Daily Archives: 2010 年 10 月 4 日

日本女子プロ非会員の宮里美香(20)、日本女子OPで涙のツアー初V

日本女子オープンの優勝カップを抱く宮里美香。米ツアーを主戦場にする美香が日米ツアーでプロ初優勝。(茨城・大利根CC)=写真提供:日本ゴルフ協会。
日本女子オープンの優勝カップを抱く宮里美香。米ツアーを主戦場にする美香が日米ツアーでプロ初優勝。(茨城・大利根CC)=写真提供:日本ゴルフ協会。

 日本の女子プロテストを受験せず、直接米女子ツアーのQTに合格した20歳の宮里美香が、日本女子オープン(最終日10月3日=茨城・大利根CC東コース)で完全優勝する偉業を成し遂げました。お里帰りしていた宮里藍はじめ、横峯さくらも諸見里しのぶも不動裕理も、あっけにとられた美香の独走優勝。4日間を終わって12アンダー、2位に6打差をつけて”日本一”になりました。平成生まれのツアー優勝一番乗りでした。
 
   ◇     ◆     ◇
 
 米ツアーを主戦場にしている美香は、日米を通じてツアー初優勝を日本の最高峰、女子オープンで果たし、日本のゴルフ界を騒がせました。初日から4日間、首位を譲らない完全優勝でした。まして最終日は、2位と4打差をつけてスタートし、前半で早くも2つスコアを伸ばしました。インでは13番から3連続バーディーなどで、追っかけてくる選手を完全に突き放す豪快さでした。沖縄・松島中3年の14歳8ヵ月で日本女子アマに勝った天才少女が、6年後には”ゴルフ日本一”に上り詰め、優勝賞金2800万円を獲得したのです。
 

「アグレッシブに攻めた」という宮里美香のドライバーショット。(日本女子OP、大利根CC)=写真提供:日本ゴルフ協会。
「アグレッシブに攻めた」という宮里美香のドライバーショット。(日本女子OP、大利根CC)=写真提供:日本ゴルフ協会。

 20歳の未勝利プレーヤーとは思えないひょうひょうとしたプレーぶりでした。「朝の練習から緊張感はなくアグレッシブにいけました」というとおり、重圧などみじんも感じさせませんでした。3日目に「守って失敗した」という反省から、最終日は再びフルショットでタフな設定の大利根・東コースを攻め、深いラフを恐れずフェアウェイをキープしていったのは凄い精神力です。昨年の日本女子オープンでも、最終日4打差のトップは全く同じ状況でしたが、今年は昨年を10打縮める「68」で、すばらしい成長ぶりをみせました。
 昨年との違いを「米ツアーで1年戦った自信が大きい」と話した美香。アマ時代はあまりやらなかった筋力トレーニングもこなし、弱いといわれた上半身強化を図りました。技術面では以前よりコンパクトなトップスイングに修正。そのトップスイングから「80%のパワーとスピード」(美香)で打っているのに、ドライバーの飛距離は10ヤード飛ぶようになったそうです。これに米ツアー1年間に経験した小技の種類がグンと増えていました。
 
 特に派手な仕草もなく、淡々と戦う美香に物足りなさを感じる向きもあるかもしれません。しかし、その”冷静さ”が美香の強さであり、持ち味です。内に秘めた根性と負けん気は凄いものがあります。野球が強い沖縄・興南高出身。宮里藍、諸見里しのぶ、上原彩子ら沖縄の先輩たちは、中学を卒業するとゴルフ留学で県外の高校に進学しました。が、美香は「同学年の仲間たいち一緒にいたかったし、沖縄はゴルフ環境がいいから」と、地元の興南高を選びました。ゴルフ部のなかった学校は、ゴルフ部を創設してくれて、その最初の部員が美香たち3人のグループでした。06年には世界ジュニア優勝、07年日本ジュニア優勝など、日本のナショナルチームのメンバーとしても海外試合の経験は豊富でした。
 
 08年春、高校を卒業すると、最初美香は3月末の日本のプロテスト2次予選に出場していましたが、4月に米ツアー(ギンオープン)を観戦、そこで無敵を誇っていたロレーナ・オチョアと、ジュニア時代同じ舞台で戦っていた同年輩のヤニ・ツェン(台湾)が最終組で優勝争いをしたのには強い刺激を受けたそうです。6月にはこのヤニ・ツェンが全米女子プロを制覇したのを見て「アメリカでやりたい」と米ツアー参戦の気持ちを固めました。
 美香は単身、渡米することを決意、フロリダにあるIMGゴルフアカデミーに6月末に入学。アメリカ生活をスタートさせました。朝から晩までゴルフ漬けの生活で、スイングコーチ、メンタルコーチ、トレーナーらが加わり「チームミヤザト」を結成してくれました。08年12月、フロリダ州・LPGAインターナショナルでのツアー最終予選を12位で突破(このとき大山志保も4位で通過した)、09年からの米ツアー出場がかなったのです。
 
 〔フロリダのIMGアカデミー〕
 
 世界最大規模を誇るアカデミーで、ゴルフに限らずテニス、バスケットボール、陸上競技、水泳、野球などあらゆるスポーツ部門がある。ここでは技術はもちろん、フィジカル、メンタル・・と徹底した指導が受けられる。ゴルフではポーラ・クリーマー(米)がこのアカデミーの出身で、テニスプレーヤーの錦織圭もここで鍛えており、美香とも練習仲間。とにかくトレーニング施設やゴルフ練習場はもちろん、ゴルフコースまで持っている最高レベルの練習環境。コーチ陣も充実していてマン・ツー・マンの指導も受けられる。すべての面で腕を磨けるアカデミー。
 
 美香はアメリカ生活では欠かせない英会話も以前から独学で勉強していて、すでに2年間の滞米生活でかなりのレベルになっているようです。さきのヤニ・ツェンはじめ、昨年の米ツアー賞金女王になった申ジエ(韓国)も米国では仲のいい友達です。プロに転向した09年は、ルーキーイヤーとして1年間アメリカで戦いましたが、22試合でトップテンが3度あり、賞金は28万4788ドル(約2535万円)で賞金ランキングは49位。80位以内のシード権は見事に確保しました。
 
 今季は9月のP&Gアーカンソー選手権で自己最高の3位に入るなどで、現在賞金も昨年をすでに上回る37万6734ドルを稼ぎ、賞金ランクは21位。2年続きでシード権を確保しています。米ツアーは今季もまだ6試合を残しています。「日本の女子オープンに勝てたことは本当にうれしいですが、米ツアーで勝つことも私の目標。次は米ツアーで優勝することです」ときっぱり。7日からのナビスタークラシックで米ツアーに戻る美香のゴルフが一変するかも知れません!