遼がいないなら勇太がいる! 難コース・小樽CCを制した“北海道男”池田勇太の存在感!

国内ツアー10試合目、“北海道男”の本領をみせて今季初優勝の池田勇太(サン・クロレラクラシック=小樽CC)=提供:JGTO
国内ツアー10試合目、“北海道男”の本領をみせて今季初優勝の池田勇太(サン・クロレラクラシック=小樽CC)=提供:JGTO

 石川遼が予選落ちしたサン・クロレラクラシック(小樽CC)で、池田勇太(25)が今季初優勝を飾りました。ツアー9勝中、洋芝の北海道での勝利は3勝目という“北海道男”は健在でした。ベテラン平塚哲二(39)との猛烈なデッドヒートを演じた末の最終18番のバーディー決着は、勇太らしい勝負根性でした。今年も1勝目が遠かったですが、昨年も1勝目はやはり7月。1勝すると、それからは次々と勝ち始めて、終わってみると年間最多の4勝を挙げる尻上がりのゴルフでした。「今年もこれで最多勝、賞金王へ向けてやっとスタートが切れた」と“勇太節”もオクターブが上がりました。「遼&勇太」でもっているいまの国内男子ツアー。勝てない遼を尻目に、勇太1勝の重みはズシリとしたものがあります。今季初Vを引っさげて、勇太は今週からWGCブリヂストン招待(オハイオ州)、全米プロ(ジョージア州)と2週連続で遼らとともに米国遠征に出かけます。
 

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池田勇太は正確なショットで小樽を攻略。ベテラン平塚哲二の追撃をかわした。(小樽CC)=提供:JGTO
池田勇太は正確なショットで小樽を攻略。ベテラン平塚哲二の追撃をかわした。(小樽CC)=提供:JGTO

 入ってもよさそうなパットを何度も外し「ここまでついてないかねぇ。オレは運に見放されているのかと思ったよ」と、勇太は18ホールを振り返りました。1打リードでスタートした最終日、粘っこい平塚の食い下がりで2度も追いつかれました。惜しいパットはカップに嫌われ、バンカーに入れると目玉(14番)です。苦戦の続いたファイナルラウンド。しかし勇太は「我慢するしかないな」とキャディーと話しながらこらえました。並んで迎えた17番(パー3)。ピン手前5メートルについたバーディーパットが、久々にカップに沈みました。バックナインに入ってから初めてのバーディーです。
 この大詰でやっと1打リードを奪った勇太の顔が、心なしか紅潮するのが分かりました。
残りは18番1ホール。この“1打”を守れるか。タフな小樽CCの中でも難ホール18番パー4(462ヤード)。二人ともフェアウェイ右サイドの絶好のポジションにドライバーを打ちました。勇太より約5ヤードほど飛ばない平塚が、先にセカンドを打ちます。191ヤードを5Iで打ったショットは、ピン手前の落ちてカップに入ったかと見えました。が、ボールはカップのふちでけられ、1メートルに止まったのです。じっと見守っていた勇太は冷や汗でした。入っていればイーグルで逆転。勇太がバーディーをとってやっとプレーオフでした。しかしバーディーは間違いない平塚のショットを見せつけられてから打つプレッシャーは、並大抵のものではありません。
 「カップをなめたのは見えたよ」と平静を装った勇太。この緊張の中で残り185ヤードを6Iで打ちました。驚きました。ボールは平塚と同じようにピンに向かい、平塚とほぼ同じ、カップ1.2メートルにつけたのです。この1打こそ、球史に残るショットといえるでしょう。あの状況の中で、なかなかこうは打てません。「バーディーをとらないと勝てない。オレはもう構えて、打ちゃ、寄るだろうと思ってたよ。何も動揺はなかった」(勇太)
物事に動じない男・勇太の渾身の1打。この1.2メートルのウインニングパットを、何事もなかったように平塚より先に沈めました。この瞬間、平塚のバーディーパットを待たずに今季の初優勝が決まりました。通算14アンダーでした。
 

世界を股にかけて戦う平塚哲二。今回も粘っこいゴルフで勇太と接戦を演じたが惜しくも1打差で敗れた(サン・クロレラ、小樽CC)=提供:JGTO
世界を股にかけて戦う平塚哲二。今回も粘っこいゴルフで勇太と接戦を演じたが惜しくも1打差で敗れた(サン・クロレラ、小樽CC)=提供:JGTO

 一昨年は恵庭CCで日本プロを制するプロ初優勝。昨年は札幌CC輪厚コースでANAオープンを、そして今年は名門中の名門・小樽CCでサン・クロレラを制覇した勇太は、まさに「平成の北海道男」の称号をもらえそうです。そして奇妙なことに、この北海道の3勝、すべて14アンダーというのも偶然でしょうか。偶然といえば、勇太の小樽CC攻略の裏で、ショートホール・パー3を手玉にとったことも、強烈なインパクトでした。
 小樽CCのパー3は4番・192ヤード、7番・190ヤード、12番・222ヤード、17番・190ヤードと、4ホールともすべて190ヤード超のショートホールです。しかも池越えあり、立ち木ありと、気の抜けないホールでここでスコアを崩した選手も少なくありません。
 勇太は違いました。初日は17番でとった1バーディーだけでしたが、2日目は4番、7番。3日目は4番、12番。勝負のかかった最終日は、4番、7番、17番と3つもバーディーをとり、4日間合計で8バーディー。通算14アンダーの優勝でしたから、その半数以上をパー3でかせいだことになります。中にはロングパットを沈めたのもありましたが、ピンに近いバーディーチャンスにつけたショットも多く、ここでも勇太の好調だったショットとパットが証明できます。“ショートホールの鬼”も、称号に付け加えましょうか。
 
 今年の勇太は前半戦、あまりいいところがありませんでした。春の海外遠征もノーザントラスト62位。WGCアクセンチュア世界マッチプレー1回戦負け。ホンダクラシック予選落ち。WGCキャデラック55位。アーノルド・パーマー招待予選落ち。マスターズ予選落ち、といった具合。7月の全英オープンで日本人ただ一人予選を通過した(38位)あたりから、新調したアイアンになじみ始めました。サン・クロレラから投入したパター(オデッセイ ホワイト ダマスカス#5)もお気に入りです。国内ツアーも10試合目で初優勝がきて、ようやく勇太の季節が始まったようです。2年続きで年間4勝の勇太。3年連続で4勝以上を挙げているのは、過去に青木功とジャンボしかいません。ツアー9勝は、やっと石川遼に追いつきました。
 石川遼の魅力とは対照的な、昭和の香り漂う池田勇太の男っぽい存在感は、また格別です。遼がいないのなら勇太がいます。今週からの2週間、調子の上がってきた勇太、米国からのビッグニュースを期待しましょう。