女子ゴルフツアー、今年の韓国勢はおとなしいのかな、と思っていたら、いやいやどうして、10、11年の日本の賞金女王、アン・ソンジュ(26)が、第5戦のヤマハレディス(静岡・葛城GC山名コース)で吉田弓美子(26)との一騎打ちに競り勝ち、今季″韓国勢〝1勝を挙げました。巨匠・井上誠一氏設計の難コース、しかも最終日は強風が吹き荒れた中、1バーディー、1ボギーのパープレーにまとめ、通算5アンダーの鮮やかな勝利。最終ホールまで同スコアで粘った吉田をして「アンちゃんはうまいです。あっぱれ。ショットもアプローチもパットも勉強になりました」と、シャッポを脱がしめたアン・ソンジュの完全ゴルフ。6位にはリ・エスド、8位にイ・ボミ、10位にキム・ヒョージュとトップ10のうち4人が韓国勢。昨季は36試合中11勝が韓国選手。やはり今年も変わりそうもない″日・韓対決〝の図式です。
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10、11年、盤石の強さで2年連続賞金女王になったアン・ソンジュ。2年連続でマネークイーンになったのは、樋口久子、福嶋晃子、不動裕理、アン・ソンジュら6人しかいないスーパースターばかり。その″勲章〝を持つアンの強い強い葛城征服でした。少々″でぶっちょ〝のアンですが、持ち前の柔軟な筋肉を巧みに使って好打を飛ばします。
ドライバーの飛距離は平均270ヤード以上。そのパワフルなゴルフに加え、吉田のいう通りショットもパットも人並み以上の精度を持っています。昨年は平均ストロークで10、11年に続き3度目の第1位。12年はパーオン率第1位。10年は平均パット数第1位・・と毎年何かしらの部門トップを取っています。09年のQT2位通過で日本ツアーの権利をとり、10年の開幕戦(ダイキンオーキッド)ではLPGA史上初のデビュー戦優勝を果たし、日本のファンに強烈な印象を与えました。幼いころはテニスに興じていたそうですが、小学6年から父親の勧めでクラブを持ちました。朴セリの98年全米女子オープン制覇とともに韓国内で巻き起こったゴルフブームに乗った世代です。ジュニアスクールで基礎を身につけたアンは、ジュニア時代からぐんぐんと頭角を現し、韓国ナショナルチームでは同世代の申ジエらと凌ぎを削りました。05年にプロ転向。韓国ツアーで活躍したあと、09年の日本QTを受験。2位通過で10年(22歳)から日本ツアー参戦を果たしました。
ゴルフの腕を磨くだけでなく、アンは「礼儀正しい日本でプレーし、自分も礼儀を身につけたいと思った」と話し、来日した10年は年間4勝して韓国人選手として初の日本賞金女王になりました。11年春の東日本大震災の影響でツアー4試合が中止になり、4月の女子プロ選手による街頭募金活動では、ソウルから日帰りで参加。個人的にも1000万円を寄付しました。「日本に来て学んだことは多い。日本での生活も大好きなのでずっと日本ツアーで戦いたい。海外メジャーに挑戦するときは、日本ツアー代表としていきたい」と、日本へきて成長したことに感謝し、日本びいきの韓国選手アンなのです。12年は手首・足首などに故障が相次いで生じて苦戦。13年も体調を崩すなどして辛いシーズンが続きましたが、賞金ランクはともに4位をキープ。米ツアーQスクール受験の計画もありましたが、結局はそれも撤回。「日本ツアーで尊敬される選手になりたい」と、日本でのツアー活動を宣言しています。
今年はアンの身辺にも変化がありました。長年使ってきたブリヂストンの用具は「ヨネックス」に。フリーだった所属には「モスフードサービス」がついて心機一転のシーズンです。最終日、2位から出たアンは、7番(パー3)でグリーン右の下り傾斜からのアプローチをウェッジで直接入れるバーディー。16番でボギーとしましたが、並んで迎えた最終18番。吉田が2㍍のパーパットを外したあと、1㍍のパーパットを沈めて吉田を振り切りました。
「今年はクラブなどの用具も変わったし、メーンスポンサーも決まった。自分も変わらなきゃいけない」(アン)その思い通りに開幕5戦目での1勝は、強いアンをさらに後押ししそうです。あとに続くイ・ボミ、全美貞、申ジエ、宋ボべらの韓国勢。日本勢も森田理香子を筆頭に比嘉真美子、堀奈津佳、渡辺彩香、一ノ瀬優希、笠りつ子、原江里菜、藤本麻子、服部真夕、木戸愛、酒井美紀ら、台頭してきた若手陣は多士済々。横峯さくら、吉田弓美子、佐伯三貴、大山志保らの中堅どころを加えた激しい″日・韓対決〝が、シーズンのみどころとなりそうです。