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2年連続賞金女王へ。最終日、OB打って勝った鈴木愛(23)。世界のメジャーに通用するか?!

柔軟な体から安定したショットを放つ鈴木愛。
柔軟な体から安定したショットを放つ鈴木愛。

昨季の賞金女王、鈴木愛(23)が今季初勝利となる通算6勝目を貫禄のゴルフでつかみました。開幕戦から3、2、1位と快調な足取りをたどった愛ちゃん。3戦目のTポイントレディス(大阪・茨木国際GC)では初日を雨で流しましたが、あとの36ホールの短期決戦でトップを譲らず、最終日は6番でOBを出しながらも動じないゴルフで通算8アンダー。追撃急だった全美貞(韓)を1打差に抑えての快勝。開幕からの3戦韓国勢優勝を阻みました。次戦のターゲットはANAインスピレーション(29日開幕、米ミッションヒルズCC)。日本の賞金女王の実力は世界のメジャーへ、どこまで通じますか!?

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今季、開幕から好調。3、2、1位とロケットスタートをみせた鈴木愛。
今季、開幕から好調。3、2、1位とロケットスタートをみせた鈴木愛。

昨季は1億4012万2631円を稼いで初の賞金女王に輝いた鈴木愛です。それでも年間2勝しかできず、昨年6月のアース・モンダミンカップ以来、9か月ぶりの勝利の味に「やっと勝てました。去年は後半戦も勝つチャンスはあったけど、なかなか勝ち切れなかったから、ホントに嬉しい」と、久々の優勝の美酒をかみしめました。
愛ちゃんといえば、試合後のコースでも暗くなるまで居残り、球を打ち続ける″練習の鬼〝です。練習はウソをつかない。女子プロ界でも総合力で誰にも負けない愛ちゃんですが、中でもパットの巧さは一段と秀でた力を身に着けた選手です。勝負のパットをこれまでも次々と決めてきましたが、昨季の最終戦、最終日、最終ホール(宮崎CC18番)、上り5㍍のパーパットが忘れられません。愛ちゃんがここでダブルボギーを叩いても賞金女王は決定的でした。が、このパーパットは賞金500万円、高級車両ベンツ、3年シードが贈られる「メルセデス最優秀選手賞」を決定づける1打でした。これをど真ん中から沈めた鈴木は、争そっていたキム・ハヌル(韓)に僅か1ポイント差で上回ったのです。

来週からは米ツアーのメジャーに挑戦する鈴木愛。どこまで通用するか?
来週からは米ツアーのメジャーに挑戦する鈴木愛。どこまで通用するか?

年が変わり、今季Tポイントでの最終日。1打差のトップで出た愛は、6番(パー3)でティーショットを右に曲げ、OBにしました「アマの人より下手なんじゃないかと思うほど曲がっちゃいました」(愛)というミスショット。しかし、打ち直しをカップ右5㍍につけ、これを沈める「ボギー」で凌ぎました。ここをダブルボギーにしていれば、勝負はどう変わったかもしれません。最小限の傷にとどめたあと、9番(パー5)ではすぐにバーディーを奪い返しで優勝へのペースをキープしました。

全美貞が迫ってくる18番(パー4)。一組前の全がバーディーを奪って1打差にして先にホールアウトしました。逃げ切れるか鈴木愛。15番をボギーにした次の16番では、5㍍のバーディーパットを入れて首位を守った愛です。最後の18番は8㍍超と思われた第一パット。愛はフックラインを読み切ってカップ50㌢につけます。ボギーにすればプレーオフという状況でみせたこのロングパットの寄せも愛ならではのしびれる1打でした。

昨年度の鈴木の平均パット数は1.7582。わずかの差で申ジエ(韓)にトップを譲って2位。この部門の奪回も今季の愛の目標の一つです。開幕から3試合を終えた時点では1.6667で2位のアン・ソンジュ(韓)を大きく引き離してトップを走っています。得意のパットは、今季も早くも大きな愛の武器になっています。

シーズン表彰式で晴れ姿の鈴木愛(東京・帝国ホテル)
シーズン表彰式で晴れ姿の鈴木愛(東京・帝国ホテル)

毎年オフは米アリゾナで自主キャンプを張り、昨年は米男子ツアーのフェニックスOPを観戦。優勝した松山英樹のプレーも目に焼き付けました「松山選手のゆっくりしたパットのリズムは参考になった」と、それを採り入れたりもしました。今春は1月末、沖縄でプロ野球ロッテの福浦らの自主トレに参加。「嘔吐(おうと)するくらいダッシュなどで走りまくった」という。米国合宿を前にして左太ももに肉離れを起こしたほどのトレーニングを積んだ愛ちゃんでした。

開幕戦を3位のあと、第2戦のヨコハマタイヤ・プロギアはプレーオフでアン・ソンジュ(韓)に敗れて2位。3度目の正直でゲットした今季初勝利。獲得賞金は2076万5000円でイ・ミニョン(韓)を抜き、早くもトップに立ちました。休む間もなく今週は水曜日(21日)に渡米。次週は29日からのANAインスピレ―ション(メジャー)にトライしますが、その前に全米女子OP(6月)の会場になるショール・クリークを視察してからANAのミッションヒルズ(カリフォルニア・パームスプリングス)に入るというプラン。

徳光アナからインタビューを受ける鈴木愛。
徳光アナからインタビューを受ける鈴木愛。

「海外のメジャーにも出られるようになったので、その経験はしっかりと生かさないとね。全米でも全英でも、ショートゲームがまだまだ。アメリカにいったらもういちどしっかりとショートゲームの練習をします。今週は勝てましたが、ショットがまだまだ。もう少しショットの精度が上がれば勝てる試合も増えてくると思うので」

勝って有頂天になるタイプとは縁の遠い愛ちゃんです。常に向上心を絶やさず階段を登っていく鈴木愛の姿勢はすばらしいものがあります。練習また練習。パットは命、というのが信条。「来週以降もアプローチのバリエ―ションをもっともっと増やしていきたい」ー。
開幕から韓国パワーに蹂躙(じゅうりん)されていた日本の女子ゴルフ界に、敢然と立ちあがったのは、23歳の鈴木愛でした。2年連続の賞金女王へ、まだ先は長いですが頼もしいハスラー登場です。

(了)