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全英オープンの「定年」を見直させたワトソンの感動!

全英オープンでの59歳・ワトソンの活躍について「スイングの完成度の高さと飛距離。 それと数多く勝ってきた経験」 と分析した中嶋常幸。
全英オープンでの59歳・ワトソンの活躍について「スイングの完成度の高さと飛距離。 それと数多く勝ってきた経験」 と分析した中嶋常幸。

 ターンベリーで行われた09年全英オープンは、優勝したスチュワート・シンク(36)より、59歳のトム・ワトソンにファンの目は釘付けになりました。これを入れれば59歳10ヵ月の全英オープンチャンピオン誕生!という3メートルのパーパットは、打ち切れず力なく右に外れました。プレーオフではもう59歳のワトソンにエネルギーは残っていませんでした。過去5度、全英オープンを制しているワトソンは9月4日には還暦の60歳。もし6度目の全英チャンピオンになったら歴史的快挙でした。2位に終わったワトソン感動のプレーは、しかし全英オープンの出場資格の見直しも・・という大きな足跡を残しました。

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 ゴルフの神様はこんなに非情だったのでしょうか。世界の目はワトソンの快挙達成に集中していました。ターンベリーの最終日に足を運んだ2万4500人のギャラリー。世界各国のテレビ桟敷の前の何百万のファン・・。そのほとんどがワトソンを応援し、その偉業を見たかったに違いありません。 1打リードで迎えた最終18番。残り170ヤードの第2打はフォローの風と硬さを増したグリーンではね、グリーン奥へ外れました。

「あそこは8番アイアンじゃなく9番だったね。もう少しで夢がかないそうだったのに、残念」(ワトソン)
「あれはアドレナリンの仕業。返しのアプローチだって、もっと柔らかく打ちたいのだろうけど、打てないのだよ。オレにはわかるね」(TV観戦した中嶋常幸)
 パターで寄せたオーバー3メートルの″ウインニングパット〝は、無情でした。

 パーマー、ニクラウスの後を追いかけるように頭角を現してきたワトソンは、スタンフォード大卒業後71年にプロ転向。77年から80年まで4年連続米ツアー賞金王。メジャー通算8勝(マスターズ2勝、全米オープン1勝、全英オープン5勝)米ツアー39勝。00年からシニアツアーに参戦しています。ニクラウスを継ぐ″新帝王〝といわれ、特に自然と戦うリンクスをこよなく愛し、全英オープンにはときにはニッカポッカスタイルで登場したり、人並み以上の情熱を注いできた人です。59歳にして最後プレーオフまで戦ったワトソンの姿には、同じく日本のシニアツアーの第一人者、中嶋常幸は「涙が出るほど凄い活躍だった」と、賛辞を送っていました。中嶋は同じターンベリーで行われた86年の全英オープンではグレッグ・ノーマンと最終日最終組で回り、惜しくも8位にとどまった経験をもっています。

 全英オープン最年長記録は46歳99日(1867年トム・モリス)。これを13歳も上回る142年ぶりの更新こそ逸しましたが、若者を凌ぐ″主役〝を演じたワトソンの円熟味溢れる活躍は、″場外〝でもさまざまな波紋を広げています。まず全英オープンの出場資格です。大会を主催するR&A(ロイヤル・アンド・エンシェント・クラブ)の最高責任者は、現在実施されている「60歳定年制」を「再協議したい」と、年齢制限を緩める方向性を示しています。
 若手にチャンスを多く与える意味からもメジャーにも″定年制〝が幅を利かせる時代です。マスターズでは、歴代優勝者には終身出場権が与えられていますが、選手サイドの自覚で引退を表明する歴代チャンピオンが増えています。パーマー、ニクラウスはすでに引退を表明していますし、今年4月のマスターズでは、73歳のゲーリー・プレーヤー、57歳のファジー・ゼラーが今年限りでマスターズからの引退を表明。52回の出場、3回の優勝を残したプレーヤーは目頭を抑えて18番グリーンでのスタンディングオベーションに応え、ゼラーは涙を拭きながら18番の最後のパットをしました。

 そうした流れの中、全英オープン歴代優勝者の「定年」の引き上げを見直す動きまで起こしたワトソンも、来年は60歳。セント・アンドリュースで開かれる来年の全英オープンが″最後の全英オープン〝になるかどうかはまだ分からないが、今

年最後のメジャー、全米プロ選手権(8月13~16日 ミネソタ州ヘイゼルティンナショナルGC)には、特別推薦等での出場の可能性が出てきています。この全米プロだけはワトソンが勝っていないメジャーです。

 昨年の全英オープンでは53歳のグレグ・ノーマン(豪)が3日目に単独首位に立つなどで3位。今年のマスターズでは48歳のケニー・ペリー(米)が39歳のアンヘル・カブレラ(アルゼンチン)とともに3日目首位。最後はカブレラのプレーオフVとなりましたが、進化したクラブやボール、さらにたゆまぬトレーニングを続ける年配者の健闘ぶりが光っています。スポーツの中でも、ゴルフならではの現象といえるでしょう。