Author Archives: 田中硫稀

6打差の圧勝!上田桃子(32)がみせた珍しい勝ちっぷり!「選手としてピークはいま!」― 12年ぶりに狙う女王の座

2位に6打差をつけて圧勝した上田桃子(左)と優勝カップを贈るヨネックス米山勉大会会長(ヨネックス会長)― 新潟・ヨネックスCC

32歳の上田桃子が″黄金世代ブーム〝に一矢を放ちました。最終日「65」の完ぺきなゴルフで通算13アンダー。2位に6打差をつけてヨネックスレディス(新潟)を初制覇です。今季2勝目で通算15勝。ヨネックスの契約選手として米ツアーから参戦してきた強敵キム・ヒョージュ(23=韓国)との最終組対決を制したのはあっぱれ。ニュー上田は賞金ランクは2位に浮上、12年ぶり2度目の賞金女王へ名乗りをあげてきました。

☆★    ☆★    ☆★

 

安定したショットを見せて最終日も「65」のベストスコアを出した上田桃子(新潟・ヨネックスCC)

昨年は41歳の大山志保。かってはあの不動裕理が3勝、全美貞(韓)が2勝、古閑美保や北田瑠衣ら多くの実力者が勝ったヨネックス・カントリークラブ。日本海を背にホールによっては遠く佐渡が望める景勝の地。しかし、油断のならない丘陵コース。大きなグリーンには微妙なアンジュレ―ションが潜んでいて選手を苦しめます。このヨネックスCCに舞台を移してから今年で21回目。歴代優勝者に実力者が多いのは、戦略性の高いコースを攻めきれるかどうかで優劣が決まるからでしょう。今回の上田も過去2位が3度。2016年はプレオフで敗れた悔しい思いの詰まったコースです。32歳のベテランになりようやく「リベンジができた」(桃子)喜びが滲んでいました。表彰式での優勝スピーチではマイクの前に立つとまず「こういう勝ち方で優勝できる試合なんて、そうめったにありません。ですからきょうは少し時間を戴いて長めのスピーチをさせてください」と、珍しい一言で口を開きました。女子ツアーは次々と出てくる若手の台頭。そして多くの選手が素晴らしいスイングで質の高いゴルフをしてきます。この試合も地元新潟・新発田市出身の大型ルーキー、石井理緒(19=ヨネックス契約選手)が2日目トップに立ち最終日は最終組。いまひとりのトップタイは米ツアー3勝の同じヨネックス契約選手、キム・ヒョージュ(23、韓)。この二人を相手にした桃子は「完全なアウエーでした。でも私も負けなかった。ヒョージュについていけば、彼女がスコアを落とすことはないだろうと思ってとにかく集中してアグレッシブに行こうと決めていました。2人ともヨネックスの選手ですし、特に地元の石井理緒さんへの応援は凄かった。ヒョージュは1年1回とかならいいけど、毎週(日本に)いるとなるとめちゃくちゃ強敵なので・・それはちょっと待ってよ、ですね。23歳とは思えない選手。とりあえず私が勝ってみんなに感謝されてもいいぐらい(笑)。理緒さんはきょうは勝てなかったけれど、私も初優勝が熊本だったように、彼女もいずれきっとここで勝てるでしょう」

米ツアーから参戦の強豪キム・ヒョージュ(韓)の華麗なスイング。2位タイだった(新潟・ヨネックスCC)

首位に1打差3位から出た桃子の最終日は強かった。初日のスタートホールでトリプルボギーを打ちながら、通算13アンダーの逆転優勝につなげたのは、ツアー史上例のない珍事?でした。最終日は1番(パー5)でバーディースタート。3番をボギーにしましたが6番からは3連続バーディーでキムを捉えました。次の9番でキムがダブルボギーで単独首位。バックナインに入っても4バーディーを重ね、ぐいぐいと2位以下をぶっちぎりました。

新潟出身のルーキー、石井理緒は、最終日79と崩れて23位タイ。地元の声援に応えられず(新潟・ヨネックスCC)

4月のTポイント・ENEOSで今季1勝を挙げたときは、最終日前夜突然襲ってきた右手中指の激痛に耐え、″左手1本〝で2アンダーで回り、申ジエを逆転した″まさか〝の優勝でした。今季の桃子は30歳を過ぎてから改めて悟ったという「心技体の充実」を目標に掲げています。ゴルフはうまいのに自分のミスプレーに怒りをあらわにしたりしてメンタル面で自滅するパターンが多かったのが桃子でした。しかし、16年4月、熊本地震で実家が大きな被害を受け、当時心身の指導を受けていたプロ野球元巨人コーチの荒川博氏を急逝で失ったり厳しい試練に遭遇。そうした中から心技体、特にメンタル面での落ち着きがいかに大事であるかを知りました。「優勝は迎えにいかない。必ず向こうから来ると思って焦らずにらやること」を心に誓ったという桃子です。

表彰式で優勝スピーチする上田桃子

☆優勝コメントの一部です。

「きのう″選手のピークはいつだと思うか?〝と質問されたんです。私はこれまで優勝するときは競って勝ってきたことが多かった。今回みたいに2位との差を広げて勝てたことがあまりなかったですね。で、今回終わってみて″やっぱり自分は(ピークは)いまだっていえるかな〝と思ったのです。ゴルフはケガとかがない限りは年が経てば経つほど上手くなっていける。私もいろんな経験をしてきてるのは自分にとって財産だなと思うし、それがいまの自分を作っている。限界を作らない限りまだまだいける気がします。年齢がいっても飛距離や体力を言い訳にはしない。大山(志保)さんを見ていると感じます。頑張っていればいいこともあると思います」

最終日、7000人近い大勢のギャラリーを集めた大会。ホールアウトした上田桃子に花束が贈られた(ヨネックスCC18番グリーンサイド)

08年から6年間、米ツアー経験もした桃子です。今年、比嘉真美子が全米女子オープンで頑張れたのも桃子には大きな刺激になったようです。「だから私も全英女子オープン(8月)には行きたい。オリンピックも含めて大きな試合、メジャーは今年は大事にしたい。上手い選手と戦うのは、ゴルフをやってる一番の醍醐味だと思うからです」(桃子)
21歳でとった賞金女王(07年)から12年。6月15日は誕生日。今週「宮里藍サントリーレディス」の3日目には33歳になる新たなスタートです。一段と大人になった上田桃子への期待は、ここへきて高まるばかりです。
(了)