Author Archives: 向田遥菜

“3試合出場”を掲げる来季のジャンボ尾崎。73歳″覚悟〝の現役?!

プロ生活50年。来季は73歳になるジャンボ尾崎は、いま何を考える?

前人未踏のプロ通算113勝(うちツアー最多94勝)を誇る尾崎将司(72)の心が揺れています。今季の出場は7戦で予選通過はゼロ。5試合で棄権。来春1月24日で73歳を迎えるわれらがジャンボは、ここ数年腰痛と戦う痛々しい日々です。今季は11月下旬のダンロップフェニックス(宮崎・フェニックスCC)初日に12ホールを終えたところで腰痛をこらえ切れずに棄権。19年シーズンの幕を下ろし、もちろん獲得賞金もゼロ。集まった報道陣に「体調がついていかない。スポーツ選手としての体力が、10あるとしたら1くらいしかない」と言葉をふり絞りました。来季もプレーを続けるのでしょうか。プロ生活50年目を終えたジャンボ尾崎の心は揺れに揺れていますー。

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ショットもフォローが小さくなったジャンボ。

今季最終戦となったジャンボのダンロップフェニックス。例年なら水曜日にはコース入りして調整を行うのに、今年は大会前日の水曜夕方に宮崎入り。大会初日の朝、ようやくコース入りする異例の行動をとりました。初日の朝にはそれでも練習場で数発快音を響かせ、インスタートの10番ティーへ。スタートするとドライバーでは同組の藤田寛之、浅地洋佑にはさしてひけをとらない飛距離でフェアウェイに飛ばしました。しかし、それも4ホールまで。14番(パー4)でトリプルボギーを叩くと15番からは3連続ダブルボギーとひどいゴルフで前半から47。後半のアウトで2、3番をボギーとしたところですでに14オーバー。あっけなく棄権宣言。また完走することはできませんでした。

 

スタート順が来るまでは持参のチェアーに腰を下ろて待つジャンボ。

「いまの体調もよくないんだけど、スポーツ選手としての体力、10が上なら1くらいしかない。なんともいいようがないふがいなさやな」ー今季を振り返るようにつぶやきましたが、自身でもそれほどに体力、気力の下落を自覚しているのでしょう。今季は国内開幕戦の東建ホームメイト杯(棄権)に出て、そのあとは中日クラウンズ(予選落ち)、日本ゴルフツアー選手権(棄権)、ANAオープン(予選落ち)、ブリヂストン(棄権)、マイナビABC(棄権)、ダンロップフェニックス(棄権)という成績。万全の治療や養生をしていながら、持病の腰痛には勝てないようです。プロ生活50年。毎日のように1打1打クラブを振り、平地ばかりではなく山坂の長丁場を歩くゴルフというスポーツ。プロ生活50年のツケは厳しく押し寄せてきています。

いまのジャンボのドライバーショット。250~260ヤードくらいが平均飛距離だ。

徳島海南高のエースとしてセンバツを制し、プロ野球実働3年でプロゴルファーに転身。ジャンボ時代を築き上げました。5年連続を含む計12度の賞金王。海外でも73年のマスターズ8位。89年の全米オープン6位。95年の全米オープン(ニューヨーク・シネコックヒルズGC)では3日目、グレグ・ノーマン(豪)と最終組で回るなどの活躍を残しました。

 

そのジャンボ尾崎も、年々しのび寄る体力、気力の下降には施す手がありません。出る試合出る試合、予選落ちや棄権では偉大な尾崎将司の名がすたる。現役はもういいのではないかとの声も聞かれます。しかし心は揺れながらもジャンボははだ「辞める」とはいいません。一昨年だったか、いちどジャンボは「本年が最後」と公言し幕引きをほのめかしたことがありましたが、それもあいまいなうちに日月が通り過ぎてきました。新聞や雑誌、TVに「尾崎将司」の名が出ることがいまも大事なのでしょうか。

同組のショットを見守るジャンボ。

「自分のモチべ―ションになっていたのは『自分はゴルフしかできない』『自分はゴルフが大好き』という2点だ。これで長いことやってきたけど、この2つが最近だいぶ曇ってきている。ゴルフに対する意欲、情熱というものがいままでとだいぶ違う。体力アップも思うようにできないから、何かやろうとするとどこかが痛くなる。もういいのかな。電撃発表で終わりっていうことだってあり得るよ」

 

こんなことも漏らすようになった最近のジャンボは、かなり弱気になっているようにもみえます。今季最後のダンロップフェニックスでも、いい当たりはしていてもドライバーの飛距離は250ヤードそこそこ。得意のアイアンを持たせても、ダフリ気味のショットが多く、短いパットをミスして天を仰ぐ場面もいまのジャンボには数多く見られます。

打った後はクラブを腰に当てて歩く姿も痛々しい。

それでもジャンボが出場すればまだまだ多くのギャラリーがついて歩きます。衰えない人気はさすがですが「オレについてきてくれるギャラリーに入場料をお返ししたいぐらいだよ・・」と、笑い飛ばします。それはジャンボの胸にある本音でもあるのでしょう。
「オフにゆっくり考えて構想をねるけど、来年出るにしても相当試合を絞っていく。春先の中日クラウンズ、秋口の全日空(ANAオープン)、それとダンロップフェニックスの3試合くらい。その3試合のために準備をそれぞれ1ヵ月くらいかけてじっくりとやる。もう最後の覚悟かな。そういう何かを持たないとムリだね」

 

打球を追ってご機嫌のジャンボ。

ジャンボは断ち切れない現役続行への思いを吐露しましたが、ひところの燃えるような情熱は薄らいでいるのも事実です。確かに年間3試合や4試合しか出ないようでは、もうすでに″現役〝とはいえない選手のあり方ともいえるでしょう。それなのに・・です。一方ではジャンボ家の門を叩いて練習に励んでいる若い力に目を向けている『尾崎将司』がいることも確かです。

ジャンボが出場するといまでも多くのギャラリーが集まってくる。人気は衰えない。

女子プロツアーですでに名を売っている原英莉花はじめ、今年の女子アマチャンピオンでプロテスト合格、QTも10位で通過した高校生プロ・西郷真央(千葉・麗沢高3年)ら多くのジュニアが〝ニュー・ジャンボ軍団″を形成しています。プロ生活51年目を迎える来季のジャンボ尾崎は、どこへ行くのか。日本のゴルフ界に長く君臨してきた男の最後の姿を、シカと見守りたいものです。

(了)