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″あっぱれ〝21アンダーでシニアのメジャーを制した米山剛(53)。″鬼〝のマークセンにも一矢!

自身初のメジャー優勝、日本プロシニア選手権の嬉しいカップを掲げる米山剛。(茨城・サミットGC)

シニア入りして4年目、53歳になった米山剛が、ようやく大きな花を咲かせようとしています。シニアツアーのメジャー、日本プロシニア住友商事・サミットカップ(茨城・サミットGC)で通算21アンダーのビッグスコアで初制覇。シニアになって3勝目ですが、メジャー大会を制したのは自身初体験。「まさかメジャーを獲れるとは思っていなかった。信じられないくらい嬉しい」と感無量の面持ちでした。日大時代は日本学生ほか学生タイトルを総なめにして華々しいプロ入り(87年)でしたが、レギュラーツアーでは99年に年間3勝しただけで、鳴かず飛ばずのままシニア世代へ。ここへきてようやく大輪の花を咲かせる予感を漂わせています。年間5勝を挙げて突っ走るプラヤド・マークセン(タイ)にもストップ(今回5位)をかけたこの男は、やはり″何か〝を秘めているようです。

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スイング改造で安定したショットを身につけた米山剛。(日本プロシニア住友商事・サミットカップ)提供:日本プロゴルフ協会

ただ一人、4日間とも60台で回った米山ゴルフ。持ち味のキレのいいショットを連発して優勝街道を突っ走りました。パターはいまや専売特許になった長尺パターで、長いの短いの、ポンポンと入れまくりました。「ヤバイくらい入っている」と自分でも驚くほどの好調なグリーン上。2日目に首位に立ってから、3日目はマークセンと同組で回って改めてマークセンの飛距離に驚かされました。16番パー3(178ヤード)で、米山は8番アイアン。同じ組の飛ばし屋、柳沢伸祐は9番アイアン。マークセンはなんとPWを握ってピンを大きくオーバーするショットを放ったのです。「ホントにマークセンはよく飛ばす。ドライバーでは自分は30ヤード置いていかれる。でも、どうせ飛距離では勝てないのだから、力むのはやめようと思った」と米山。その悟りが、米山に″自分のゴルフ〝をやらせました。真っ直ぐ飛ばすことを意識しながら4日間をやり通したあとには大きな栄冠が待っていました。

1番ティーグラウンドで笑顔を見せる米山剛(茨城石岡市・サミットGC)。

最終日は、同組の室田淳、鈴木亨にしぶとく追い上げられましたが、冷静に冷静に、とクラブを振った米山は崩れませんでした。それどころか、1、2番で連続バーディーをとるすばらしいスタートダッシュ。7、8番ではまたも連続バーディー。折り返したあとも12番のパー5では4㍍の難しいバーディーパットを沈めました。さらに鈴木亨が16、17番と連続バーディーで迫ってきた17番では、米山も6㍍をねじ込む6つ目のバーディーを決めて譲らず、ついにボギーなしの66。2位に4打差をつけ大会最多アンダーパー記録に並ぶビッグな勝利を手にしました。

68で回った鈴木亨は「トップの人に66で回られたら、65以下でいくしかないでしょう。米山さんにはつけ入るスキがなかった」と、日大の先輩・米山の安定ゴルフには、完敗を認めざるを得ませんでした。

スイングを変えて優勝争いの中でも「プレッシャーが大分薄れた」と話す米山剛のショット。(日本プロシニア選手権)

★初めてメジャーを制した米山剛の喜びは半端ではありませんでした。

「2ストロークのリードは、あってないようなものなので、きょう1日は追いかける気持ちで攻めていこうと。守っていたんでは優勝はできないと思った。最後まで攻める気持ちでやった方が、プレッシャーも少なくなる。比較的リラックスしてやれました。長尺パターはスムーズに手が動く。すごく楽。精神的な余裕が出る。短いパターだとバックスイングが上がらない。そして強くなったり、弱くなったりしてしまう。長尺は体全体で打てるので、怖い気持ちが少なくなる。集中できますね。21アンダーなんて、出せるようになって、自分であっぱれです。レギュラー時代は、打ってボールに聞いてくれ、というのが多かったが、いまはあそこに狙うぞという気持ちになっている。体のケアもしっかりして、自分がこういう風に振りたいと思ったスイングが少しずつできるようになってきた。イメージ通りの球が出ます。スイングを改造してよかったです」

最終日、68で米山剛を追撃したが及ばず2位タイに終わった鈴木亨(日本プロシニア=茨城・サミットGC)

シニアに入る5年ほど前から米山のスイング改造は始まっていました。片山晋呉に谷将貴コーチを紹介され、彼のところに通ってアウトサイド・インだった振りを、スイングプレーン通りスクエアに直しました。以前はオーバースイング気味でカットスイングだったのをスクエアに直してから、ショットが安定し始めたという。いまは、球に聞いてくれではなく、思ったところに飛んでいくことが多くなったそうです。今回もマークセンの飛距離には20~30ヤード後れをとっていましたが「もうムキになって振り回さず、いまはまっすぐ飛ばそうと意識している」と悟りを開いた米山ゴルフが、功を奏しています。

レギュラー、シニアを通じて自身初のメジャー優勝の体験。それも今季は海外に出て全米プロシニア、全米シニアオープン、全英シニアオープンのメジャー3試合(いずれも予選落ち)を経験、厳しいピン位置など身を持って触れてきたのも糧になっています。
国内のシニアツアーはあと6試合。今回の勝利で1000万円を得て2235万6000円。賞金ランク2位に上がってきましたが、1位のマークセンとの差は約4600万円の大差があります。″賞金王〝の声もかかりますが、「それはムリ。4位ぐらいがいいとこですよ。また全米プロシニアなどには出たいです」と謙虚な米山です。

最終日、1番ティーグラウンドに集まったギャラリー(茨城・サミットGC)

昨年は、真夏のファンケルで史上最多の5人プレーオフを経験。2ホール目で7㍍の一番長かったバーディーパットを入れて次につなぎ、3ホール目には30㌢につけたイーグルを奪って劇的なシニア初勝利を挙げています。続く広島シニアでは2日間14アンダーで2週連続優勝。積もっていたうっぷんを一気に晴らす爆発でした。昨季は賞金ランク2位。バーディー数1位(207)。米山ゴルフの持ち味を出し始めて、臨んだ今季でした。その今季、これまで10試合でトップテン4回。日本シニアオープンでは優勝したマークセンに6打差3位。太平洋クラブシニアではまたもマークセンの1打差2位でした。今季早くも5勝している″シニアの鬼〝(マークセン)に一矢を報いた米山の殊勲は「あっぱれ」でした。ビッグネームが衰えがみえてきたシニアツアーの新しい″主役〝に、しっかりと足をかけた米山剛のゴルフです。   (了)