4日間で3パットなし!ハワイの難グリーンを征服してトップテン入りした年男・谷原秀人。大ブレークの予感も!!

左肩の損傷から立ち直り、正確なショットを取り戻した谷原秀人(太平洋御殿場コース)=提供:JGTO
左肩の損傷から立ち直り、正確なショットを取り戻した谷原秀人(太平洋御殿場コース)=提供:JGTO

 常夏のハワイから真冬の日本へ、今年初のゴルフツアーの便りが届きました。ソニーオープン in HAWAII。日本からは谷原秀人、石川遼、池田勇太、宮里優作ら7人が今季の“腕試し”に出場しましたが、米ツアー選手の石川遼ら4人は予選落ち。日米プロの実力の差を改めて思い知らされましたが、その中で一人谷原秀人(35)が“あわや日本人4人目”のPGAツアー制覇!を思わせるほどのゴルフで、最終的には通算10アンダーで8位に入る殊勲。トップ10に入れば次戦に出場できるのが米ツアーのルール。招待試合を飛ばして、2週後のファーマーズ・インシュランスオープン(カリフォルニア州トーリーパインズ)への出場権を得て「スポット参戦のつもりで来たのに・・」と、嬉しい悩みをうちあけていました。幸先のいい2014年、午(うま)年の年男・谷原(35)、大ブレークの予感も・・。試合はジミー・ウォーカー(米国)が通算17アンダーで早くも今季2勝目を挙げました。

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昨年の国内最終戦、日本シリーズJT杯で出を待つ谷原秀人(右)。この試合は3位だった(12月、東京よみうり)
昨年の国内最終戦、日本シリーズJT杯で出を待つ谷原秀人(右)。この試合は3位だった(12月、東京よみうり)

 いったんは出場するつもりでハワイへやってきたものの、左手親指つけ根の炎症は完治しておらず、懸念された通りの欠場宣言をした松山英樹。日本のエースの暗いニュースに日本選手団の意気は上がりません。おまけにふたを開けたソニーOP初日は、石川遼がいきなり3オーバーで118位スタート、池田勇太は2オーバー104位スタート、昨季国内最終戦で11年目の初勝利を挙げた宮里優作も48位スタート・・ではなおさらでした。暗い日本勢のムードを辛うじて吹き飛ばしたのが、谷原の“根性のゴルフ”でした。インスタートの後半。4番で6メートルを決めて勢いに乗ると5番は1メートル強、6番は2メートル、7番ではエッジからの7メートルを次々と沈めて4連続バーディー。計6バーディー、2ボギーの4アンダー、66のロケットスタートをみせたのです。首位には3打差5位のお見事発進。2日目も1番でいきなり8メートルのバーディーパットを決め、7番9メートル、8番7メートルと、長いパットも術中に収めるなど6バーディー、1ボギーの65で回って1打差の2位タイにつけて日本のファンをワクワクさせてくれました。

 日本国内では2年連続で平均パット1位賞(昨季は1.7345)に輝く“パット王”の谷原です。3日目にパープレーで6位と足踏みしましたが、最終日は首位と3打差から出て、前半2つ伸ばしたところで1打差3位まで浮上。素晴らしい粘り腰をみせました。後半に入って11番(パー3)で寄せきれず、13番(パー4)は左ラフに曲げで2つのボギーを連発。これが最後までブレーキとなって優勝争いには入れませんでした。しかし、スコアへの貢献度を表すストローク・ゲインド・パッティング(米ツアーで採用されている数値)は4日間1.754で全体の1位。平均パットは4日間1.600で全体3位と“パット王”の面目だけはみせてくれました。
 谷原という男、飛ばし屋でもありますが、海風にさらされたワイアラエCCの芽の強いバミューダ芝もものともせずのナイスタッチ!で、4日間を通して3パットなしというのは、すごいことでしょう。
 
最終日終了での谷原秀人のコメント

昨冬12月、国内最終戦の日本シリーズJT杯でも好調なショットを放った谷原秀人(東京よみうり)
昨冬12月、国内最終戦の日本シリーズJT杯でも好調なショットを放った谷原秀人(東京よみうり)

