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今季すでに3億7000万円を稼いだ男。国内初お目見え、福島OPを沸かせた松山英樹、世界レベルのゴルフ!

福島のギャラリーの声援に応える松山英樹(ダンロップ・スリクソン福島OP=福島グランディ那須白河GC)提供:JGTO
福島のギャラリーの声援に応える松山英樹(ダンロップ・スリクソン福島OP=福島グランディ那須白河GC)提供:JGTO

世界を股にかけて戦う松山英樹(23)が、今年初めて日本のファンの前でプレーし、大喝采を受けました。自らが総合用品契約を結ぶダンロップ主催の「ダンロップ・スリクソン福島オープン」(福島・グランディ那須白河GC、7月23~26日)に特別参加。悪天候で1日延期になった全英オープンのセント・アンドルーズから水曜日の朝に帰国して木曜日からぶっつけの本番という強行日程もものかわ、最終日は10バーディーを奪う「64」を出して通算18アンダーの9位に入る健闘。「帰ってきてくれてありがとう!」の大声援に笑顔で応えました。今季、すでに3億7000万円を稼いでいる男の晴れ姿でした。試合は24アンダーを出した49歳のプラヤド・マークセン(タイ)が今季初勝利でツアー5勝目。

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今季は優勝こそまだありませんが、米ツアートップ10に7回。マスターズ5位、全米、全英各オープン18位と、メジャーでも世界レベルのゴルフを続けるわれらが松山英樹。その英樹が全英から直接帰国して福島オープンに出場するとあって、大会関係者も早くから興奮気味でした。大学時代(東北福祉大)、仙台で4年間を過ごした東北に起きた大震災。「あれから4年が経ってまだ一度も東北の試合に出ていなかった。去年から米ツアーで戦っていてその1年目はアメリカでの試合を優先したかった。で、今年の福島での試合は、アメリカより出たい気持ちが強かった。東北の人たちに自分のプレーを観てもらって、盛り上がってもらえればうれしいと思って・・」(松山)

大勢のギャラリーを引き連れ、キレのいい″世界レベル〝のショットを見せる松山英樹(ダンロップ・スリクソン福島OP)提供:JGTO
大勢のギャラリーを引き連れ、キレのいい″世界レベル〝のショットを見せる松山英樹(ダンロップ・スリクソン福島OP)提供:JGTO

震災が起きた11年。アマチュアでマスターズの出場資格をつかんだ松山は、行くか自粛するかで悩んだ末、東北の人たちに背中を押されてマスターズ初出場。ベストアマに輝いた思い出を忘れていません。世話になっているダンロップの試合ということもありますが、ようやく実現した東北での試合出場に感謝の念を込めての登場だったのです。優勝賞金1000万円という小規模な大会でしたが、そんなことは松山にとっては関係のない問題でした。スコットランドから10数時間かけた空の旅から直接、羽田⇒福島入りするハードなスケジュールにも耐えました。寒さで震えたスコットランドから、酷暑の続く日本列島への移動。アップダウンがあり、グリーン回りの傾斜の強いコース。芝生が違う上、固いセント・アンドルーズのフェアウェイから、一転して柔らかだった福島のコース・・。すべてに条件の異なる環境にも、プロゴルファーは耐えなければなりません。

初日から2866人のギャラリーのほとんどが松山の組につきました。この試合限定でキャディーを務めたのは東北福祉大の後輩・早藤将太クン(4年)。スタート前の練習場には黒山の人だかりで朝から松山を驚かせました。「海外では基本的には自分がメインではないので・・。ここでは全員が自分に声援を送ってくれるので、その差を感じましたね。緊張もしました」(松山)。初日、試合前半はさすがにショットの距離感も合わず苦戦続き。それでも後半は踏ん張り、終盤に3バーディーを奪って盛り返し、6バーディー、4ボギーの2アンダー、70。34位のスタートでした。疲労のピークにありながら2日目にはボギーなしの5バーディー、67で回り、23位浮上。3日目。「練習場からちょっとおかしかった」(松山)といい、試合では「軽い熱中症みたいな感じでボーッとなった。頭を冷やして頑張った」(松山)と体調不良に襲われながら、3つスコアを伸ばし25位に踏みとどまりました。首位とは7打差となって「最終日は10アンダーは必要。アイアンショットの精度が上がってパターが入ればチャンスはあるかなと思う。ビッグスコアを出します」(松山)と、最後まで逆転優勝を諦めない執念をみせました。

