Author Archives: 田中硫稀

一度は地獄を見た1億円プレーヤー比嘉真美子(25)のゴルフ人生。沖縄の新しい星に成れるか!?


開幕戦ダイキン・オーキッドで6年ぶりに日本人Vを果たした比嘉真美子。

故郷沖縄で初の開幕戦V。比嘉真美子(25)は風雨強まる最終日、7打差の独走を3打差まで詰め寄られながら、17番で勝負を決める貴重なバーディーを奪って2位以下を突き離しました(ダイキン・オーキッド=沖縄・琉球GC)。通算5勝目。婚約者、大相撲の勢も春場所初日(大阪)に勝ち、二人そろって白星スタート。最近10年で7人までが外国勢だった開幕戦V、13年の森田理香子以来6年ぶりに日本人の手に奪回しました。昨年約1億1000万円を稼いだ実力者(賞金ランク4位)比嘉の開幕ダッシュは、今季の賞金女王争いをリードする予感も漂う快勝でした。

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南国沖縄にも冷たい雨風が連日吹きつける厳しいコンディションでした。昨季も3日目が荒天で中止となり、54ホール短縮競技になった大会。4日間戦うのは2年ぶりのこと。地元出身の比嘉はプロ8年目のシーズン。日本女子オープンローアマ、日本女子アマ2連覇に始まり、2012年プロテスト一発合格、ツアー本格参戦となった13年にはヤマハレディスでプロ初優勝・・沖縄の先輩、宮里藍を継ぐ名プレーヤーとして順調なゴルフ人生を歩んでいた足取りが一変したのはプロ3年目の15年。前年後半からショットに変調をきたし″ドライバーイップス〝で大苦戦。15年は出場17試合連続予選落ちでシード陥落(賞金ランク95位)。翌16年も前半戦スランプは続き、18試合で13試合予選落ち。真っ暗な地獄を見た真美子でした。しかし9月を境に驚異的な復調をみせて驚かせます。優勝こそなかったですが、終盤2ヵ月間でで2500万円超を稼ぎシード復活(賞金ランク34位)を果たしたのです。

実力はありながら、ちょっとしたメンタル面やスイングの迷いで陥る大スランプ。「見えなくなっていたものが見えるようになってきた」と語った17年は、NEC軽井沢に復活Vで賞金ランク12位。そして18年、24歳になった真美子はKKTバンテリンでツアー4勝目。トップテン入りは実に19回を数える安定ゴルフで1億円プレヤーの仲間入りを果たしました。
コンパクトでムダのないスイング。シャープなアイアンショット。アイドルとは縁がないまさに実力派を自他ともに許すトッププロ・比嘉真美子の今季は本格登場といっていいでしょう。
開幕戦ダイキン・オーキッド。2アンダーの2位スタート。2日目66で一気に単独トップへ。3日目も最大瞬間風速18.7㍍の″春の嵐〝の中、二人しかいなかったアンダーパー、71をマークして首位を譲らず9アンダー。2位グループには7打差をつける独走態勢で迎える最終日でした。しかし、大差があっても逃げ切るのは難しいものです。しかも強風と雨の最終日はプレーヤーを悩ませました。
比嘉も8番は木に当て、13番も相次ぐダブルボギー。雨も強くなった15番はバンカーに入れでボギー。16番(パー3)もグリーンエッジからパターで寄せたが1.5㍍オーバー。これも外す連続ボギーで遂に2位グループに2打差に迫られる最悪ムードでした。残るは2ホール。雨に濡れた真美子の顔が、こわばって見えました。
その17番(377ヤード、パー4)。「98ヤード、右からのフォロー、56度のウェッジ」(比嘉)のセカンドショットをピン左手前2㍍弱につけたのが勝利への1打でした。貴重なバーディーパットを慎重に沈めたときは、小さなガッツポーズを2度握りしめました。最終ホール(パー5)を3打差にして迎えれればもう楽。最後は50㌢のパーパットを沈めて、一瞬そこに立ちすくんだ真美子でした。

美しいスイングで飛距離も出る比嘉真美子のドライバーショット。

★迫る2位グループ(新垣比菜、穴井詩、エイミー・コガ)を17番で突き放した比嘉真美子のVコメント
「途中で凄く悪い流れが来てしまって、嫌な雰囲気でした。天候も雨、風が強くなってきて上がり3ホールは厳しい状況でした。でも17番で、ティーショットもセカンドもパットも完ぺきなものが出てくれて、次に繋がると思いました。きょうは思うようなゴルフができなくて苦しい一日。悪い流れを断ち切れず、ダラダラいってしまって辛く、シンドかった。この大会で優勝することが夢の一つだったので、これは現実なのか夢なのかさまよっていて、18番では(ウルっという)感情が湧いてきて・・」

沖縄・県立本部高出身の真美子。小学5年、11歳のとき父親に連れられて練習場に行ったのがクラブを握ったきっかけでした。その小学5年のとき、大会のボランティアをして、練習場では当時常勝だった賞金女王・不動裕理にボールを運んだ記憶が強く残っているという。中学2年ではダイキン・オーキッドに出場「こういう世界で仕事ができるなら素晴らしいこと」と、プロの世界に惹かれたという。その夢が、優勝という現実となったのです。

沖縄県勢の大会優勝は、2004年の宮里藍以来、15年ぶり。特別に専属コーチはつけない比嘉。「自分の悪い面、いい面、これから何をしていかないといけないのか。それをじっくり自分自身で考えて行動に移していくことが気持ちの成長に繋がると思ってるから」と、自分と見つめ合ってゴルフをしたいのだという。「そしてLPGAツアーを自分が引っ張っていきたい気持ちも去年あたりからちょっと芽生えてきている」と。″今週一番活躍したクラブを1本挙げるとしたら〝と問われて「ドライバーです。すごく気持ちよく振れたから」と即答でした。

25歳にして酸いも甘いも経験してきた波乱万丈の比嘉真美子。宮里藍、宮里美香らの跡を継いでいくゴルフ王国・沖縄の星になれるでしょうか。

(了)