ゴルフの祭典「マスターズ」の1週間前に開催される「オーガスタナショナル女子アマ選手権」(3.29~4.1)に日本からは史上最多の10人が出場。うち馬場咲希(17、東京・代々木高)、荒木優奈(宮崎・日章学園高)、六車日那乃(日本ウエルネススポーツ大)の3人が決勝ラウンドに進み、最終日「70」のベストスコアをマークした馬場が通算2アンダー、214で日本勢最上位の5位に入る健闘をみせました。荒木優奈が通算1オーバー、9位。六車日那乃が通算5オーバー、22位。3日間54ホール競技で予選ラウンド2日間は近郊の「チャンピオンズ・リトリートGC」でプレーし、上位30位タイまでが「マスターズ」の会場「オーガスタ・ナショナルGC」で決勝18ホールを行いました。優勝は世界アマランク1位のローズ・チャン(19、米)が、通算9アンダーで並んだジェニー・べ(21、米)とのプレーオフを制し、初優勝しました。馬場はこのあと米国に留まって「マスターズ」を観戦、20日からの女子ツアーのメジャー「シェブロン選手権」(テキサス州)に臨みます。
☆★ ☆★ ☆★
馬場は予選ラウンドの2日間を優勝したローズ・チャンと一緒に回りました。チャンは現在スタンフォード大の2年生で19歳。タイガー・ウッズと同じ大学ですが、今シーズンはこの試合を含めて7戦6勝。20年には「全米女子アマ」を制し、世界アマチュアNo.1の称号「マーク・マコーマックメダル」を20年から22年まで3年連続で受賞している逸材です。初日からトップを譲らない完全優勝の強さでしたが、舞台をオーガスタ・ナショナルに移した最終日はスタートの1番でダブルボギー、2番でボギーをたたき2ホールで3つスコアを落とすピンチがありました。そのあと雷雨接近で3時間20分の中断がラッキーで、これを機に蘇ったのです。「セットアップから頭の中を整理していったら、グリップに違和感があるのが気がついた。右手のグリップを少し弱くしたら、ドライバーはじめ軌道に乗せることができた」と、コメントしています。一緒に回ってこのチャンをつぶさに見ていた馬場は「ショットもだけど、パッティングで長いのを何度も入れてきた」と、パットの技術の高さに驚きを隠せませんでした。20年の「米女子アマ」など、大きな舞台でバッグを担いできた父親を今回もキャディーに選び、気の合ったプレーを続けたチャンとの2日間の同組は、馬場にとって貴重な体験になったのでしょう。
このあと「全米女子オープン」「エビアン選手権」「AIG女子オープン(全英)」・・と馬場も出場するメジャー大会での再会も楽しみになる日米のトップアマ2人です。
「何としても予選をクリアして決勝ラウンドを回れるオーガスタ・ナショナルでプレーしたい」とコメントしていた馬場の夢は、予選ラウンド14位(通算イーブンパー)でどうにか果たせました。そして最終日のオーガスタ。予選ラウンドでショットが曲がり“不調”を口にしていた馬場のゴルフは、1日の休養日と練習ラウンドで見事に修正されました。「ドライバーをとにかく“振ること”を意識した。おなかがちぎれるくらい上半身を回す感じでやった」と振り返えりました。10番から出た最終日の馬場は、前半で4バーディーを奪う猛ダッシュ。オーガスタで難関の一つとされるグリーン左に池がある11番(パー4)で恐れずに攻めてバーディー。続いて13番のパー5もバーディーとし“アーメンコーナー”を征服しました。ところが後半に入り3番(パー4)で1.5メートルのパ―パットを外し、4番(パー3)は風を読み切れずティーショットがグリーンオーバー。2打目もグリーンに乗らず、3オン2パットのダブルボギー。前半の貯金を使い果たして「それまでいいリズムだったのにショックだった」(馬場)という。しかしこのあと雷雨による3時間超の中断は、馬場にとってもいい気分転換でした。キャディー控室で座ったまま爆睡約2時間。「ショックを忘れられてよかったです。せっかくオーガスタでプレーできているのだから最後まで諦めずに頑張ろうと思った」と咲希。再開後は6番(パー3)をボギーとしたものの、7番(パー4)、8番(パー5)で連続バーディー。最後の9番では「もう終わっちゃうのかなと寂しい感じでした」ともー。いいも悪いもオーガスタを満喫したようです。
「マスターズのテレビで見ていた景色を覚えていて、コースは感激でした。芝もものすごくきれいで、広々としたコースは最高でした」と憧れのオーガスタを体験してうれしそう。そして「最後まで諦めないことの大切さを改めて知った」と、オーガスタでの収穫をかみしめました。最終日6バーディーを奪いベストスコアの「70」。優勝スコアには7打及びませんでしたが、難関のオーガスタを通算2アンダー、日本勢最上位の5位はお見事といえるでしょう。
次戦は約3週後のメジャー「シェブロン選手権」(4月20日開幕テキサス州)。オーガスタでの貴重な経験を積んで、またひと回りレベルアップした馬場咲希のゴルフが楽しめそうです。
(了)