「最終日はアプローチが一発もうまく打てなかった。ショットもあまりよくなくて、バーディーチャンスのパットが打てなかった。後半に入ってボギー、ボギーじゃなくてバーディー、バーディーだったら面白かったんですけどね。ちゃんとフェアウェイに打って、そこからバーディーチャンスにつけられるようにしないと厳しいですね。でも4日間で3パットは1度もしなかった。これは自信になりますね。バミューダ芝はアジアンツアーでもやっているし、ハワイも何度か出ているのでタッチを合わせられた。最終日も特に緊張もせず、予選ラウンドと同じ気持ちでできたのはよかったです。12月はほとんどゴルフをしなかった。いまスイングを直している状態の中でのソニーオープンだったことを考えれば、よく頑張ったと思いますね」

 06年、全英オープンで5位に入って日本中を沸かせたときも、ロイヤル・リバプールGCの快速グリーンを好パットの連発でスコアを伸ばしていったのが谷原の強力な武器でした。グリーンの読みのうまさ、怖がらず強気に打っていけるパッティングに関しては、米ツアーでも通用することを再認識させられました。

 昨年末から谷原はショットでもグリップの手直しをしています。従来のスクエアグリップを、より強く打てるフックグリップにして、新しいスイングづくりに取り組み中です。最終日一緒に回ったマスターズチャンピオンのザック・ジョンソン(前週開幕戦で優勝)からは大きなヒントを得たそうです。
「ザックは、いま自分が取り組んでいるのと同じフックグリップでハイドローを打つ。自分と飛距離も変わらないのに、メジャーにも勝ちPGAツアーで戦える精度の高さを持っている。それを見て、自分も方向性が見えてきたし、あれぐらいの精度を身につけたいと思いましたね」

“いい勉強になった”と、谷原は大きな収穫があったことをしみじみ語りました。
 

不明の肩痛に悩んだどん底の3年間から這い上がった谷原秀人。三井住友VISA太平洋の優勝カップを抱く(太平洋御殿場コース)=提供:JGTO
不明の肩痛に悩んだどん底の3年間から這い上がった谷原秀人。三井住友VISA太平洋の優勝カップを抱く(太平洋御殿場コース)=提供:JGTO

 東北福祉大出身。プロ入りしてから素質が開花したように活躍を始め、プロ3年目のマンダムルシードよみうりオープン最終日に64で尾崎将司を逆転してプロ初優勝。05年には米ツアーに参戦。予選落ちが多く1年で撤退しましたが、翌06年には国内2勝して賞金ランク2位。同年全英オープンでは5位の大健闘でした。07、08年にも2勝して賞金ランク連続4位。スターダムにのりかけたとき、09年末に左肩の腱を部分断裂して調子が急下降。11年には左肩痛に悩み、フルショットができない苦しみを味わいました。11年には賞金ランク65位まで下がって一時は「引退」すら覚悟した時期があったそうです。さまざまな治療を続け、元アイドルグループ「ココナッツ娘。」メンバーだった絢香(あやか)夫人にも励まされ、徐々に回復した肩痛。いま谷原の強い武器となっているパットとアプローチは、不振の時期に取り組んで練習を重ねた結果でもあります。

 昨年11月。三井住友VISAマスターズで3年ぶりの復活V。11月には石川遼とのコンビでW杯の日本代表で個人7位、団体3位と健闘したばかり。14年を迎えて幸先のいい米ツアー8位のスタートは、今季の完全復活を予感させる出来事でした。

 米ツアーのトップテン入りでつかんだ「次戦の出場権」で、招待試合をのぞいた2週後のファーマーズ・インシュランスOP出場権が転がり込んだ谷原。「スポット参戦できていたのに・・。後輩の藤本佳則の結婚式があるのに困ったな。どうしよう・・」

 嬉しい誤算に悩んでいます。このチャンスは逃がせないでしょうが、さて?