左肩痛に悩み、ここ3年間鳴かず飛ばずだった谷原秀人(35)が、世界遺産・富士を仰ぐ御殿場でよみがえりました(三井住友VISA太平洋マスターズ)。10年VanaH杯KBCオーガスタ以来の嬉しい復活Vでツアー通算10勝目。20歳の川村昌弘、21歳の石川遼らの激しい追い上げを受け、6番では川村にトップを並ばれ、遼には18番、左6メートルのイーグルパットを決められればプレーオフという冷や汗の1打差優勝(ー13)でした。優勝した谷原秀人と1打差2位の石川遼のワンツーフィニッシュ・コンビは、21日から豪州・ロイヤルメルボルンGCで始まる国別対抗戦W杯出場のため、休む間もなくメルボルンに向けて出発しました。今週末も楽しみです。
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11月も半ば。海抜1000メートル近い富士山ろくの風は肌を刺します。その風が舞って「風の強弱のジャッジが難しく、距離感が最後までつかめなかった」(谷原秀人)といいます。冷たい空気にさらされたグリーンは、一段とスピードを増し、最終日は評判の高速グリーンも手におえない速さになっていたようです。3番のパー5ではバーディーにした谷原ですが、以後どうしてもバーディーがとれません。昨季の平均パット数第1位(1.728)、今年もこれまで第1位(1.729)とパターの名手にして、最終日はストレスの溜まるグリーン上でした。6番では並びかけてきた若い川村ですが、8、9番の連続ボギーで自滅していきました。反して5打差逆転へ、石川は1番から7メートルを沈めてバーディー発進。3番、6番、11番のパー5は確実にバーディーにして4つ伸ばして追ってきます。バーディーがとれない谷原には不気味な遼の猛追。昨年の覇者、過去ここで2勝している遼には得意なコースです。ところが後半14番で下り8メートルのバーディーパットを2メートルオーバーさせ、返しも外す3パットボギー。大詰の17番(パー3)ではグリーン右に外してまたボギー。冷たい風、グンと気温が下がってきた寒さに優勝争いの重圧・・厳しい条件ではありましたが、大詰の2ボギーは、遼には痛かったでしょう。
最終組の谷原。一組前の石川。2打差がついた石川が、最後の望みをかけた18番(パー5)。2オンした遼はピン左6メートルのイーグルチャンス。決めれば追いつく勝負のパットでしたが、カップ手前で左に切れ、1打及ばないバーディーどまりでした。谷原は15、16番を連続ボギーで2位に1打差に迫られるなど苦しみながらもしぶとく踏ん張りました。最終18番は、第2打をグリーン左まで運びながらアプローチをミス。5メートルのパットを残しましたが2パットのパーで凌ぎ、遼を1打差でかわしました。やはり最後は、ランク1位を誇る正確なパットを武器に谷原は冷静なゴルフに徹しきりました。
3年ぶり復活Vの谷原秀人のコメント
「大変だった~ぁ。でもフジサンケイ(07年=富士桜)もそうだったけど、富士山に近いところで何か縁があるんじゃないかと思いますね・・。好きなコースの御殿場でやっと勝てて、本当にうれしいです。(スコアが伸びなかったが)冷たい風にはみんなも大変だったのでは・・。ピンポジも結構難しかった。川村君がポンポンといって並ばれたけど、そのあとすぐボギー打ってくれた。そういう流れになると、伸ばせないのがゴルフなので。8番から14番までの中盤でスコアが動くものなので、周りを見ていたのだけど、みんななかなかバーディーがとれない。これは我慢していればチャンスがあるなと思っていました。きょうは2打差もあったし、ショットも大暴れするようなことはなかったし、その場の空気でひたすら守っていました。そこでみんな伸ばせなかったのが勝因ですかね。10勝目というのもうれしいですね。一ケタの人はいても二けた台はあまりいないので、そこに到達できてよかったです。これで自信を取り戻して2勝、3勝できるようになっていきたい。ショットは悪くないし、誕生日(11月16日で35歳)と優勝がダブルできましたから、これ以上はないですね」
06年の全英オープンではいいパットを次々と決めて5位に入り、国内賞金ランクは2位で賞金王を争う選手として注目を集めました。しかし10年、VanaH杯KBCオーガスタに勝ったあたりから左肩痛に襲われました。検査しても原因がつかめず、肩から背中に通じる腱の損傷だったようです。その間もプレーは続けましたが、飛距離は落ち、ショットの精度も落ちて苦しみました。「その分、リカバリーやパットが磨かれた」(谷原)そうで、パットNO1の技術は“けがの功名”で生まれたともいえるでしょうか。どん底の時期を支えてくれたのが、元アイドルグループ「ココナッツ娘。」メンバーの絢香夫人。食事面や精神面での内助の功は大きかったようです。
「もともと冷え症で、末端が冷えるんで寒いのは苦手」という谷原。御殿場では足の裏にカイロを入れたり、ウエアも何種類も持参してしのいだそうです。秀島トレーナーが、足の血行を促進するふくらはぎの筋力強化や温熱療法を施してコースに送り出すなど万全の策も講じたそうです。今週は夏のメルボルンへの転戦で、大いに期待をしていいでしょう。
「遼もいい感じだし、力を合わせて優勝カップを持って帰りたい」と、02年丸山茂樹・伊澤利光コンビで勝ちとったW杯優勝の夢ふたたびを誓って豪州に飛び立ちました。