今季も日本で無事プレーできるか?!死亡事故を起こした黄アルムの処分は?

黒のスーツで謝罪会見に臨んだ黄アルム。憔悴しきった顔だった(1月23日都内で)
黒のスーツで謝罪会見に臨んだ黄アルム。憔悴しきった顔だった(1月23日都内で)

 日本のプロゴルフはいまオフの真っ最中。話題も少ない中で、先週衝撃的なニュースが飛び込んできました。韓国籍の女子プロゴルファー、黄(ファン)アルム(26)が、神奈川県二宮の県道で、自分が運転する車で男性をはね、死亡させるという大事故を起こしたのです。現行犯逮捕された黄は、その後一時釈放されましたが、まだ事故の顛末は未解決のまま。黄は23日、都内で異例の記者会見し、被害者の遺族やファン、関係者へ深く頭を下げて謝罪しました。LPGA(日本女子プロゴルフ協会)や、黄が所属するヤマハでは、ことがことだけにその処遇について頭を抱えています。黄は09年4月のヤマハレディスで日本ツアー1勝を挙げています。スイングもきれいでステディなゴルフをする選手で今後も期待されていただけに、ゴルフ界にも衝撃波が広がっています。

   ☆     ★     ☆

 突然、黄アルムのマネージメント会社の㈱クロス・ビーから「黄アルム本人からのご報告と謝罪の会見を行わせていただきたく・・」という連絡がメディアに伝えられました。事故を起こしてから4日目の1月23日のことでした。都内の会見場に現れた黄は上下黒のスーツでうつむき加減で憔悴(しょうすい)しきった姿でした。

「すみませんでした」と深々と頭を下げてお詫びする黄アルム(1月23日都内で)
「すみませんでした」と深々と頭を下げてお詫びする黄アルム(1月23日都内で)

 「今回、私が自動車事故を起こし、相手の方が亡くなるという事態になりました。被害者の方、ご遺族にお悔やみとお詫びを申し上げます。今回の事故でファンの方、協会(LPGA)、スポンサー、関係者のみなさんに多大な迷惑をおかけし、申し訳なく思っています。すみませんでした」と深く頭を下げて謝罪しました。集まった報道陣から「事故を起こしたときの状況を」と求められ「横断歩道ではありませんでした。全くの私の不注意運転でした。まだ警察の取り調べ中ですので、多くは話せません。当分はゴルファーとしてのすべての活動を自粛するつもりです」
 と小声で答えるのがやっとでした。

 関係者の話によりますと、当日はレイクウッドGC(神奈川・大磯)で開催されていた雑誌社のイベント「ALBAプロアマ」、2日間大会の初日でした。プレーを終えた黄はマイカーを自分で運転して宿舎のホテルに帰る途中でした。同乗者はいませんでした。本人は飲酒もしていないし、携帯電話等を使用しながらの運転でもなかったそうです。「全くの私の不注意。前方不注意でした」(黄)と本人も大方の責任は自分にあると話しています。会見は僅か10分足らず。右横にマネージメント会社「クロス・ビー」の八尋崇之副社長、左横に黄が所属する㈱ヤマハの田嶋良平事業部長が黄を挟むようにダークスーツで神妙な表情で列席しました。

 事故が起きたのは1月19日午後7時20分ごろ。神奈川県二宮町二宮の県道で、黄が乗用車を運転中に近所に住む無職桜田衛さん(90)をはねた疑い。黄はすぐ「ひいたのは間違いない」と供述、現行犯逮捕されました。現場は片側1車線で、信号機や横断歩道はありませんでした。「県道だが、普通に運転していれば、人が通行するのは分かる明るさ」(大磯署)ということですが、目撃者はいなかった模様で、どういう状況ではねたのかなどは調査中です。男性はその後死亡する重大事故となりました。容疑を自動車運転過失致死に切り替えられて神奈川県警では詳しい調査を続けています。逮捕された黄は2日後の21日、一時釈放され記者会見に臨んだのでした。

1メートル68の恵まれた体から放つ、黄アルムのドライバーショット
1メートル68の恵まれた体から放つ、黄アルムのドライバーショット

 黄アルムは1987年10月17日、韓国・ソウル生まれ。母親から勧められ11歳からゴルフを始めました。06年に来日。08年ステップアップツアー、ジョイント・コーポレーション杯、日医工杯に勝ち、受験資格を得た08年7月のプロテストでトップ合格。終盤13試合に出場していきなりシード入りしました。翌09年4月には早くもヤマハレディスで2位に8打差をつける圧勝で日本ツアー初優勝。当時はまだ韓国・龍仁大ゴルフ学部4年生の女子大生プロでした。
「とにかく日本が好きで日本にきました」と語り、ひらがなのテキストで日本語を独学でマスターして来日するという日本びいきでした。23日の記者会見でも、日本人にひけをとらない流ちょうな日本語で話していました。

 日本ツアーではヤマハレディスに勝ったのが縁でヤマハと所属契約を交わし、現在に至っていますが、ここ2、3年は軽いケガがあったりで、上位にはいくのですが2勝目がなかなかきません。昨年も後半戦に入ってから集中力が弱まり、夏場に3試合連続予選落ちなどの苦しみを味わいました。しかし、2322万8514円を稼ぎ、賞金ランク42位。来日2年目の08年からは連続6年間シード権をキープしています。「今年こそは」と意気込んでいたところでした。パターが上手く、アイアンのキレもいいプレーヤー。人懐っこい笑顔を振りまいてファンも少なくありません。

 ここ3年間、数多く黄のバッグを担いできた大溝雅教キャディーのコメント。

マネジメント会社、所属のヤマハの役員に挟まれて謝罪会見した黄アルム(左から2人目)=都内で
マネジメント会社、所属のヤマハの役員に挟まれて謝罪会見した黄アルム(左から2人目)=都内で

「黄はプロとしては優しすぎるくらい優しい性格。みんなに好かれるタイプ。パターは上手いし、安定した成績を残せる選手ですね。小さなケガなんかがあって勝ててないけど、土壇場では頑張れる子ですよ。パターとアイアンが上手い選手で、今年はやるかと思ってましたが、不運な事故を起こしてかわいそう。車の運転は気をつけなさいよと、よくいっていたのですが・・。なんとか穏便な収集をして、またシーズンでは頑張って欲しい」

 黄は被害者宅にも謝罪に訪れ、女子プロ協会にも報告と謝罪に赴いています。目下、ゴルフツアーはシーズンオフでトーナメントはありませんが、女子の開幕は3月7日からのダイキンオーキッドレディス(沖縄・琉球)です。女子プロ協会も所属のヤマハも「警察が出す結果をふまえて、慎重に対処したい」としています。

 プロゴルファーにとってゴルフ場に通う車の運転は、欠かせない移動手段です。どの選手も運転にはじゅうじゅう気をつけてはいるでしょうが、こういう人身事故を起こしてしまうと大きなダメージを受けます。黄アルムのアクシデントを機に、改めて各自が心しなくてはなりません。黄にどの程度の過失があったと警察は判断するでしょうか。そしてLPGAや所属のヤマハからの処分は?注目されます。