23歳の誕生日をハワイで迎えた蝉川泰果と今季から米ツアーを主戦場とする久常涼(21)が、松山英樹(31)とともに日本勢最上位で今季をスタートしました。8人の日本勢が参加した米ツアー第2戦「ソニーオープンinハワイ」(ワイアラエCC パー70)。中でも蝉川は3日目、首位に3打差4位につけ“米ツアー初V”の夢を膨らませましたが、最終日パットが決まらず「72」とスコアを落として30位に後退したのは惜しまれます。しかしこのあとも2試合の米ツアー出場のチャンスがあり、注目度の高まりは続きます。
久常は1イーグル、5バーディーと最終日のチャージをみせながら2つの手痛いダブルボギーで「68」に留まり、松山英樹、蝉川泰果、久常涼は3人揃って30位。しかし、飛距離もショートゲームも米ツアープレーヤーに劣らない日本若手陣の意気を世界にみせつけました。日本勢では蝉川のほか、松山英樹、久常涼、桂川有人の4人が予選を通過し、22年の大会覇者、松山英樹は最終日「66」で50位から30位まで順位を上げてフィニッシュ。桂川は最終日に崩れて通算1アンダー、74位タイに終わりました。大会は通算17アンダーで並んだ3人プレーオフを1ホール目のバーディーで制したグレイソン・マレー(米=30)が通算2勝目。
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蝉川は今年のハワイも「ソニーグループ」から提供された主催者推薦枠で出場。大会初日、23歳の誕生日に「68」で29位でスタート。連日60台のスコアで順位を上げ優勝争いにからむ高度なゴルフを展開しました。3日目を終わって大会トップの18バーディー。最終日は2バーディーに留まりましたが4日間20個のバーディーを奪ったのは、蝉川らしい攻撃ゴルフの証明でした。
東北福祉大4年(22年)で「パナソニックオープン」、「日本オープン」と史上初のアマ2勝を果たし、その22年10月にプロ転向。いきなり賞金ランク2位に入る実績を作った蝉川です。「ソニーオープン」にはプロほやほやだった昨年も出場、67位と辛酸をなめた大会。2度目の出場でいきなり優勝とはいきませんでしたが、一段と成長したプレーをみせたのはご立派。「日本ツアーで1年間戦い、昨年よりは成長しているかなと思います」(蝉川)と、自らも一段階段を上がったのを認めました。300ヤードは楽に越える無類の飛ばし屋さん。ワイアラエ15番、388ヤードの短いパー4では、グリーン右手前のバンカー脇まで飛ばすドライブをみせつけました。
泰果(たいが)という名前は、米ツアー82勝を誇るタイガー・ウッズ(米)にあやかってつけられたもの。米国にいけば米メディアからそんな質問も受けるなどの注目度で「そういわれるとうれしい。早く“和製タイガー”と呼んでもらえるようになりたい。こういう(インタビューを受ける)機会を増やしていきたいですね」と、海外での熱視線も素直に受け止める若者です。
ロングヒッターに加えてパットのうまさにも定評があるが、今回の最終日はハワイの強風にも遭遇して手元が多少乱れたのが悔しい。このあと米国に留まり次週の「ザ・アメリカンエキスプレス」(カリフォルニア州パームスプリングスのPGAウエスト=1.18~21)、「ファーマーズインシュランス・オープン」(カリフォルニア州トリーパインズGC=1.24~27)で腕を磨きます。「チャンスをもらえているので今度こそもっと上の位置で終わりたいです」と、さらなるリベンジを誓う“たいが”です。昨春のルーキーイヤーにも同じ米ツアー3連戦にスポット参戦し「ハワイ」=67位。「アメリカンエキスプレス」=予選落ち。「ファーマーズ」=67位と“惨敗”で終わった苦い経験を返上する意気込みは高まっています。
プロ3年目を迎える蝉川泰果には強力なスポンサーもつきました。グローバルな衛生薬品・日用品メーカー「アース製薬」(東京・千代田区)と24年1月1日から2年間の所属契約を結びました。ツアー通算4勝の蝉川にとって一層プレーに専念できるパートナーシップを得たことは、ゴルフの幅をさらに広めることになるでしょう。今後は同社のロゴ入りウエアやゴルフバッグを使用して試合に臨みます。
一方久常涼は、昨季の欧州・DPワールドツアーのポイントランク17位で米PGAツアーの資格を得たその第1戦。米ツアーメンバーとして初の試合をこなしました。最終日はイーグルあり、ダブルボギーありと「出入りの激しいゴルフ」になりましたが「2つ目のダブルボギーは自分のマネジメントミス。ほかにはいいプレーもできたのですが、欲が出すぎて悔まれます。でもバーディーも沢山とれたので持ち味は出せたかなと思う」と反省も含めて評価できる部分にもしっかりと目を向けています。久常も蝉川と同じく次週から米ツアー2連戦に向けて戦いは続きます。「米ツアーはレベルが高いので1打で順位も大きく変わる。取りこぼしを少なくして自分らしくアグレッシブにいきたいと思います」と、いよいよ始まった世界最高峰の米ツアーメンバーとしての挑戦に、決意を新たにしていました。日本が誇る若手軍団の“大暴れ”に期待しましょう。
(了)