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★1試合2イーグルで予選通過!米国でも飛ばしの本領発揮・蝉川泰果。 手痛い予選落ちも味わって、中島啓太ともども米ツアーの“厚い壁”も知った! 次戦は欧州ツアーの「シンガポール」「タイ」へ、泰果!

蝉川泰果(東北福祉大4年)と中島啓太(日体大4年)。国内男子ゴルフ界で大きな期待を集める22歳コンビが、本場米ツアーで手痛い“洗礼”を浴びています。2人は今季揃って米ツアーへのスポット参戦でプロ生活を本格スタートさせましたが、初戦ハワイでの「ソニーオープン」は中島54位、蝉川67位。蝉川の第2戦「アメリカンエキスプレス」(カリフォルニア・PGAウエスト)は予選落ち。中島の第2戦「ファーマーズ・インシュランス」(カリフォルニア・トリーパインズGC)も予選落ち。蝉川は67位と大苦戦続き。中島はもう1試合、3週後の「ジェネシス招待」(2月16~19日、カリフォルニア・リビエラCC)にも推薦出場の見込み。蝉川は2月にシンガポールとタイで開催される欧州ツアー(DPワールドツアー)出場が予定されています。苦汁を飲んだこの1ヵ月間の米ツアー参戦を、期待の2人が“良薬”とできるかどうか?!

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米ツアー3連戦を終えた蝉川泰果。持ち前のロングドライブは見せたものの本来のゴルフを発揮できず米ツアーの厳しさを味わった。

難コースといわれるサンディエゴ郊外のトリーパインズGC。太平洋をのぞみ、切り立った崖に沿って広がるコースは雄大そのもの。サウスコースとノースコースがあり、特に7765ヤード、パー72の長いサウスは難関。大会は予選ラウンドはサウスとノースを1日ずつ回り、決勝はサウスコースが舞台となります。「ファーマーズ」の蝉川は初日サウス「74」で128位と大きく出遅れ。「予選通過はムリかなと思った」(蝉川)と振り返りましたが、2日目、ノースでは飛ばし屋の彼らしいゴルフをみせたのは圧巻でした。「経験したことがないくらいの強い風が吹いた」(蝉川)という中。インスタートの10番(パー5)で、16ヤードの第3打を直接カップインさせるいきなりのイーグル。好スタートで我慢のゴルフが続き、後半5番(パー5)で残り200ヤードを51でピン約3㍍に2オン。これを決めて2つ目のイーグルを奪ったのです。飛ばし屋・泰果の面目躍如の場面。この快挙で「70」と2つスコアを伸ばし、128位から通算イーブンパーの54位へ大飛躍。カットライン上で奇跡のような予選通過を果たしました。

決勝に進んだ3日目の蝉川は「アンラッキーも何度かあった中、何とかスコアを落とさずに回れた」と、4バーディー、4ボギー「72」のパープレーで49位。上位を狙った最終日は、さらに大きな重圧がのしかかり、ハワイでの最終日と同じくスコアを崩し7オーバー「79」。67位の終戦でした。

「予選に通ってほっとしましたけど、まだまだですね。ショットがどこへ飛ぶか分からない。レイアップしてるのにラフからラフへいってしまう。芝質もあって自分のショットが出せない。風の読みもうまくいかずにイメージと合ったショットがなかったです」と、タフな米国のコースに翻弄され続けた今回の遠征には笑顔もありませんでしたが、終わってみての感想は「コースも難しく苦しかった。これからやるべき課題が多くみつかった」と、唇をかむ蝉川でした。プロになってスタート3試合の米ツアー参戦は、ソニーオープン(ハワイ)67位。アメリカンエキスプレス(PGAウエスト)予選落ち。ファーマーズ・インシュランス(トリーパインズGC)67位の総括。ファーマーズ2日目の2イーグルだけが蝉川らしい片りんをみせたにとどまり、優勝したマックス・ホーマ(米)の通算13アンダーとは20ストロークの差をつけられました。この試合は昨年に続き、NFLのカンファレンス優勝決定戦とTV放送が重ならないように水曜日から土曜日までの開催。名門コースでの大会でもあり大勢のギャラリーが集まり、賞金総額は870万ドル(優勝賞金:151.2万ドル=約2億円)の大きな大会でした。

第2戦目「アメリカンエキスプレス」では、3日目に9バーディーを奪って「66」を出し5アンダーとしたのに、まだ予選通過(3日目カット)には5打足りなかったのにショックをうけたという蝉川。「ファーマーズ」でも飛距離は4日間平均で312ヤード超を記録し、ドライビングディスタンス10位。米ツアーでも引けをとらない数字を出しましたが、パーオン率は55.56と物足りないものでした。コースも難しいが、ただ飛ばすだけではダメ。いろんなショットができて、すべてにレベルの高さを求められる米ツアー。その厳しさを身をもって体験し「自分に足りない部分を感じた」という蝉川です。「ファーマーズ」では練習場で世界のトッププレーヤーと肩を並べたりして「夢のような3週間だった」ともらしたという。プロデビューで米ツアーの厚い壁に跳ね返されましたが、打ちのめされながら上に這い上がっていかねければならないプロの道。まさに“いい経験”をしたというところでしょうか。

中島啓太も難コース「トリーパインズGC」の厳しい壁を破れなかった。次戦の「ジェネシス招待」での雪辱を期している。

一方、中島も思いは同じでした。「ファーマーズ」の初日、3アンダー「69」と好ダッシュしながら、2日目は一転して「78」の大たたき。一気に99位に落ちて予選落ちでした。難しいサウスコースのインからのプレーで、13番(パー5)、後半3番(パー3)と、2度バンカーに落としたのがともに目玉という不運。ダボと2つ目からは3連続ボギーと立ち直れず、カットラインから遠ざかりました。
「(目玉になった)2つのバンカーはともに番手ミス。グリーンを外してもそこからパーセーブできるようなショートゲームができないと・・」と、力不足を嘆くばかりでした。

3週後の「ジェネシス招待」にも出場が見込まれている中島は「試合を重ねながら成長していくのが強いアスリートでしょう。そこを目指してやっていきます」と、手痛い予選落ちに反省点ばかりを口に。昨年もアマチュアとして経験した「マスターズ」や「全米オープン」、「全英オープン」の海外メジャーすべてに予選落ちだった中島です。アマチュア時代は大きな戦績を残していますが、プロとして高みへ上るために、こうした世界の重圧経験が貴重です。「勝った試合より負けた試合からこそ得るところは多い」という金言をかみしめてー。

蝉川泰果(左)と中島啓太(右)の“22歳コンビ”は、大学4年生プロだ(22.12 JGAナショナルチーム慰労会での二人=東京都内)=JGA提供

蝉川は米国の大手マネジメント会社、フィル・ミケルソン(米)やジョン・ラーム(スペイン)ら多くのトップゴルファーをマネジメントしている「スポーツファイブ」と契約。クラブはピン。中島はタイガー・ウッズやコリン・モリカワ(米)らが所属する米国のマネジメント会社「エクセル・スポーツマネジメント」と日本人として初めての契約を済ませています。テーラーメイドとは用具契約。2人とも海外ツアー進出に向けたサポート体制は整っています。今回の遠征、中島は最後の「ジェネシス招待」(リビエラCC)。蝉川は一旦帰国して2月上旬の欧州ツアー「シンガポール」と「タイ」に出場を予定しているという。2人の次戦での爆発に期待をかけましょう。

(了)