3度目のマスターズの舞台に立ちたい!44歳、不屈の復活優勝を遂げた藤田寛之

プレーオフで約1年5ヵ月ぶりの優勝をつかんだ藤田寛之。44歳のたくましい復活だった(兵庫・山の原GC山の原コース=提供:JGTO)。
プレーオフで約1年5ヵ月ぶりの優勝をつかんだ藤田寛之。44歳のたくましい復活だった(兵庫・山の原GC山の原コース=提供:JGTO)。

この6月16日には45歳になる藤田寛之が、朴相賢(パク・サンヒョン=韓、31)とのプレーオフを制して今季初優勝。一昨年12月の日本シリーズ以来約1年5ヵ月ぶりとなる通算16勝目を挙げました(4月24日~27日、つるやオープン)。16勝のうち10勝を40代になってから挙げたまさに″中年の星〝の復活優勝。40歳以降のツアー勝ち星は、ジャンボ尾崎(63勝)、杉原輝雄(21勝)、青木功(18勝)、尾崎直道(10勝)がベスト4。このレジェンドの仲間入りを果たした藤田の頑張りは、世の中年族にパワーを注入する快挙でした。今季開幕3戦目での早々の1勝は、藤田に3度目のマスターズ出場の夢を膨らませました。

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朴相賢とのプレーオフは、1ホール目で、ボギーにした朴が脱落。パーで収めた藤田寛之(左から2人目) が勝利をつかんだ。藤田のキャディー(右端)に握手を求める朴相賢(右から2人目)=(つるやOP・提供:JGTO)
朴相賢とのプレーオフは、1ホール目で、ボギーにした朴が脱落。パーで収めた藤田寛之(左から2人目) が勝利をつかんだ。藤田のキャディー(右端)に握手を求める朴相賢(右から2人目)=(つるやOP・提供:JGTO)

最終組から5組前で回っていた朴相賢が、17番でイーグルを奪い13アンダーの単独トップでホールアウト。藤田は15番の途中で朴に2打遅れているのを知りました。このホールを含めてあと4ホールしかありません。守りのゴルフを身上とする藤田も、もう攻めるしかありません。15番の第3打は「ピンまで66ヤード。ピン上まで持っていきたいと思った」(藤田)。SWでのショットは、ハッとするようなグリーン奥のカラーへ。ところがスピンのかかったボールは、スルスルとピン方向へ逆戻り、ピン横1メートル強まで転がりました。藤田の見事な読み。これを沈めて1打差。さらに続く16番(190ヤード、パー3)は、あわやホール・イン・ワンかという50㌢に止まるスーパーショットです。「7番か6番かで迷ったんだけど、打つ直前でフォローの風が吹いてきて7番Iで自分でもびっくりするくらい会心のショットができた」(藤田)。2打負けていると分かった大詰15、16番連続バーディーは凄みがありました。あっという間に13アンダーとして朴に並びました。

残りは2ホール。17番は、パー5のチャンスホールでしたが、ドライバーが右の

 

セミラフにかかったため、「ボギーにしては絶対ダメ」(藤田)とムリをせず、池の手前にレイアップして3打目勝負。このあたりの攻めと守りのメリハリの確かさは、さすがベテランのゴルフでした。結局バーディーは取れませんでしたが、確実にパーで収めて18番もパー。13アンダーで朴とのプレーオフ勝負に持ち込みました。18番(パー4)を使ったPOでは、1ホール目にパーで収めた藤田に対し、朴は右クロスバンカーに入れ、2打目もグリーンに届かず深いラフ。ピン上5㍍に3オンしたパーパットを外して勝負がつきました。

