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心優しい静かな男・岩田寛(34)、プロ2勝目で″殻〝を破るか?!米ツアー挑戦の日も着々!

プロ2勝目を挙げた岩田寛(右)とホストの長嶋茂雄氏(左)=北海道、ザ・ノースカントリーGC=提供:JGTO
プロ2勝目を挙げた岩田寛(右)とホストの長嶋茂雄氏(左)=北海道、ザ・ノースカントリーGC=提供:JGTO

プロ12年目の34歳。シャイで、静かで、心優しい飛ばし屋・岩田寛が、ようやくプロ2勝目。″本モノ感〝を漂わせ始めました。
長嶋茂雄招待セガサミーカップ(北海道・ザ・ノースカントリーGC、7月2~5日)。初日32位の出遅れから2日目16位⇒3日目3位と順位を上げ、2打差の3位から出た最終日はノーボギーの6バーディー、66のベストスコアで回って通算16アンダーの鮮やかな逆転勝ち。昨年9月、苦節11年目で挙げたフジサンケイ・クラシック以来のプロ2勝目でした。初優勝まで2位3回、3位5回と惜敗続きで「勝てそうで勝てない男」といわれた心優しいヒロシが、ようやく実力を発揮してきた2勝目。賞金ランキングも1位(3917万4483円)に浮上しましたが、今秋は米ツアーの下部ツアーとの入れ替え戦に挑戦します。

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180㌢に近い長身から大きな弧を描く美しいスイング。300ヤードドライブを身上とする飛ばし屋。パットの巧さは「日本を代表する選手」(東北福祉大の同級生、宮里優作のコメント)です。父親・光男さん(71)は、PGAのティーチングプロで、いまも地元仙台で活躍中の人・・。04年にプロ入り。06年から9年連続でシード権を維持している選手で、もうとっくにトッププレーヤーとして日本のゴルフを担っていてもおかしくないプレーヤーなのです。昨年のフジサンケイでようやく11年目の開花を遂げた岩田ですが、11月のダンロップフェニックスでは、最終日に63を出し松山英樹に追いついてプレーオフ。しかしプレーオフの18番(パー5)では、いきなり右の林に入れ、脱出には木に2度当てて失敗。6オンになってパーの松山を楽に勝たせました。気の優しい岩田を象徴するような試合でした。

300ヤードドライを飛ばす岩田寛の豪快なショット(長嶋茂雄招待セガサミー杯(北海道ザ・ノースカントリーGC)提供:JGTO
300ヤードドライを飛ばす岩田寛の豪快なショット(長嶋茂雄招待セガサミー杯(北海道ザ・ノースカントリーGC)提供:JGTO

今季もタイ・オープン(日本ツアーとワンアジアツアー共催=6月)の6位、日本プロ日清杯(5月)の11位がありますが、2度の予選落ちなどいまひとつ波に乗り切れない日々。それがこの試合になって、勝負どころを逃がしませんでした。同組で回っていた今平周吾(22)が、1打差で迫ってきた終盤の17番(パー4)。第2打を8番アイアンでピンへ8㍍もショートしたのを見たのです。残り157ヤード。9番アイアンと思っていたのを急きょ8番アイアンに持ちかえた岩田は、ピン右1.5㍍につけて貴重なバーディー。そのまま逃げ切りました。昨年9月のフジサンケイでも3人が並んできた最終18番(パー4)。塚田陽亮が第2打をオーバーさせたのを見て「フォローと思って」(岩田)190ヤードのセカンドを6番から7番に持ちかえたのが成功。1.5㍍につけるスーパーショットでバーディーを射止め、初優勝した思い出が蘇ります。この大会では、バーディー数などをポイント換算して争う「長嶋茂雄賞」と、飛距離を競うドライビングディスタンス賞(297.50ヤード)の2冠もひとり占めする実力を見せつけました。
それでも、優勝がほぼ決まった18番グリーンでもガッツポーズをしませんでした。「そりゃ、ガッツポーズは僕だってしたいですよ。でも、今平クンと優勝争いをしていて、その相手の目の前でやるのは失礼かなと思ったんです」と、優しい気遣い心を持った選手も珍しいです。

岩田寛の優勝コメント

「このコースは毎年、パターが入らないので今年は入らなくてもイライラしないようにしていたのがよかった。3日目は全部強くて最終日は全部よかった。最後のパットだけは緊張しましたが、ショートだけは嫌だったので強く打った。ショットは先週の最終日からよくなった感じはありました。きょう丸山(茂樹)さんに会って″いいスイングするな〝といって戴いて、自信もっていいのかなと思ったんです。自分のスイングはあまり好きじゃないので・・。それと、去年のフェニックスで松山(英樹)に負けて悔しかった。僕は優し過ぎるんですかね。彼の気迫のようなものを見習いたいですよ。セべ・バレステロスは″優勝争いしている相手の喉元にかみつくつもりでプレーした〝そうですけど、僕にはできないです(笑い)。去年のHSBC(世界選手権シリーズ=中国・上海、11月)の3位も悔しかった。勝てた試合だった。悔しさが残ったですが、その悔しさを活かしてこれた。これで資格を得たので、今年は米ツアーの下部ツアーとの入れ替え戦に出てきます」

今年9月に始まる入れ替え戦は計4試合で争われ、その4戦だけの賞金ランク上位25位に入ると来季の米ツアー出場権を獲得できます。かねてから米ツアー挑戦を夢見ている岩田に、いよいよ期が熟してきたといえそうです。東北福祉大の後輩、松山英樹が米ツアーで頑張っているのもモチベーションになっています。「世界で一番レベルの高いところに行かないと分からないことがある」という岩田。やっとプロ2勝目を果たした遅咲きの静かな男が″殻〝を破りますか?!世界へ挑む闘争心が燃え始めました。