国内女子のゴルフツアーが「ダイキンオーキッドレディス」(沖縄・琉球)で開幕しました。11月末のLPGAツアー選手権リコー杯(宮崎)まで38戦がほぼ休みなく行われます。昨季、日本人としては4年ぶりに賞金女王となった鈴木愛(23)が連覇を目指します。達成すれば、日本勢としては2000~05年に6連覇した不動裕理以来の快挙です。台頭著しい若手軍団への期待も大きいですが、相変わらず韓国勢の優勢は変わりません。開幕戦のダイキンオーキッドも、日本参戦2年目のイ・ミニョン(25=韓国)が、最終日、6バーディー、ボギーなしの完璧ゴルフで3打差5位から鮮やかな逆転劇。今季初の女王となり日本ツアー早くも3勝目。今年も韓国パワー、恐るべし!を印象づけました。
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赤・白や紫の美しい蘭の花で埋もれた琉球GC。ここ5年間、その中でシーズン初女王を戴冠するのは,すべて外国勢でした。14年のO・サタヤ(タイ)、15、16年はテレサ・ルー(台)が連覇。17年アン・ソンジュ(韓)、そして今年のイ・ミニョン(韓)です。2日目トップに立った賞金女王・鈴木愛は、3日目の雨天中止で気勢をそがれ、最終日はオーバーパーの73。3位タイにくらいつのがやっとでした。この試合、16年度から4日間競技にグレードアップして3年目。賞金額もアップされて優勝賞金は2160万円でした。ところが3日目の競技中止で54ホール競技となり、賞金ランキングへの加算額は規定により75%に減額されたのです。「競技中止は賞金額が減額されるのが残念」(鈴木愛)と、雨空を見上げて悔しがった鈴木は、優勝へのモチベーションも一緒に薄れさせたのでしょうか。最終日はスタート直後の2番(パー4)でいきなりダブルボギーの洗礼。パー5の4番もボギーにするなど、あっという間にスコアを落としていきました。そのあと、なんとか2バーディーをとり返しましたが、アンダーパーが出せないまま、首位に4打差の通算7アンダー。6人タイの3位(減額賞金=427.5万円)にとどまり、惜しい″優勝発進〝を逃がしました。ちなみに、減額された優勝賞金は1620万円。支払額は主催者の厚意で100%支払われましたが、昨年は1億4012万円を稼いだ賞金女王の心を乱した気まぐれな春の荒天でした。
その一方で賞金額などには目をくれず、最終日のゴルフに集中したイ・ミニョンはすばらしいゴルフをしました。3打差の5位にいたのですが、6バーディー、ボギーなしのベストスコア「66」。トップを走っていたユン・チェヨン(韓国)を15番のバーディーでとらえ、最終18番(パー5)は2オンさせて楽勝のバーディーフィニッシュ。通算11アンダーまで伸ばして2位に2打差をつける快勝でした。 昨季、日本ツアーに参入して5試合目のヤマハレディス、渡辺彩香に競り勝って通算9アンダー初勝利。7月のニッポンハムレディスで2勝目を上げるなど、来日1年目で賞金ランク2位に食い込む実力を見せつけたニューフェースです。
「開幕戦で勝ててホントにうれしい。あまり調子はよくなかったけど、スタートでバーディー、とれた(残り120ヤードから1㍍につけて沈める)ので調子よくやれました。でも勘違いしないでください。優勝できるなんて全く思っていなかった。ただ、1、2ラウンドとやり続ける中でよくなってきた感じがします。それとパット。このオフ、アメリカ・パームスプリングスで合宿したとき、S・K・ホさんと一緒だったので、いろいろ教えて頂いた。パッティングはスタンスはそのままスクエアで、左の肩をオープンにしなさいと教えられて、転がりがよくなりました。あとは100ヤード以内のショットを重点的にやりました。今年はメジャーで勝ちたいです」(イ・ミニョン)
約3年前の15年3月、若くして腎臓がんの手術を受け、それを乗り越えたプレーヤーとして韓国では有名。母国では「不屈のプレーヤー」と呼ばれています。日本ツアーに参戦したのは旅行好きなこともあり「好奇心と、韓国から近いから」という。ツアー先ではご当地のグルメを楽しんだり、観光も大好き。今春もパームスプリングスで5週間自主トレを張り、うち1週間はカナダへの観光旅行を楽しんだそうです。
早くもツアー3勝目。今年は賞金女王候補の有力な一人です。安定したショットにパット。メンタル的にも強い25歳ですが「(賞金女王は)自分から獲りにいって取れるものではないと思う。自分はコツコツやっていきたい」と冷静。常勝だったイ・ボミらに僅かなカゲリが見える今季。″強い韓国勢〝の勢いを加速させる新エースになりそうな逸材です。
(了)