海抜1000メートル、軽井沢の女子ツアーで成田美寿々(20)が6打差の逆転劇を演じると、海抜400メートルの裾野ではシニアツアーのレフティー羽川豊(55)が、9打差をひっくり返す大逆転でファンケル・クラシックを制しました。羽川は35位からのスタートで、インをシニアツアー新のハーフ28。10アンダー、62の快スコアで計8アンダーとして追い上げ、2時間半も待ったあげく、ホールインワンで順位を上げた全米プロシニア優勝の井戸木鴻樹(51)とプレーオフ。羽川が1ホール目のバーディーで勝利し、優勝賞金1500万円をゲットしました。シニア6年目。11年7月のトータルエネルギーCUPフィランスロピーでの初優勝以来2年ぶりのシニア2勝目(ともにPO勝ち)。シニアの熱い戦いを7,000人超のギャラリーとTV桟敷のファンが楽しみました。羽川は、キャディーを務めた商社マンの長男・宜宏さん(よしひろ=29)に優勝副賞のニュージーランド往復ペアビジネスクラス航空券をプレゼント。ベストスコア賞の100万円は大会にチャリティしました。
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シニアツアーに入れ込むファンケル池森賢二会長(大会会長)口ぐせの「シニアの元気が、日本の元気!」じゃないですが、ホントにシニアが熱い戦いを演じてくれました。この暑さの中、最終日は7,487人のギャラリーが集まり、3日間合計では23,008人と今年も2万人超のファンを動員したのは驚きです。初日、ブーンチュ・ルアンキット(タイ)、2日目は金鍾徳(キム・ジョンドク)、グレゴリー・マイヤー(米国)と、外国勢にトップを奪われていましたが、最終日になって俄然日本勢の巻き返しが爆発しました。最終組から12組前、首位と9打差の2オーバー、35位からスタートした羽川がアウトで2つ伸ばしてターンすると、火が付いたようなバーディーラッシュでした。10番から3連続。13番で一休みすると14番から最終18番まで5連続バーディー。終わってみれば13番のパーがもったいない感じでそれ以外の8ホールがバーディーの28。通算8アンダーとして首位に躍り出たのです。
「ドキドキしながら回ってたよ。ショットがピタピタついたからね」という通り、14番からの5連続は80センチ、2メートル、80センチ、70センチ。そして18番(パー5)は2オンして10メートルの長いイーグルパットを惜しくも外してバーディーフィニッシュでした。インは10パット、合計26パットの10アンダー、62は、記録を1打更新する大会レコード。2日間では3個しかバーディーがなかったのに、最終日になりと突然入るのだからゴルフは魔物です!!井戸木が初めての米国遠征でメジャーに勝ったときも、パットが入りまくってあれよあれよという間に優勝でした。プロであればだれでもこういうことができる要素は秘めているから、やめられないのです。
劇的なことが起こると連鎖反応とでもいうのでしょうか。後ろから3組目を回っていた井戸木が、12番のパー3(174ヤード)、6番アイアンで「入ってくれたらな、と思って打ったら、落ちて1、2、3で入った」というホールインワン達成。一つ前の11番でもグリーン奥から13ヤードをチップイン。エースのあとの13番でもバーディーを奪うなどこの3ホールで4つスコアを縮める凄みをみせます。あと1打に追った18番は、前の土手が気になるグリーン右のバンカーに入れ、ここはクラブ(SW)をボールにぶつけて低く出し、カップ1.2メートルにブレーキをかけて止めるスーパーショットでバーディー。大詰め、魅せる“メジャーのプレー”でトップの8アンダーに並びかけました。
さすがは世界のメジャーを制した全米プロシニアチャンピオン。あれですっかり自信をつけてゴルフを続ける井戸木です。今季の国内での優勝はまだありませんが、シニア2勝目(初Vは昨季最終戦の富士フィルム)をかけたサプライズ同士のプレーオフ。裾野CCの18番(パー5)は、2打目から急な打ちおろしでグリーン手前は池というスリリングなホール。フェアウェイからの2打目は左からの風に押されてともにグリーン右のバンカー。バンカーショット、羽川はピン右4メートル強。強気で打った井戸木はカップを越えてピン左3メートル。先に打った羽川がど真ん中から決めてバーディーとすると、難しいラインの井戸木は、「ラインが読めていなかったね」と、カップ左を抜けて万事休す、でした。
☆シニアツアー史上、2番目の大差になる9打差逆転の羽川豊。
「(本戦5連続バーディーで終わってプレーオフ)最後にまたバーディーがくるし、もう何位でも悔いはなかった。あのスコアだからね。井戸木の本戦18番のバンカーはうまかったね。さすがは全米チャンピオンだよ。(プレーオフまで)2時間半も待ったけど、食堂でご飯を食べ、ロビーでテレビ(モニター)見ていた。全英シニアオープンの予選のときも6時間も待ったりした。そんな経験が生きてるよ。プレーオフは負けたくないからいろんなことを考えて緊張する。プレッシャーは二人とも同じだけど、ティーショット、セカンド、バンカー、パット・・と全部先に打つことができたのがよかった。相手の結果が分かって打つのは、倍以上のプレッシャーがかかるから・・。ファンケルの池森会長がシニアを宣伝してくれている。話題性のあることをしなければ・・ね。いつまでやれるかわからないけど、後輩のためにも道を作りたい」
いまはテレビ解説の仕事の方で知られている羽川ですが、かっては日本オープンチャンピオン(81年)、マスターズプレーヤーとして15位(82年)など、日本の代表格として活躍した“世界的レフティー”です。
★惜しくもプレーオフ負けした井戸木
「プレーオフのパットは読めなかった。引っかけた。きょうは粘ればチャンスがあるかなと思ってやっていたけど、パットのタッチがダメだった。海外のグリーンとの違いもあるけど、それとまた違う。でも粘りのゴルフを覚えてきた。悪い時に粘れるゴルフができるようになった。また海外にいくけど、少しでもいいゴルフをしてきたい。帰ったらまた頑張ります」
20日に渡米。23日開幕のボーイング・クラシックから米シニア3連戦を予定しています。コンパクトなトップから操る正確なショット。小さな巨人の再びのサプライズ!を期待しましょう。