今季未勝利の石川遼(19)が4週間ぶりの日本ツアー、長嶋茂雄招待セガサミーカップ(北海道・ザ・ノースカントリーGC)に満を持して登場しましたが、またまた昨年の賞金王・金庚泰(キム・キョンテ=韓国)の前にハットオフで2位どまり。どうしても“今季1勝”が挙げられません。マスターズ20位に入ったまではよかったのですが、国内ツアーでいまだにいいところを見せられない遼クン(2位2回、3位2回)に何かが起こっているのでしょうか?涼しい北海道で、次週もサン・クロレラクラシックが続きますが、悩める石川遼に笑顔が戻るのはいつでしょうー。
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最終日、最終組で4打差のキョンテ(金庚泰)と直接対決となった石川は「当たって砕けろの気持。初めから攻めていく」と、決意を語りましたが、キョンテの厚い壁は揺るぎませんでした。ノーボギーで4バーディーとさらにスコアを伸ばしたキョンテに対して、意気込んだ石川は1番でいきなりボギー発進。もうキョンテに水をあけられました。そのあと、前半で4バーディーを稼いで遼は追いかけます。ターンして11番でもセカンドをピンそばにつけてバーディーとし、3打差に追いすがる遼は、悪い方ではありませんでした。
「石川選手は他の人ができないことをする選手。5アンダー、6アンダーを出す人です。後半もついてこられたので、最後まで意識せずにはいられなかった」と、キョンテ。ところが今年の石川の弱いところは、どこかでポカをやることです。大切な終盤にさしかかった13番(パー5)で、残り230ヤードの第2打を3番アイアンで池ポチャの大ミスです。何とかこのホール、「6」で上がりましたが、1番に続く2つ目のボギー。トップで逃げながら18ホール、ひとつもボギーをたたかないキョンテとの違いは、ここにあります。6バーディーも取りながら、2つボギーを犯した遼と、ノーボギーのキョンテとの“差”が勝敗を分けました。「4打差」は最終ラウンドが終わってもそのままでした。
最近の石川、この前の試合、ミズノオープンの痛恨事も思い出します。優勝争いの最終日、10番で4つ目のバーディーを奪って12アンダーとした石川は、金庚泰、裵相文(ベ・サンム=ともに韓国)から1歩抜け出しました。ところが12番(パー4)、深いラフからの第2打がシャンク気味に右に飛び出して池へ。このホールトリプルボギーの「7」の大たたきで、痛恨の3位に落ちたのでした(優勝は黄重坤(ハン・ジュンゴン、韓国。キョンテは2位)。無理な攻めが命取りになりました。
話は戻りますが、昨年と一昨年の賞金王が同組対決したセガサミー。両雄の対決は今回で11度目でしたが、キョンテがこれで8勝2敗1分けと圧倒しています。ミスをしない、スキを見せないキョンテの強さは、石川の天敵ともいえる存在です。
今回も試合を終えた遼が語ります。
「キョンテはすばらしいゴルフをしててスキがなかったです。結局はスタートのスコア、4打差のまま。改めてすごい選手だと思いました。僕は4日間をみても大きなミスがたくさんあった。最終日も13番のセカンドのミス。あれが悔しいですが、これ以上、きょうのスコアは望めないかなという感じです。ホントにキョンテは日本ツアーのタイガー・ウッズかと思いましたよ。出る試合、全部優勝争いをしてますしね。キョンテが出てなくて、自分が優勝するより、キョンテが出て、負けた方が自分にとって意味があると思います。今回は“勝てた試合”と思わせなかった彼の強さがあった。負けたことに関しては率直に悔しいですが、今後、この負けを燃えるものに変えていけばいいと思います。もうちょっとゴルフのレベルをキョンテに近づけられるかなとは思いますから。ひたすら練習していくいだけです」
石川遼19歳。キョンテ24歳。昨年は5月のダイヤモンドカップで日本ツアー初優勝を挙げたキョンテは、日本オープンでは4打差5位から最終日64を出して逆転優勝。賞金ランク1位を石川遼から奪回しました。マイナビABC選手権では石川遼を1打抑えて3勝目をマーク。石川遼、池田勇太にも可能性のあった賞金王を、最終戦の日本シリーズJTカップ5位で決めました。抜群の安定度で、国内出場21試合で5位以内が12試合。オーバーパーで終わった試合はひとつもありませんでした。
そもそもキョンテの強さはアマ時代から際立っていました。05、06年は「日本アマ」を連覇して強い存在感がありました。06年のアジア大会では個人、団体とも金メダル。06年はアマで韓国ツアー2勝。プロ転向した07年には韓国ツアー賞金王。QTを経て08年から日本ツアーに本格参戦。10年に日本ツアー賞金王に上り詰めたのです。
それでも今年7月に終わった先の全英オープンでは、経験したことのない強風に対応できずに予選落ちでした。「僕の技術はまだまだ。努力が足りない」と帰国後は懸命の練習で、強いゴルフを取り戻しました。世界のメジャーで打ちのめされたことで一層たくましさを増したキョンテです。石川ならずとも日本ツアーの“天敵”ともいえる存在です。
しかし、いつの世も好敵手がいてこその成長があるものです。いまは目の上のたんこぶ、キョンテですが、5つ年下の石川遼が追いつき追い越せで切磋琢磨する姿に期待しましょう。この勝利で今年も賞金ランク1位(5千319万8000円)に躍り出たキョンテはやっぱり、コワイですが・・。