Daily Archives: 2017 年 2 月 6 日

ホールアウトから2時間!本人が驚いた開幕戦の大逆転V。10年ぶり、50歳代でレギュラーツアーを制したプラヤド・マークセン(タイ)とはどんな男?!

レギュラーツアーの開幕戦「SMBCシンガポールOP」を50歳で制し、優勝カップを受けたP・マークセン(タイ)=シンガポール・セントーサGC)=写真提供:JGTO
レギュラーツアーの開幕戦「SMBCシンガポールOP」を50歳で制し、優勝カップを受けたP・マークセン(タイ)=シンガポール・セントーサGC)=写真提供:JGTO

昨季、50歳でシニア入り、いきなり国内シニア賞金王になったプラヤド・マークセン(タイ)が、今度はレギュラーツアーの開幕戦で優勝する″奇跡”でアッといわせました。昨年から日本ツアー機構とアジアンツアーが共同主管しているSMBCシンガポールオープン(1月19日~22日)。今季もこれが日本ツアーの開幕戦でもありましたが、12位から出た最終日、4アンダーの67で回ったマークセンが通算9アンダーとして大逆転したのです。50歳代での日本ツアー制覇は、06年の52歳・中嶋常幸(三井住友VISA太平洋)以来約10年ぶり、ツアー史上6人目。これで得た2105万円の優勝賞金もさることながら、来季から2年間のシード権に加え、今季の全英オープン、全英シニアオープンのメジャー出場権もつかむなど、最高のシーズンになりそうな″価値ある優勝”でした。奇跡を起こしたマークセンとは、どんな人物??

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50歳とは思えぬパワフルなショットをみせたP・マークセン(タイ)=シンガポールOP(写真:JGTO)
50歳とは思えぬパワフルなショットをみせたP・マークセン(タイ)=シンガポールOP(写真:JGTO)

アジアンツアーと日本ツアーが共同主催している今大会は、出場156人のうち日本ツアーの出場枠は60人。昨季賞金王の池田勇太や同2位の谷原秀人始め、多くの日本選手もエントリー。さらに世界ランキング7位のアダム・スコット(豪)や同15位のセルヒオ・ガルシア(スペイン)ら世界レベルの選手も顔をそろえたビッグな試合でした。昨年からシニア入り(50歳から)しているマークセンは、昨季の国内レギュラー賞金ランキングは第2シードの68位(出場18試合)。この資格で出場が可能でした。日本ツアーには2001年から本格参戦していますが、アジアはマークセンのおひざ元。年間を通してアジアンツアー(欧州も)、日本ツアー、日本シニアツアーを休みなくかけもちしている″渡り鳥”。49歳の15年などはアジア各地で世界ランク対象競技、34試合をこなし、50歳になった昨季から日本シニアの選手となったとたん、9戦4勝、平均ストローク67.73(1位)でダントツのシニア賞金王。、獲得賞金6227万8000円は、室田淳が持っていた最高額を破り、シニア最高をマークしました。まさにシニア界を震え上がらせた″シニアの鬼”でした。

ティーグラウンド上、打ち終わって打球方向を確かめるマークセン。
ティーグラウンド上、打ち終わって打球方向を確かめるマークセン。

ところでこの試合、51歳の誕生日(1月30日)を8日後に控え、初日71のパープレーで54位スタートでした。3日目を終わってやっと5アンダー。首位には4打差の12位タイ。最終日は、最後から9組前のプレーで、何の注目も受けない位置にいました。が、終わってみれば5バーディー、1ボギーのベストスコアタイ「67」。通算9アンダーでのホールアウト。後続のアダム・スコット(豪)、ソン・ヨンハン(韓)らの追い上げが届かず、マークセン本人も驚いた1打差の逆転Vとなったのです。日本ツアーでは15年7月のダンロップ・スリクソン福島OP以来2年ぶりの6勝目。アジアンツアーでは2年ぶり10勝目。なんと、ホールアウトから約2時間も経って棚ボタの優勝決定とあって、もう笑いが止まらない喜びよう。あたりかまわず握手・握手に笑顔また笑顔。

開幕戦優勝は、この先うれしいことばかりです。もちろん日本のレギュラーツアーには全試合出場できますし、この開幕戦には全英オープンの出場権がかかっていました。全英オープンと全英シニアオーップンは週がつながっているので、日本シニアの賞金王として出られる全英シニアオープンと2試合続けて海外メジャーへの挑戦が実現します。自身6回目の出場になる全英オープンについては「うれしいですね。タイの仲間と一緒に出られるのもワクワクします」(マークセン)と、喜びを隠せません。国内シニアツアーはまた1試合増えて年間18試合。レギュラーツアーは、昨年と同じ26試合ですが、賞金総額は8600万円増えて35億9475万円です。昨季は日本だけで7649万1252万円(シニア6227万8000円、レギュラー1421万3252円)を稼いだタイからの刺客。 今季はどんな配分で出場するのでしょうか。いずれにしてもフェアウェイに散らばっている札束が呼んでいます。

16歳からタイのゴルフ場でキャディーをしながら「ゴルフを覚えた」というマークセン。25歳でプロに転向。164㌢、68㌔と上背はないのですが、強い足腰とシャープな振りで、ハンパでない飛距離を50歳を超えたいまでも持っています。それでいて小技やパターも一級品というのですから強いです。最終日の競り合いにやや弱い?との評もありましたが、シニア入りしてから他を見下ろすゴルフでメンタル面の″弱さ”もすっかりカゲをひそめました。

飛ばし屋・マークセンだが、パットも手堅い。グリーンでラインを読む。
飛ばし屋・マークセンだが、パットも手堅い。グリーンでラインを読む。

★シンガポールでの開幕戦を制した時の優勝コメントを振り返ってみましょう。

「アジアで10勝目?ありがとうございます。みなさんに感謝しています。ホールアウトしてから長かったですが、もしラッキーがあればウイナーかなと思っていました。アジアで長くプレーしてますが、いまの若い人は遠くへ飛ばすことを考え過ぎている選手が多いです。体を痛める原因にもなるので、飛ばすことよりもっと経験を積むことを大事にしてほしい。私は91年にプロ転向してから26年間、プレースタイルは何も変わっていません。週末に会場にいられること(決勝進出)だけを考えています。健康と、いいゴルフをキープするには、早く寝て、健康的な食事をとり、たばこは吸わず、アルコールも飲みません。ムリをして出かけず、普通の生活をすることです。ゴルフに関しては、フェアウェイのボールを打って、パットはあんまり強く打たないよういするぐらいです」

まさに″自然児”マークセン。昨秋に予定していた米シニアツアー(チャンピオンズツアー)への予選会挑戦を、3年前に亡くなった前妻の埋葬葬儀とぶつかって中止しましたが「今年は予定通りチャレンジすることは変わっていません」という。計画通りなら、今秋の予選会を通って来季からは米国でのシニアツアー参戦になるでしょう。マークセン旋風も今年限りになりますかどうか。開幕戦を制した″51歳の鉄人”の戦いぶりが注目です。