プロゴルフ界は女子ツアーが最終戦を終了、全美貞(ジョン・ミ・ジョン=韓国)が初の賞金女王に輝きましたが、男子ツアーはカシオワールドを終わって、次週、上位限られた26人だけが出場できる日本シリーズJT杯を残すのみとなりました。来季の賞金シード選手は上位70人。日本ツアーメンバーでないルーク・ドナルド(英)が27位に入ったため繰り下がって71位までが賞金シードを獲得しました。カシオワールド(高知・Kochi黒潮CC)は優勝争いとはまた別の厳しい“生き残り戦”が演じられましたが、ボーダーラインぎりぎりにいた41歳の細川は、最後奇跡的な6連続バーディーでフィニッシュしてベストスコア65で35位。試合前にいた「賞金69位」の位置をキープ。2年ぶりにシード選手に復帰しました。もう一人、高卒新人、19歳の浅地洋佑も67で回って通算11アンダーで、こちらは9位タイ。431万5000円を獲得。シード圏に約200万円足りなかった賞金75位から、一気に圏内の67位に浮上。高卒1年目で初シードの快挙を成し遂げました。“ボーダーライン71位の泣き笑い”をどうぞ!!
☆★ ☆★
来季の出場資格を争う「賞金ランキング71位まで」は、命の綱。日本シリーズに出場できる一握りの選手以外は、このカシオワールドが“今季最終戦”。ボーダーライン付近にいる選手は顔色の変わる試合です。細川もその一人。01年に難病指定の潰瘍性大腸炎を患ってからいまひとつ体調の優れない毎年。今シーズンも勝利からは見放され、ずるずると落ちる賞金ランクに一喜一憂しながらのシーズンでした。ストレスからか胃の痛む日々も続き、それでも少しずつでも積み重ねてきた賞金額でしたが、終盤10月になって、コカコーラ東海とキャノンオープンと2試合連続で予選落ちしたのが響きました。残り試合は減っていくし、予選会の順位(37位)と推薦出場だけにたよる細川は、出場試合は飛び飛び。ビッグトーナメントが続く秋の陣は出られない試合が多いのですが、先週のダンロップフェニックスで推薦出場をもらって息をつきました。31位タイに入って126万8000円を稼いで賞金ランクぎりぎりの69位。今回のカシオワールドも推薦出場で最後の望みをかけたのです。
予選は通ったものの、3日目まで62位。このまま60位前後で終わればシード入りは厳しい状況でした。41歳・細川の執念をみました。最終日、アウトで一つ 伸ばしたあと、最後の9ホールに入ると13番で2.5メートルを入れ、神がかったように長いパットも入り始めました。ショットもぴたぴた決まって、最終18番まで6連続バーディーの猛烈なラッシュでホールアウトです。ボギーなしの7アンダー、65。3日目の62位から35位まで浮上して貴重な108万円をゲット。計1414万8280円として賞金ランク69位をキープしました。ホントに50万円単位の争いでした。
最後はミラクルゴルフで、昨年落としたシード権を取り戻した細川は、報道陣に囲まれると涙があふれて絶句!しました。
「いまの気持ち? いえない。信じられない。苦しかった。優勝の次にうれしい。今シーズンも病気になるんじゃないかと思ったほど苦しい毎日だった。去年、(家が近い)茨城ゴルフクラブと所属契約していただいて練習できたのがよかった。感謝しています。きょうは、打てばフェアウエー。(ピンに)つけば入るし・・。こんな大事な最後の日に、自分のゴルフができました。来年はこうならないように開幕から頑張りたいです」
プロ20年。声を震わせて喜びを語る細川に、プロゴルファーの厳しさを垣間見ました。
さほど練習好きでもない細川が、今年は家からクルマで15分の茨城GCに通って練習に励みました。難病も今年は安定していましたが、腰とひざにも疲労による痛みを訴えました。それもこれも乗り越えてのシード復帰。
「まだまだ戦えるものを持っているのに、試合になるとそれを出せないのが悩みでした。今年最後の試合まで追い詰められて、やっと自分のゴルフができたのが本人もうれしいと思います。温泉にでもいって体を休めてもらいたいですね」(父親・和男さん)
ツアー8勝。飛ばし屋で95年に初優勝すると4勝目まですべて真夏の8月で“夏男”の異名をとりました。41歳。難病は抱えていますが、まだまだ老け込む年ではありません。今年の賞金王は43歳の藤田寛之と44歳の谷口徹の一騎打ちになっているのですから・・。
もう一人、うれし涙をこらえているのは19歳の浅地洋佑です。杉並学院高卒・石川遼の2年後輩。昨秋最終予選会11位の資格で今季を戦いましたが、この試合前は賞金ランク75位。文字通り背水の最終戦でした。最終18番(パー5)で2オン。この日5つ目のバーディーにして通算11アンダーで9位と大健闘。431万5000円をゲットして合計1525万3865円。賞金ランクは67位に急浮上して、高卒新人としては川村昌弘につづき1年目で初シードをつかみました。
「前半から伸ばさないとと思ってプレーしました。目標にしていた攻めのゴルフを最後まで貫けて、チャンスにしっかりバーディーをとれてノーボギーでいけました。100点です。うれしい」
新人の藤本佳則は1勝して賞金ランク5位に入りましたし、初シードを得た選手は9人。若い力もまた頼もしい限りですが反面、07年の日本プロ優勝で5年シードを持っていた伊澤利光。09年の日本シリーズ優勝で3年シードを持っていた丸山茂樹の両ベテラン2人がシード権を失いました。生涯獲得賞金上位25人の選手は、1度だけツアー出場の資格があります。これを行使すれば来季も出場が可能です。