眠れる獅子・比嘉真美子を目覚めさせた! 4年有余の大スランプから蘇ったPO勝ち

強敵キム・ハヌル(韓)をPOで下して復活Vの比嘉真美子。眠れる獅子が目覚めた!

″沖縄にヒガ マミコあり〝と、比類マレな素質を自他ともに認められたプロ。日本女子アマ2連覇、ナショナルチームのエースとして活躍してプロ一発合格。ツアー本格参戦したその年には早々と2勝してトッププロの仲間入り。が、その直後に大スランプに襲われどん底に落ちた女子プロゴルファー。その地獄から再び不死鳥のごとく這いあがった壮絶なドラマを演じた人は、プロ6年目の比嘉真美子(23)。先週の「NEC軽井沢72」で、今季3勝、すでに1億円を超えて初の賞金女王へ突っ走るキム・ハヌル(韓、28)をプレーオフで下した4年2ヵ月ぶりの通算3勝目。奇跡にも近いカムバックは、実力なしでは成しえない快挙です。マミコの復活劇に迫ってみます。

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軽井沢特有の濃霧に見舞われ、乳白色に染まった軽井沢北コース。初日から9人がホールアウトできなかったが、23歳の比嘉はコースレコードにあと1打と迫る8アンダー、64で回り、いきなりトップに立ちました。3打差の2位には上昇著しい辻梨恵。4打差の3位には今季絶好調のキム・ハヌルら6人がつけるし烈な展開を予感させました。2日目も前半で4つ伸ばし、後半はバーディーなしの1ボギー。比嘉は3つ伸ばしながが、65を出したキム・ハヌルに並びかけられ、トップを分け合いました。「ビッグスコア(初日)の次も60台ですから、悪いプレーではなかった。いままで想像もできない悪いプレーをたくさんしてきたから、ミスに動じなくなりました。最終日も焦らず、欲張り過ぎずやります」と、長いドン底生活が続いた比嘉らしいコメントで前を見据えていました。

最終日は、怖れた通りキム・ハヌルの粘りの追撃に苦しめられました。18番では5㍍のバーディーパットをハヌルに沈められて比嘉の″1打リード〝は吹っ飛びました。プレーオフ。普通ならば追われる方は浮足立ってもおかしくありません。しかし、ここで踏ん張れる実力者・比嘉の強さが戻ってきました。18番(パー4)でのプレーオフ1ホール目、ハヌルがグリーン左のラフに外したのに対し、フェアウェイから127ヤード、比嘉のPWでの一打は、グリーン手前の池を越えカップ横40㌢にピタリと止まるスーパーショットでした。ハヌルの勝負をかけたグリーン脇からのチップが外れ、比嘉は歓喜のバーディーパットを静かに沈めました。1億円プレーヤーキム・ハヌルをねじ伏せた比嘉の快勝。初日からのトップを守りきった勝利でした。

沖縄・本部中入学時からゴルフに本格的に取り組み始めた比嘉。夏の全国中学校選手権に勝ち、本部高2年の10年に日本ジュニア優勝。11年には日本女子アマ、日本女子オープンローアマの2大タイトル。12年には日本女子アマ2連覇とタイトルを総なめ。12年のプロテスト一発合格。ステップアップツアーにはすぐ1勝。ツアー最終予選会(QT)には10位でツアー出場権を取りました。ツアー本格参戦となった13年4月のヤマハレディスではテレサ・ルー(台)、大江香織をPOで破ってツアー初優勝。2ヵ月後のリゾートトラストレディスで2勝目と快調な足取りで階段を登っていきました。8月には全英リコー女子オープンにも初出場して堂々7位。シーズン終了後はLPGA新人賞、プロスポーツ新人賞、GTPAルーキー・オブ・ザ・イヤーなどタイトルも総取りでした。

小柄ながら飛ばし屋、比嘉真美子のフルショットはキレがいい。

あれほど強かった比嘉真美子が、ツアー2年目の14年の後半から落とし穴にはまったようにショットに変調が襲ってきたのです。「ティーグラウンドに立つと、脈が速くなって、正常な状態で打てなくなった。最初、逆球が出始めて気持ち悪くなり、そこからハマってしまった」(比嘉)という。15年は出場17試合連続予選落ちするなど、別人のようなスランプに襲撃されて試合にならず、シード陥落。16年も前半戦は18試合で13度の予選落ちで苦しみ「もう2度と優勝なんて出来ないんだという気持ちになって、ティーショットが思うように打てなくなったときは本当にやめたいと思ったときもあった」(比嘉)と述懐しています。食事ものどを通らず、1ヵ月で4~5㌔痩せてしまったという最悪、どん底の真美子を救ったのは家族。母と姉が支えてくれて母には「死ぬわけじゃないから楽しくやったらいいじゃないの」といわれ「そうだ、死ぬわけじゃないからいいや」と思い直したという。姉は何も言わず、サポートしてくれました。ずっと近くで見守ってくれた姉の心の温かさと母の寛大さに「感謝しかない」と振り返ります。

16年後半になって少しずつショットが戻ってきたのです。「これといったきっけけで治ってきたわけじゃなく、毎日の少しずつの積み重ねで変わってきた。去年の終盤はよくなってきたけど、まだ気持ち悪さはあったですね。完全に克服できたかなというのは、ここ最近です」。 昨季、9月を境に5回トップ10に入るゴルフをみせて賞金ランク34位。見事にシード復活を果たしたのです。

今季、勝った軽井沢でドライバーをキャロウェイからピンに替えました。アイアンも一番手ずつシャフトを短くして、コントロール性をよくしたのです。クラブ契約はこの2年フリーになっているので、シーズン真最中にこんな気分転換もできたのでしょう。

★キム・ハヌルに最終18番で追いつかれてプレーオフになったのにも負けなかった比嘉の優勝コメントは?

「ハヌル選手がグリーンオンした時点で彼女は入れてくると思ってました。すぐ、プレーオフへ気持ちは向いていました。完璧な、きょうイチのショットが、プレーオフのセカンドで出たのは嬉しかった。ハヌル選手はトータル的には上手くて、賞金ランク1位を快走するプレーをしていました。でも私は特別ハヌル選手だからというのではなく、自分がバーディーをとることだけを意識してやってました。自分のプレーに集中してたから他の選手は気にならなかった。人がいいショットをしても、自分の気持ちが左右されることはなかったです。思いのほかリラックスしてやってましたけど、勝てたのは本当に嬉しい。もう放心状態でした」

13年、比嘉がいきなり2勝したルーキーイヤーのときは「男子は松山、女子は比嘉」といわれました。アマチュア時代、ともにナショナルチームでエースとして戦った仲です。以来、大変な経験と遭遇してきた比嘉、「いまでもそうなるように頑張りたい。世界の舞台で素晴らしい活躍をしている彼をテレビで見て、すごい刺激になっています」といっています。いま最強のキム・ハヌルの追撃にも動じず、プレーオフで最高のショットを放って破ったゴルフは、並みの選手にはできないことです。この1勝は、眠れる獅子・比嘉真美子を完全に目覚めさせるのではないでしょうか。

(了)