横峯さくら(25)が今季の不調を総決算するかのような”復活ゴルフ”をみせました。優勝には届きませんでしたが、後半2日間はノーボギーで9バーディーを奪う完璧なゴルフを取り戻し、優勝したアン・ソンジュ(韓国)に4打差の4位(6アンダー)。「先週とは比べものにならないくらい自信をもって打てるようになった」と、自ら復調を公言しました。今季5戦目の国内初メジャー、ワールドレディスサロンパス杯(茨城GC西コース)でみせた尻上がりのゴルフは、近々の”さくら爆発”を予感させるものでした。史上最速、最年少での生涯獲得賞金7億円(6人目)を目前にしているさくら復活のキーは、何だったのでしょうか?
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フェードヒッターさくらの悩みは深刻でした。「ドライバーが左に曲がって戻ってこない。トップからインパクトで右肩が下がり過ぎるので、きっちりボールをとらえられない」と、原因は分かっていても思うように修正できない悩みをずっと抱えながら戦ってきました。開幕のダイキンオーキッドを10位で終わったあと1ヵ月半近く試合がなく、その間は地元の宮崎でラウンド中心にして小技の練習に打ち込みました。再開した西陣レディスで久々の試合に臨んだときにこのスイングの変調に気がついたそうです。25位でお茶を濁したあと、続く2週前のフジサンケイでは初日76をたたき62位。あわや6年ぶりの予選落ちというピンチに追い込まれました。さんとかカットの汚名は免れましたが27位。通算5オーバーの低調なゴルフでした。
フェード(右に曲がりながら落ちる球)が持ち球の人が、逆に球が左に曲がって戻ってこないというのは、気持ちの悪いものです。再開して3試合、この”逆球”が出る深刻な状況に、ワールドレディスに入る前の5月3日には、父親・良郎さんにチェックを頼み込んだりもしました。それでも大会2日目までは4バーディー、7ボギーとショットは乱れ、74、73とオーバーパーが続いて34位(2日目)と苦戦でした。そんな状態の中で好転のきっかけは、3日目の朝の練習でした。
試行錯誤の中で「(構えの)スタンスが少し狭い感じがしたので、ちょっと広め(靴幅一足分)にしてみたら急にショットが安定してきた」というのです。もともとさくらのスタンスは人より広いのですが、それが知らず知らずに狭まってきていたのでしょう。「周りがみても気付かないほど僅かな違い」(さくら)だそうですが、その分下半身の安定度が強くなってさくら本来の上半身のひねりが戻ってきたのでしょう。3日目は横峯らしい豪快なショットがフェアウェイを捉えました。ピンチらしいピンチもなく、17番では1メートル、18番では2メートルを決めるなど上がりは3連続バーディーで猛追の「66」をたたき出したのです。
「これだというのを自分で見つけて、プレーで実践できたことが大きいです。これで、明日からは不安なく振れるのがうれしい」と話したとおり、翌最終日は3バーディー、ノーボギー。17番(520ヤード、パー5)では残り230ヤードを3Wでピン4メートル弱に2オン。惜しくも外れましたが、久々のイーグルパットを打つなどの内容で「69」。一時は首位に2打差にまで迫るさくらゴルフが戻ってきました。
「優勝争いには絡んでないと思ってましたけど、後半はトップとの差も分かっていました。こういう”自分のゴルフ”をしていれば、いずれ優勝争いに加われると思います。やっと準備ができた感じです」
2日連続でボギーなしの内容に、遅ればせながらさくらの”開花宣言”も出ました。
この試合優勝すれば6人目の7億円に到達するところでしたが、それはひとまずお預けです。が、それももう時間の問題です。昨年はこの大会、優勝した招待選手、モーガン・プレッセル(米国)の2位。ここ5年間ではすべてベストテンに入っているさくらには相性のいい大会です。今年も優勝にこそ届きませんでしたが、不振脱出への大きなきっかけをつかんだ幸運のトーナメントといえそうです。昨年の大会では口蹄疫(こうていえき)被害を受けた地元の宮崎に、2位の賞金1200万円を全額寄付。今回の震災でも義援金などの募金活動のほか、鹿児島県内の「さくらゴルフアカデミー」施設を被災者に開放。山形に所有している土地の一部を仮設住宅用地として提供したりと、社会貢献、被災者への思いもつのらせながらツアーを戦っています。
今年のさくらは、ツアー開幕前の女子アジアンツアー「夢屋ドリームカップ2011」(愛知・平尾CC)で通算8アンダーで逃げ切る幸先のいいスタートを切っています。
震災によるツアー中断期間で思わぬスイングの変調に苦しみましたが、どうにか長いトンネルからも抜け出しそうです。今年のワールドレディスも、最終日は1万人を超えるなど4日間で計2万9477人と大勢のギャラリーを集めました。その中でさくらはツアートップ級の人気を集めていました。”若い、若い”と思っていたさくらも、もう25歳を過ぎました。もはや”中堅”のグループに入ってきます。今年は34歳の不動裕理が開幕早々の2連勝で、実力派健在を実証しました。これに横峯さくらが続けば、すでに2勝をもっていかれた韓国パワーへの強力なストッパーとなるでしょう。苦しみから這い上がったさくらの今季1勝目は、一気に近づいた感じがします。