初日、2日目と同組で回った中嶋常幸(左=背中)とホールアウト後に握手する松山英樹(右)=福島グランディ那須白河GC=提供:JGTO
初日、2日目と同組で回った中嶋常幸(左=背中)とホールアウト後に握手する松山英樹(右)=福島グランディ那須白河GC=提供:JGTO

有言実行とはこのことでしょう。「体調が大分よくなった」という最終日。2、3番を連続ボギーにしてスタートはつまずきながら、4番から4連続バーディー。後半に入った13番からは5連続バーディーの離れ技を演じて10バーディー。「1打目がフェアウェイにいけば、そこから全部バーディーが取れるコース」(松山)と豪語できる″復活〝をみせて8つ伸ばした64。パー5の最終18番でグリーンを外し、寄せた2㍍のバーディーパットをミスしたのを残念がりましたが、世界で戦う男の実力の片りんを見せつけました。

通算18アンダーまで伸ばして9位。
ホールアウト後の松山英樹のコメント

★「そんなにびっくりするほどのいい感じではなかったけど、最終日は体調がよくなったので集中できた。最終ホール、イーグルなら20アンダーにいくと計算していたのですが、18番のセカンドショットがもったいなかった。でも10個のバーディーがとれたので、応援してくれたファンに見合うプレーができたかな、と思う。1ラウンドで10バーディーをとったのは、あまり記憶にないですね。もう少しショットがピタピタくれば、よかったのですが・・。うまく対応できなかった部分です。子供の声援も多くて、本当に嬉しかったです。時間と体調が整えば、また日本でプレーしたいです」

優勝こそできませんでしたが、世界の松山英樹を呼び戻したダンロップ・スリクソン福島オープンの第2回大会は、盛会裏に終わりました。4日間のギャラリーは、昨年の約1.5倍となる1万5884人。ホールアウト後の松山は子供限定でサイン会を行いましたが、新たに列を作った大人にも暑さのなか30分近くもペンを走らせました。

最終日、大会コースレコードタイの63をマークして逆転優勝したプラヤド・マークセン(タイ)。2年ぶりツアー5勝目、49歳の快挙だった(ダンロップ・ スリクソン福島OP)提供:JGTO
最終日、大会コースレコードタイの63をマークして逆転優勝したプラヤド・マークセン(タイ)。2年ぶりツアー5勝目、49歳の快挙だった(ダンロップ・
スリクソン福島OP)提供:JGTO

この後は、今週中にも渡米して世界選手権シリーズのブリヂストン招待(8月6~9日、オハイオ州ファイアストーンCC)と、今季最後のメジャー、全米プロ(8月13~16日、ウィスコンシン州ウィスリングストレイツ)の2連戦に挑みます。米ツアーもプレーオフを含めてあと6試合といよいよ大詰。今季まだ勝利のない松山。「優勝は常にしたいと思っているのですが、そんなに簡単にいくものではないです。体調管理をしっかりして、まだまだショットとパットを磨いて最後のメジャーで頑張りたいです」ー。

まだ米ツアー参戦2年目。それでいて世界レベルのゴルフをみせるようになった英樹です。今季すでに約3億7000万円(297万7652㌦)を稼いでいる松山。米ツアー2勝目が今季中に実現するかどうか。成績次第では年間、超4億円が実現するスーパープレーヤーにのし上がりました。ますます目が離せません。