今季男子ゴルフツアーを盛り上げてきた 22歳のルーキー蝉川泰果が、突然ここ2試合で相次いで予選落ち。「どうして!」と驚きの声が上がっています。8月末の「SanSanKBCオーガスタ」でプロ初の予選落ちを喫したのに続き9月に入っては、昨季アマチュア優勝を達成し“蝉川ブーム”のきっかけをつくった「パナソニック・オープン」(9.21~24)でも一転して、予選通過に2打届かず80位で予選落ち。8月から9月にかけてここ4試合で2試合予選カットの洗礼です。昨年この大会をアマで制したあと「日本オープン」もアマチュア制覇、95年ぶりの驚異的な快挙でプロデビューした蝉川泰果。プロとなった今季は4月の「関西オープン」で2位に4打差をつけてプロでも早々と初優勝。これまで17試合でトップ10は7試合。賞金ランキングは現在3位で、秋の陣、僚友・中島啓太や金谷拓実との賞金王争いも注目される男が、なぜ!?
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「パナソニック」の会場、兵庫・小野東洋GC(パー72)は昨年大会も同じコースでした。東北福祉大4年だった蝉川泰果は2日目の「68」に続き3日目は1イーグル、9バーディー、ボギーなしの「61」と驚異的なスコアを叩きだして33位から一気に首位に浮上。最終日は最終組でスタートすると、13番から5連続バーディーを奪って「66」。通算22アンダーで逃げ切る強さでした。それから3試合、約1ヵ月後の「日本オープン」(兵庫・三甲GCジャパンC、パー70)では4日間完全優勝。3日目にはまた「63」をマークするなど手のつけられない勢いでした。その「日本オープン」から2試合後の11月3日開幕「マイナビABC」でプロ転向宣言ー。まさに“疾風”のような蝉川泰果のプロデビュー劇でした。
300ヤードをゆうに超える飛距離。アイアンの切れ味にもまさって、パットのうまさは一流。東北福祉大時代主将・蝉川をアシストした副主将の鈴木晃祐(プロ)は「大学4年生のころは泰果が3m以内のパットを外したのは見たことがない」と述懐したほど。蝉川がプロになってもトップグループで即活躍できる実力は誰れもが認めるところでした。
春先、海外に出て数試合をこなした成績では目立ったものはありませんでしたが、国内では「ゴルフパートナー・プロアマ」(5月)」「日本プロ」(7月)、「横浜ミナトチャンピオンシップ」(8月)といずれも2位に食い込み、プロ2勝目も近いかと思われる展開でした。
その蝉川に“異変”を感じさせたのは8月後半の「SanSanKBC」からでした。この試合、プロ転向後初の予選落ちを喫したのですが、初日「73」で106位の出遅れが響き、2日目も32パットで「71」とスコアが伸びないままカットラインへ墜落でした。芥屋コースは、いまではツアーで数少ない目の強い高麗グリーン。ベント芝に慣れ親しんだ蝉川には違和感が生じたのでしょうか。「パッティングが悪い。もったいなかった」(蝉川)と、グリーン上の変調に天を仰ぎましたが、パットが悪いとショットにも影響をきたします。次の「フジサンケイ」は予選はクリアしたものの、60台を1度も出せず3オーバーで19位。北海道・輪厚の「ANAオープン」で何とか6位と復調の兆しでしたが、縁起のいいはずの兵庫・小野東洋の「パナソニック」へきての落選はショックでした。 初日54位とまたカットラインが気になるスタートで「伸ばさないといけないのに2日目もボギーが先行(3番)してしまった。自分では感じてなかったけど、緊張していたのかもしれない」と悩む蝉川。その2日目、ティーショットでフェアウェイキープできたのは5ホールだけ。初日の8ホールからさらに悪くなる苦しいゴルフで、最終18番(パー4)もティーショットを左に曲げ、グリーン奥カラーからのパターで“3パット”。ボギーで終わる後味の悪さ。「まったく何もできなかった」とうなだれた蝉川でした。昨年「61」を出すなど絶好調だった同じ試合、同じコースでプロになった今季、苦戦を強いられるのだから、分からない。メンタル面、体調面にも問題があって、ゴルフの難しさといえそう。
アマからプロへと転向した蝉川。このオフから体重は8kg増えていま77kgだという。一時は11kgまで増えて2kg落としたそうだ。「食べ過ぎというのもあるけど、ベストは76kgくらい」というが、プロになって収入も増え、食べものも量も変化したはずです。そういった体調のコントロールも蝉川がかかえる課題でしょう。用具ではアイアンを愛用してきた「ピン」のニューモデルに変えたそうだが、前のと比べてシャフトが長めなのでカットして調整しているとか。
「すべてにやり直してまた来週、頑張ります」ー悔しさを胸に蝉川は出直します。男子ツアーの残り試合はビッグゲームばかり8大会。昨年、劇的勝利で泰果が世間をアッといわせた今季の「日本オープン」は、10月12日から茨木カンツリークラブ・西コースです。
(了)