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賞金ランク2位のノリス(南ア)に 競り勝った金谷拓実(21)。先輩・松山英樹に続けるか、4人目のアマ優勝!

アマ4人目のツアー優勝を勝ち取った金谷拓実。(ティーで待つ=太平洋・御殿場コース)

アマチュアの金谷拓実(かなや・たくみ=21)=東北福祉大3年=が歴史に名を刻む快挙をやってのけました。秋のビッグイベント、三井住友VISA太平洋マスターズ(静岡・太平洋クラブ御殿場)。最終日最終18番(パー5)で7㍍のイーグルパット沈め、デッドヒートを演じたショーン・ノリス(37)=南ア=を振り切ってアマチュア優勝を果たしました。プロツアーのアマチュア優勝は、8年前の11年、同じこの大会で優勝した松山英樹以来4人目。広島出身。アマチュア世界ランキング1位。日本アマV(15年)、日本オープン2位(17年)。アジア・パシフィック・アアマチュア選手権V(18年)、今年4月にはマスターズに初出場して予選を通過、58位に名をとどめた逸材が、さらにビッグなタイトルを手にして前進します。注目のプロ転向は、あと1年ある大学生活を終わった後になる見込みです。

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最終日はS・ノリス(南ア)とのデッド・ヒートを制した堂々の勝利だった。

雪を頂いた霊峰富士の山麓に広がる太平洋御殿場コース。3日目、63の快スコアで単独トップに立った金谷とノリスとの最終日のデッドヒートは壮絶でした。いきなり1番4㍍を沈めた金谷は3番(パー5)でもグリーン脇からの3打目をOKに寄せてまたバーディー。快調な出足を見せながら7番、9番で短いパーパットをミスする3パットを連発。2位に陥落の落とし穴へ。さらに11番。昨年のコース大改造で505ヤード、パー5を「パー4」で使用するこのホールでもボギーを重ねて、ノリスに2打差をつけられます。
12番(パー4)は、ピン1㍍につける意地のバウンスバック(ボギーのあとすぐとり返すこと)。「とにかく自分のベストを尽くそう思っていた」というこの踏ん張りが大きな転機でした。池のある14番(パー4)は右のクロスバンカーの土手にボールが止まり、足場はバンカーの中。高い位置にあるボールに対してはシャフトを短く持つしかありません。この難しいショットはピン上13㍍に乗せるのがやっと。下りの速いグリーンでは4㍍もカップをオーバーする大ピンチが続きましたが、パーパットをねじ込む粘りが生きました。

 

飛距離で争うよりも、頭を使ったコースマネージメントで巧みなゴルフをする金谷拓実。(静岡、太平洋・御殿場コース)

窮地を脱したあとは、金谷のパフォーマンスの見せ場となる大詰4ホールが待っていました。15番はティーイングエリアを前に出して(378ヤード)、飛ばし屋にはワンオンを狙わせようという演出ホール。まずノリスは、第1打をグリーン右に外してカート道路近くからのアプローチを4㍍に。これを沈めるしぶといバーディーで11アンダーに伸ばします。果敢にドライバーで攻めた金谷の第1打は、グリーンを転がり抜け奥のエッジへ。これを1㍍に寄せてバーディーの10アンダー。ノリスに食い下がります。16番(パー4)。8㍍のバーディーパットを入れたノリスに負けじと段差のある手前10㍍のフックラインを読み切って入れ返した金谷には凄みがありました。17番の名物パー3。ノリスが左に曲げ、バンカーショットもミスして遂にボギーを叩きます。金谷は1.5㍍のパーパットを決め、両者11アンダーで肩を並べて最終18番を迎える大一番となりました。

 

ティーで待つ金谷拓実。

フェアウェイ右サイドに金谷。飛ばし屋ノリスはそれをはるかに越すビッグドライブを見せて池越えの残りは約180ヤード。まず金谷が魅せます。5番アイアンで低い弾道で飛んだ金谷のボールは辛うじて池を越え、2段グリーンの上段に切られたカップへ、ランの効いたボールが近づき、ピンへ約7㍍のイーグルチャンス。ショートアイアンでセカンドを打ったノリスのボールは、グリーンを越えて奥のラフまでこぼすミスショット。3打目のアプローチをパターで転がし1㍍へ。約6000人のギャラリー全員が集まったかと思える18番グリーンサイド。重圧の中で緩い上りの7㍍スライスラインに乗ったボールは、ストンとカップに消えました。怒涛のような歓声と大拍手でした。逆転勝利に導く劇的イーグルパットで通算13アンダー。バーディーで上がったノリスを1打抑えました。8年前、東北福祉大の先輩、19歳の松山英樹(2年)が、アマチュアで制した同じ18番グリーンでのパフォーマンスでした。

203ヤードの難しいパー3を攻める金谷拓実(静岡・太平洋・御殿場)

☆倉本昌弘、石川遼、松山英樹に続く史上4人目のアマチュアVを成し遂げた金谷拓実のコメント。
「苦しかったが、最後まで諦めちゃいけないと言い聞かせて戦った。松山(英樹)さんからはプロの試合で勝ってこい〝といわれていたのでうれしい。『勝ちました!』といい報告ができます。18番のセカンドは220ヤード。5番アイアンでしたが、あれはミスショット。低い球で池を越えてくれと思っていたら、ちょうどいい感じでグリーンに届き、転がって上の段に登ってくれた。ラッキーでした。最後のパットは入れるつもりで打ちました。プロ入りは、学生生活がまだ1年あるし、時間をかけていろんな人と相談して決めたい」

 

シャープな金谷拓実のスイングを見守る池田勇太(初日、2日目同組=太平洋・御殿場コース)

広島・呉市出身。5歳のころ、両親の指導でゴルフを始めた金谷は、広島国際学院高2年の2015年に日本アマを17歳51日の史上最年少で制しました。東北福祉大に進学し、17年の日本オープンでアマチュア初の2位。昨年のアジア・パシフィック・アマチュア選手権を制して今年4月のマスターズにも出場しました。世界アマチュアランキング1位。ドライバーの平均飛距離280ヤード。今大会の平均飛距離は284ヤードの40位。平均パット数は3位でした。東北福祉大の阿部監督も認めるのは「ずば抜けてうまいショートゲーム」です。172㌢、66㌔。松山英樹から指摘されて世界で戦うためにも肉体改造に努めています。将来は海外ツアーへの挑戦ももちろん目指していますが、「飛距離よりも転がしてグリーンに上げていくような自分のゴルフスタイルに合っている」と、欧州ツアーを経験してからから米ツアーへの挑戦を夢見ているようです。

アマでツアー優勝したことで、石川遼が経験したように、アマのままで「日本シリーズJT杯(国内ツアー最終戦、12月5~8日)出場もあり得ますが、12月はオーストラリア・オープンに出場するのが有力です。女子で富士通レディス(10月)に勝ったアマの古江彩佳が即プロ転向しましたが、金谷の場合はそれはなさそうです。男子ツアーのJGTO・青木功会長からは「絵になる選手。早くプロになって」とアプローチを受けています。低調が続く国内男子プロ界に久々″客を呼べる新鋭〝の誕生は、いますぐにでもツアーメンバーに欲しい人材でしょう。

(了)