だったが、私自身と未来の家族の健康を最優先にしたのを理解してほしい」とコメントしています。

世界ランク日本勢2位につける池田勇太。
世界ランク日本勢2位につける池田勇太。
世界ランク男子日本勢3位の片山晋呉。今週の日本プロで「日本勢2位」への逆転なるかどうか?
世界ランク男子日本勢3位の片山晋呉。今週の日本プロで「日本勢2位」への逆転なるかどうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうした流れを受けて、日本の代表が決定的な松山は、まだ出場を明言していません。「よく考えて決めたい」(松山)と最後まで悩んでいるようですが、近々意思表示を行うはずです。日本代表のヘッドコーチ就任が決まっている丸山茂樹プロは「(松山も)相当迷っているようだ。こればかりは個人戦だし、それぞれの意向を尊重しなくてはいけないのかな」と、海外の強豪の辞退続きに表情を曇らせています。

日本帰国時に日本外国特派員協会でインタビューに答える松山英樹(2013年5月)
日本帰国時に日本外国特派員協会でインタビューに答える松山英樹(2013年5月)

松山に続き、セガサミーで優勝してポイントを稼いだ谷原は、日本勢4位から2位にまでジャンプアップしそうです。しかし、優勝後の会見では「いまのブラジルには行きたくない。ジカ熱もそうだけど、治安に対する不安がぬぐえない。誰が守ってくれるわけでもないでしょう」と、日本勢2位が決定しても辞退する方向を示しています。日本勢2位をずっとキープしてきた池田は「五輪には出たいとう気持ちは変わらない」との話にとどめています。もし、松山も辞退して1、2位が空位になったらどうするのか。代表選手決定の最終局面での難問題勃発!その行方が気がかりです。

 

(註 松山英樹は4日、リオ五輪への出場辞退を発表しました。)