QTでウェッジを置き忘れ、クラブを車に閉じ込めた19歳。ツアー6試合目で初優勝した新垣比菜(19)の″大物ぶり!〝

ルーキーイヤー6戦目でツアー初優勝した19歳・新垣比菜
ルーキーイヤー6戦目でツアー初優勝した19歳・新垣比菜

勝みなみ、畑岡奈紗に続く″黄金世代〝19歳、新垣比菜(あらかき・ひな)、堂々のツアー初優勝!開幕第9戦、サイバーエージェント・レディス(静岡・グランフィールズCC)、初日67で飛び出した新垣は、3日間トップを守る″完全〝で、昨季の賞金女王・鈴木愛らに競り勝つ魔力?がありました。アマチュア時代、数々の好記録を残した比菜は、昨春沖縄・興南高を卒業。7月のプロテストに合格(9位)。最終予選会は45位でツアー前半戦の出場は限定的でしたが、ツアー優勝で今後すべての試合にフル出場できる門戸が開かれました。宮里藍が昨年引退した翌年に、同じ沖縄から藍に憧れてゴルフを始めた新しい″金の卵〝。昨夏のプロテスト合格組では嬉しい優勝一番乗りでした。

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初日からトップを走った新垣でしたが、緊張感が高まる最終日のゴルフはいささかラッキーでした。3打差首位でスタートした前半から「心臓が痛くて恐怖心があった」というドキドキゴルフ。10、11番で池ポチャなどして連続ボギー。一時は鈴木愛と永井花奈に首位を明け渡す苦しさでした。しかし、「抜かれて吹っ切れた」(比菜)と15番で3㍍のバーディーパットを沈めて再び首位タイへ。終盤パーをキープしている一方で、パットの名手・鈴木愛がこともあろうに17番で5㍍から3パット。18番はバンカーに落として取り返しのつかない2ホール連続ボギー。比菜は単独トップに返り咲いて1打差優勝が転がり込んできたのです。
「まさか優勝できるとは思わなかったのでびっくりです。夢がかないました」と19歳の比菜。ツアー本格参戦6戦目(ツアーは9試合)での初勝利に酔いしれた比菜でした。

平均飛距離250ヤード超の飛距離を誇る新垣比菜
平均飛距離250ヤード超の飛距離を誇る新垣比菜

1㍍65、56㌔の長身。平均飛距離250ヤード超という長打力が売り物。父の影響で8歳からクラブを握ったキャリアは、パットを含めたショートゲームでもひけをとりません。南国・沖縄育ちの恵まれた環境で培ったゴルフは早くから注目を集め、13歳で沖縄での開幕戦、ダイキンオーッキッドレディスに初出場。興南高2年の15年にはアマで3週連続トップ10入りするツアー史上初の快記録も樹立。同じ15年の下部ツアー「ラシンク・ニンジニアRKBレディス」で、史上3人目のアマチュア優勝を飾って話題になりました。16年は日本ジュニア優勝も果たし、昨年7月にプロテスト一発合格と、トントン拍子で階段を駆け上がってきました。

今年4月にはダイキン工業と所属契約、ダンロップスポーツとはマネジメント契約と、相次いで強力なサポートを得たばかり。「契約を戴いて2試合目で優勝できて、いい報告ができたのはよかったです」(比菜)と、ラッキーガールぶりには目を見張るばかりです。
何か幸運を秘めたプロゴルファーなのかもしれません。

ショットだけでなくパットも好調な新垣比菜。長打が生きた!
ショットだけでなくパットも好調な新垣比菜。長打が生きた!

しかし、この比菜にハプニングがつきまとっているのも笑えぬ話です。昨夏のプロテストの第1ラウンドでの出来事。コースに着いてもクラブを入れた車のトランクが開かず、大慌て。貸しクラブでのプレーも覚悟したのですが、ティーオフ10分前に取り出せてギリギリで無事セーフ。とんでもない一幕でしたが、今度は秋のQT(予選会)最終日。10番グリーン附近にサンドウエッジを置き忘れて″遅延行為〝をとられて2打罰のポカ。45位に急降下して、出場試合が限られる位置でのフィニッシュ。「あのショックは大きかったです」と嘆いたのも当然でしょう。今季から新設されたリランク制度(前半戦の成績で後半戦への出場順位を入れ替える制度)で再生を期していた矢先に飛び込んできた「優勝」のご褒美。すべての問題は解消されましたが、ウッカリさんもひどい比菜ちゃんです。

同世代に有望選手がそろっているのが、いまの女子ゴルフ界です。アマチュア時代から注目されていた畑岡奈紗(19)はすでに国内メジャーをとって米ツアーに参戦中。比菜とプロテスト同期合格の勝みなみ(19)、吉本ひかる(19=滋賀短大付高出)、吉川桃(19=東京・日出高出)。それ以外にも三浦桃香(19=宮崎・日章学園高出)、原英莉花(19=神奈川・湘南学院高出)らの黄金世代がずらりと名を連ねています。中でもスケールの大きい新垣比菜が、昨夏のプロテスト合格組トップを切ってのツアー優勝ですから誇らしげでした。

今年4月、ダイキン工業と所属契約(期間1年)を結んだ新垣比菜。契約発表2試合目に優勝を果たした。 ダンロップスポーツともマネジメント契約を結んだ。
今年4月、ダイキン工業と所属契約(期間1年)を結んだ新垣比菜。契約発表2試合目に優勝を果たした。
ダンロップスポーツともマネジメント契約を結んだ。

★ルーキーイヤー6戦目の初優勝。新垣比菜のコメントは?
「予選通過はできるのに、いつも最終日に崩れて毎試合、ちょっとずつしか稼げなかった。今週は頑張りたいと思っていたけど、きょうも最終日伸ばせなかった。普段なら悔しいと思うけど、きょうは優勝できたので満足できます。途中首位から落ちたけど、15番から頑張れた。首位に立って最終ホールはティーショットも意外と冷静に打てました。勝った実感はまだないですが、緊張した場面できょうもミスが多かったので、そういうメンタル面とスイング固めをやっていきたいです。ずっと教えてもらってて、ぶつかることもたくさんあったけど、優勝できたのは、お父さんのおかげもあると思います。奈紗ちゃん、みなみちゃんは上の存在で、さすがだなと思う。でも、たくさん同世代でうまい子がいる中で、プロになって自分が最初に優勝できたのは嬉しいです。次の目標はあと1勝できるように。将来は世界とかオリンピックとか全米女子OPに出て、いい結果を出したいです」

″黄金世代〝といわれる中の一人。この1勝をきっかけに、畑岡奈紗や勝みなみをどこまで追い上げ、追い抜いて大物になれるかどうか?故郷の大先輩、宮里藍2世誕生へ、新たなスタートをきった異色の比菜ちゃんです。 (了)