今季男子ゴルフツアーの最優秀選手に41歳のベテラン、藤田寛之が初めて選出されました。賞金王に輝いた金庚泰(キム・キョンテ=韓国、24)でもなく、バーディー率、部門別順位をポイント化した総合力ユニシスポイント、ファンが選ぶMIP賞など4冠を得た石川遼(19)でもなく、2年連続年間4勝、平均パット賞、特別賞、ゴルフ記者賞の池田勇太(24)も及びませんでした。それらを抑えてつかんだ”アラフォー・藤田”MVPの意義は偉大でした。ツアー最終戦、日本シリーズJTカップの優勝で、世界ランキングも藤田は58位から49位へ大きく浮上。年内最終で50位以内に出場権のあるマスターズ初出場への夢も現実となりそうです。
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日本シリーズJTカップの藤田寛之の劇的優勝から一夜があけた12月6日、東京・ホテルオークラで行われた「今季日本ツアー表彰式」。晴れやかな金庚泰、石川遼、池田勇太らと肩を並べながらも藤田寛之は、あくまでも落ち着いたアラフォーぶりをみせました。「今年も盛り上がった男子ツアーを引っ張ったのは自分ではありません。若い石川遼や池田勇太が頑張った。自分は今年、春先から突っ走って完全燃焼できたことに対して、お墨付きをいただいた感じです。オーバー40歳が若手と戦って、同年代の方からいただいた声援は自分も勇気づけられた。心が折れそうになったときも頑張れました」と、自分を応援してくれた世の中年層に感謝の言葉を贈りました。
MVP賞は、試合での成績順位、賞金ランキング、平均ストローク、海外4大メジャー成績順位の4部門に係わる合計ポイントによって選出されます。藤田は最終戦の優勝で4000万円の優勝賞金を加え、1億5793万余で賞金ランク2位に入ったのも評価されますが、ポイント配分が大きい国内メジャーですべて3位以内(日本プロ3位、日本ツアー選手権2位、日本オープン2位、日本シリーズ優勝)に入つたことも大きくモノをいったといえるでしょう。
今季の藤田は、開幕第2戦のつるやオープンで谷口徹とのアラフォー対決(プレーオフ)を制して好スタートを切り、中日クラウンズ2位、日本プロ3位と毎試合のように優勝争いに絡むいいゴルフをみせました。開幕前の3月には、全英オープンアジア予選(クアラルンプール)を1位で突破、上位4人に与えられる出場権をゲットしており好調なスタート戦線でした。藤田といえば正確なショットとショートゲーム&パットの上手さには定評があり、予選落ちは極端に少ない選手です。ただドライバーの飛距離が弱点といえば弱点(昨年のドライビングでスタンス55位)で、その克服のため今季は46.25インチという長尺ドライバーに挑戦しました。昨年までは44.75インチだったのが、一気に1.5インチも伸ばしたのです。シャフトが長くなればヘッドスピードも上がって飛距離はアップします。しかし、その反面で方向性に不安が出るので、男子プロは46インチもある長尺はあまり使いません。それに挑戦した藤田は、10ヤードの飛距離アップに成功したのです。
ところが好事魔多し、その藤田に突然の不振が襲いました。7月中旬、全英オープンで予選落ちしてから国内でも長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップ、サン・クロレラ、と連続して予選落ち。全米プロに遠征してまた予選落ち。帰国して関西オープンでも落ちて、5試合連続予選落ちという”暑過ぎる夏”を味わいました。9月に入ってようやく立ち直るのですが、表彰式で語った「心が折れそうになったときも、同年代からの声援には勇気づけられて頑張れた」というのは、このあたりの苦しさを語ったものでしょう。
福岡出身ですが、専修大卒業のあと静岡・葛城ゴルフ倶楽部で修行、同倶楽部の所属となってもう久しいです。葛城GC近くの掛川市に自宅を構え、同じ静岡(御殿場)在住の芹澤信雄プロを師匠と仰ぎ、宮本勝昌らととも”チーム芹澤”のメンバーとして固い団結を誇っています。藤田は97年にサントリーオープンでツアー初優勝を果たして以来、毎年シード権を保持、ツアー通算10勝。今年初めて年間獲得賞金が1億円を突破しました。
41歳にして人生最高のシーズンを終えた藤田ですが、世界ランキング49位にまで上り詰めたいま、さらに「年内50位以内キープ」を、心そわそわで待つ心境でしょう。日本ツアーは終了しましたが、アジアツアーや海外での数試合がまだ年内に残っています。そこでの優勝者次第では、49位の藤田が51位以下に押し出される可能性が残っているのです。結論はあと3週間で出ます。
藤田は「マスターズといわれてもまだ、そのイメージ作りができていません。もし、決まったら、ちゃんと準備して夢の舞台にのぞみたいですね。もっと大きな舞台に行ける可能性があるのですから・・」と、いかにも藤田らしいしっかりとした心境。さらに「40歳を超えて体力的にも厳しいです。いまさら筋肉を鍛えて、なんていうより、現状でキレをさらに出すとか、ケガのない体作りをこのオフにしたい。ショットにもまだ悩んでいる部分があるので、その答えも出したい」と、地に足をつけた心構えを語っています。
勇太や遼の勢いある活躍もいいですが、我らがアラフォーのさらなる頑張りを祈りたいところですー。