Monthly Archives: 5月 2022

今季シニアツアー、“渡り鳥”異色ゴルファー塚田好宣(52)に脚光。国内シニア、移り変わる勢力分布!

今季シニアツアー開幕戦「金秀シニア沖縄」でシニア初V。嬉しい優勝カップを抱く塚田好宣(金秀シニア沖縄)=写真提供:PGA

4月に開幕し2試合を消化した今季の国内シニアツアー。開幕戦の金秀・沖縄でシニア初勝利した塚田好宣(つかだ・よしのぶ=52)が、第2戦のノジマ・箱根シニアでも1打差の3位に入る優勝争いを演じました。シニアツアー4年目での“開花”ですが、レギュラー時代もプロ20年目の43歳で初勝利(東建ホームメイト杯)した苦労人。東海大を1年で中退、米国ニューメキシコ陸軍士官学校に“ゴルフ部があるから”と入学したのが“旅”のスタート。卒業後、SEルイジアナ大へ進学。さらに豪州へ渡ってプロ転向(94年)。99年には日本のプロテストに合格したあとも苦労は続くのですが、シニアになって突然の脚光です。最近、大きくサマ変わりする国内シニアツアーの勢力図と新勢力・塚田好宣をクローズアップします。なお、今季のシニアツアーは5月は日程がなく、第3戦は6月2日からの「すまいーだカップシニア」(栃木・イーストウッドCC)。全14試合です。

☆★      ☆★      ☆★      ☆★

「金秀シニア」18番グリーンの優勝シーン。キャディと握手する「渡り鳥ゴルファー」塚田好宣プロ(沖縄・かねひで喜瀬CC)

国内シニアツアーの今季開幕戦「金秀シニア沖縄オープン」は、塚田好宣の逆転初優勝で幕を開けました。最終日、前日首位のタワン・ウィラチャン(タイ)や、レギュラーツアーでもまだ戦っている手嶋多一という強敵を2位から「69」で1打差逆転の初優勝。1打リードできた最終18番(パー5)では、フェアウェイバンカーに2度入れるピンチをパーで凌いで逃げ切った“激勝”でした。「嬉しいですね。本当に待ち焦がれていたので・・。いつも2位ばかりでやっと勝てました。風もあって、難しいコースで勝てた。これで自信にもなった。去年少し腰を痛めて、トレーニングしながらようやく身についてきたゴルフが実感できるようになった。最後のパットはめちゃくちゃしびれましたね。これからまた海外にも挑戦したいですね」と、歴戦の勇士らしい初V塚田のコメントでした。

キャリアー豊富な塚田好宣のスイング。安定したフォームで評判も高い。

米国や豪州にまで渡って腕を磨いた塚田のゴルフは、安定した型にはまったフォームで、玄人筋からの評判は高いものでした。が、彼のゴルフ人生、なかなか勝運に恵まれなかったのです。シニア入りした2年目、20年の日本シニアオープンでは4位。昨年の日本プロシニアでは2R、3Rと単独首位を守り、“あわやメジャーV”というところまでいきましたが、優勝は遠かった。レギュラー時代は、プロ20年目の「東建ホームメイト杯」でレギュラー初優勝(13年)。43歳の初Vでした。海外志向は終始強く、アジア予選などをクリアして04年、08年、14年には全英オープンにトライ(いずれも予選落ち)。「東建」に勝った13年には、全米オープンも経験した(予選落ち)キャリアの持ち主です。

試合を求めて世界を渡り歩いたゴルフ人生は大変なものです。最初のニューメキシコ陸軍士官学校にはゴルフ部があったので入学したそうですが、「ライフル銃の磨き方や分解のし方も学んだ」(塚田)と、その2年間は訓練とゴルフに明け暮れた異色ゴルファー。卒業後はSEルイジアナ大に入ったが、また中退してオーストラリアへ渡りプロ宣言したのです。99年に日本のプロテストには合格したものの出場機会が少なく、またアジアンツアーにも積極的に出かけた戦歴。おかげで英語のほかタイ語も堪能になり、日本でタイ選手が優勝したときは、通訳を買って出たこともありました。

今季開幕戦「金秀シニア沖縄」で塚田と優勝を争い、1打差2位となった手嶋多一。シニアツアー中心選手の一人だ。

今季開幕戦の「金秀シニア」でシニア4年目で初優勝した塚田は、第2戦の「ノジマ箱根」でも初日「64」で首位発進でした。2日間大会で連続優勝を狙いましたが、兼本貴司、清水洋一の通算12アンダーでのプレーオフに、塚田は1打足りず参加できませんでした。2試合連勝は成りませんでしたが、上々の今季スタートです。シニア賞金ランクは2位(790万円)につけおり、今年は賞金王レースにも加わるでしょう。いま、シニアツアーは“常勝”を誇った室田淳やP・マークセン(タイ)らの全盛期にかげりが見えています。昨年は細川和彦や丸山大輔、今年は久保谷健一、横田真一らがシニア入りと、新しい顔も増えています。レギュラーとかけもちしている谷口徹、藤田寛之、手嶋多一らのシニア出場機会も増えてくるでしょう。国内シニアの戦力分布図も変動が激しい近年です。“異色”の「渡り鳥ゴルファー」52歳・塚田の出番も確実にやってきました。世界を巡った百戦錬磨の男が立ち上がります。

(了)