 勝ってもおごらず、淡々と常に平常心で語る藤田寛之のコメント

米国から一時帰国、今季国内初登場の石川遼。通算4アンダーで26位に終わる。 次週の中日クラウンズは、10年に最終日「58」を出して優勝した思い出の試合。 「体調もよくなってきたし、次につながるプレーもできた」と、久々のブレークも?!(山の原GC山の原C=提供:JGTO)
米国から一時帰国、今季国内初登場の石川遼。通算4アンダーで26位に終わる。 次週の中日クラウンズは、10年に最終日「58」を出して優勝した思い出の試合。 「体調もよくなってきたし、次につながるプレーもできた」と、久々のブレークも?!(山の原GC山の原C=提供:JGTO)

「攻めにいって勝つのもカッコいいけどリスクも大きい。″守りの藤田〝じゃないけど、そういうゴルフが最後までしっかりできた。プレーオフは5分5分、白か黒かの一発勝負ですし、自分はきょう一日自分のできることをやろうと誓っていたので、それを続けることしか考えてなかった。朴がバンカーに入れ、セカンドも少しダフッてグリーン手前のラフだったので、自分は安全にパーを取りにいった。去年はオフのケガ(右肋骨の疲労骨折)が長引いた。オーガスタ以降うまくいかず、去年は準備がうまくできなかった。今年はシーズンへの準備もうまくできたし、オフの練習もしっかりできた。きょうの反省点は、勝てはしたが、途中自分でダボを打ってプレーオフになってしまった。自分のイメージとしては後半も伸ばしてトータルで15~16アンダーで勝つというところを狙っていた。40代半ばになってプレーし、自分が勝っている姿もそうだけど、苦しんで苦しんでその中で勝っていく姿も見てもらって、頑張ってくれる人がいたらうれしい。マスターズを見ていると、あの舞台には3度目も立ちたいと思いますね」

藤田はこの試合、初めてベテランの清水重憲キャディー(39)とコンビを組みました。長年、谷口徹の専属キャディーとして務め、07年には上田桃子のバッグも担ぎ、年間二人の賞金王を演出した名キャディー。17番では、セカンドで刻むか2オンを狙うかで迷っていた藤田に、ムリして2オンを狙わさず、レイアップで着実なゴルフをアドバイス。藤田もその言に従って勝利に導きました。清水キャディーは「藤田さんはどんなときでも平然としていて落ち着きが変わらなかった。11番でダブルボギーを打ったあともイライラせずに同じペースだった」と、感嘆しきりでした。この勝利で21勝目という清水キャディーは、藤田の専属キャディーではなく、この後はいまのところ関西オープンと日本オープンでコンビを組む予定。今回の勝利で二人のコンビはもっと増えるかもしれません。

藤田は一昨年、4勝を挙げて43歳の史上最年長の賞金王に輝きました。″アラフォーの星〝と称えられ、さらに高いところを目指して13年に突入したのですが、マスターズ出場を控えながらオフ2月、練習で右肋骨の疲労骨折という思ってもみなかった試練に直面しました。練習もままならず、マスターズは20オーバー、最下位で予選落ち。国内ツアーでも6年ぶりに未勝利に終わりました。

苦しみ抜いたその悔しさを晴らそうと、このオフは例年にも増して″練習の虫〝に立ちかえりました。左腰を素早く切って体を回し、ヘッドをボールにぶつけていく藤田打法。持ち球のフェードボールがよみがえってきました。

「こんなに早く結果が出るとは夢にも思っていなかった」ー1年5ヵ月になんなんとした藤田の未勝利の日々は、どんない苦しかったことでしょう。しかし開幕3試合めでの勝利は、この先、複数優勝への期待が大きくなりました。2度目の賞金王も・・・「いや賞金王もいいけど、そこへいくまでの次のステップがあります、シーズン3勝、4勝しないとそこは見えてこないでしょうから。それよりも、まずは2勝目です」(藤田)

藤田のつるやオープンへの縁は深く、10、12、14年と2年ごとに3勝目をマークしましたが、次週は昨年予選落ちした中日クラウンズです。昨年の屈辱も晴らす週でもあります。44歳・藤田寛之。3度目のマターズ出場への夢もこつ然と浮上してきた今季の戦いぶりが、また見ものですー。