ゴルフ界の″若大将〝池田勇太(33)がツアーきってのモンスターコース、全長8000ヤード超の茨城ザ・ロイヤルGCを征服、プロ通算21勝目を挙げました。「ミズノオープン」3日目、66を出してトップに立ち、最終日は飛ばし屋チャン・キム(米)との激しいトップ争いにも負けず1打差の通算7アンダーで今季初優勝。ツアー2年目の09年に初優勝して以来11年間、毎年優勝記録を「11」に伸ばしました。今季は出場5試合で賞金ランクも5位に浮上。この優勝でメジャーの全英オープン(7月)出場権も獲得。今季序盤戦は予選落ちが多かった勇太が、どっこい健在ぶりを証明してみせました。
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若大将・勇太らしい今季の初勝利でした。昨年から開催会場になっているミズノオープンの舞台、ザ・ロイヤルGCは未来を見据えた「世界基準」のコースとして注目を集めているゴルフ場です。攻略性に富んだ難易度の高さはもちろんですが、全長8000ヤード超のモンスターコース。最長ホール、パー5の16番はフルバックで705ヤード。気の遠くなりそうな″長さ〝を持っています。プロが戦っても、そう安易にはパーオンしないホールがいくつもあります。コースの所属プロでコースの監修やトーナメント運営に携わっている鈴木規夫プロは「ここは日本のアスリートが世界に羽ばたくための学び舎」と語っています。距離だけでなく、フェアウェイには変化に富んだ大きなうねりがりひそんでいます。大きなグリーンには、マスターズのオーガスタを思わせるような複雑なアンジュレ―ションが。トッププロ144人が争そったミズノOPでも、4日間でアンダーパーは11人。優勝は7アンダーで2ケタにはいきませんでした。いかに手ごわいコースなのかが分かります。
各ホールには5~6個のティーイングエリア(ティーグラウンド)があり、使途に応じて使い分けられますが、今回のミズノオープンでは初日と2日目が同じ7643ヤード、3日目が8016ヤード(フルバック)、最終日は7604ヤードと、ティーイングエリアを使い分けていました。8000ヤード超の距離に設定したのは、予選カットのあとムービングデーといわれる3Rだけ。池田はその最長の3日目に1イーグル、8バーディーを奪ってベストスコアの「66」で単独トップに躍り出ています。
「8000ヤード超になると自分のゴルフを生かせるコースになる。やる気が出てくる。コースに立ち向かっていこうという気合が出てきた」と勇太。難易度が高まった中、3番からは4連続バーディー。モンスターの705ヤード(パー5)ではバーディーを奪って言葉通りのビッグスコアを出したのですからプロは凄いものです。最もこの3日目、80以上を叩いたプロも6人いましたが・・。
池田はこの試合、昔懐かしいL字型のパターを使ってバーディーを量産しました。今季は春からパットに悩んできた勇太なのですが、開幕戦のときに大学の先輩、正岡竜二プロから「昔、勇太が使っていたL字がいいんじゃないの?」と助言され、25年前に購入した尾崎将司の90勝記念モデル(ブリヂストン製)のL字を引っ張り出し、長さや重さをいま風にリメイクして使っているのです。ここ4週間これを使用、「打とうとしているところにボールが出せる」―このパットの復調が勝利へつながったといえそうです。
☆8000ヤード超のコースを征服した印象は?
「難しコースセッティグを粘って粘って優勝まで持っていけたのはうれしい。コースの8000ヤード超えは3日目だけだったけど、僕は7600より8000ヤードの方がやりやすかった。最終日みたいに(ティーを)前に出してやると、僕らはドライバーを使わないでFWで打ったり、SWで刻んだりする。ギャラリーの方には、ドライバーの豪快なショットをみせられない。3日目の8000ヤードのときは対コースだった。ドライバーもいつも以上に飛ばすためにどうすればいいか。どういう攻め方をしていけばいいか、それをきっちり決めていける。最終日の7600ヤードでは対相手選手2人になる。2人は僕より距離が出る。だから僕はセカンドショットの精度でカバーするしかない。アイアンショットの正確性で埋めないといけない。FWのコンパクションが出ていたのと、コースセッティングがよかったので、セカンド以降も割と短いクラブを持てた。だから8000ヤードのコースを回った気がしなかった」
勇太節を聞いていると、8000ヤード超のモンスターコースも300ヤードを飛ばす彼らには苦にならなかったばかりか、結構楽しんだようです。しかし、頭は使った4日間だったのでしょう。
そして池田はツアー2年目から11年間、連続で勝ち星を続けて通算勝利は「21」。25勝の永久シードへ″あと4〝と迫ってきました。「目標はジャンボさんの持っている記録(113勝)。それを目指していかないといけない」と高い目標を掲げる勇太ですが、とりあえずは日本7人目の永久シードにターゲットがあることは間違いありません。今季は世界ランクも100位以下に落ちて海外メジャー等への出場権も減っているのが現状です。2016年の賞金王は、その前年の15年から昨年まで4年連続で全英オープンにも出場してきました。途絶えそうになっていた全英切符も、この優勝で今年も出場権(5年連続)を確保しました。
☆海外メジャーへの思いは?
「メジャーは年4つしかない。限られた選手しか出られない。ステータスのある試合。海外メジャーへの気持ちは昔から変わらない。今年は(全英オープンも)出られないかもしれないという寂しさがあった。それを得られたのはハッピーだ。また挑戦できる機会が増えたことが嬉しい。しっかり準備して貪欲にやってくる」
この11年間、4勝した年が2回。3勝が2回。あと1勝が7回=計21勝。秋に強いと言われた池田に、今年は珍しく6月初旬に早い1勝がきました。海外参戦が多かった昨年に比べて今季は国内優先のスケジュールです。複数優勝の可能性が高まった今季の勇太に、大暴れの期待が膨らんでいます。
(了)