1㌢に泣いた浅井咲希(さき)21歳。黄金世代がまた生んだ″肝っ玉新鋭〝の楽しめる未来!

コンパクトでシャープなスイングをみせる浅井咲希(さき)。

98年生まれ″黄金世代〝の浅井咲希(さき=21)が、1打及ばず韓国の実力者イ・ミニョン(27)に惜敗。黄金世代10人目のツアー制覇を逃がしました。それも最終18番でプレーオフがかかった2㍍のバーディーパットを1㌢弱ショート。カップを覗いてボールが止まるという無情。「あ~あ、すべてが台無しや。何してんのやろ。アホなんかな?」と、兵庫・尼崎出身の21歳の嘆きの声が響きました。ツアーも後半戦に入ったゴルフ5レディス(茨城・ゴルフ5カントリー・サニーフィールド)。2週前のCATレディスでプロ初優勝。その勢いをかって突っ走った咲希(さき)。負けはしましたが、ゴルフの腕はキラリと光るものがありました。全英女王の渋野日向子が欠場した大会を盛り上げ、強烈にみせつけた存在感。もう一人の黄金世代がクローズアップされました。

☆★    ☆★    ☆★

無念の1打差で黄金世代4人目の2勝を逃がした浅井咲希。次戦が楽しみ。

2週前、箱根の山に展開する難コース大箱根CCを3日間アンダーパーで回って首位を守りきった(ー10)ツアー初優勝は、関係者を驚かせました。初日からのトップを最後まで守り抜くのは、実力がなくてはできないワザ。それをやってのけた新鋭が浅井咲希でした。しかも最終日、最終18番でのこと。勝てば勝利の決まる50㌢のパーパットを浅井は外しました。強く打ち過ぎたボールはカップに蹴られて2㍍もオーバー。返すボギーパットを外せば、穴井詩とのプレーオフでした。大きなプレッシャーのかかる最後のパット。すべての思いを込めて浅井はこれをねじ込んだのです。

資生堂レディスで渋野日向子にPOで敗れ、サマンサタバサでは小祝さくらに1打差惜敗したイ・ミニョン(韓)。ようやく″黄金世代〝を破って今季2勝目。

涙が溢れました。黄金世代9人目の感動的なツアー初優勝のシーン。浅井はきっとそれを思い出していたでしょう。今回は、入れればイ・ミニョンとのプレーオフになる2㍍のバーディーパット。「最後は手が動かなかった。狙いたいけど下っているように見えて打ち過ぎるのも怖かった。ボールを押すように打ちたかったのに、押せなかった」(浅井)。力なく転がったボールは、カップを覗くようにして左手前淵で止まりました。少し風でも吹けばコトリとカップインする際どさでした。あの大箱根で入れた2㍍の背水のウイニングパットの再現は成りませんでした。

「全てが台無しや。私は何をしてるんやろ。アホなんかな」ー球史に残るような一言は、ここで生まれました。1打差の3位から出た浅井の最終日は5バーディー、1ボギーの68。初日には9アンダーの63。単独トップスタートでした。2日目は70で3位に後退しましたが、最終日の粘り強いゴルフは21歳の新鋭とは思えないほどでした。ピンチもありましたが負けませんでした。

美しいスイングで常にトップグループで戦うイ・ミニョン。

「でも、最終日は私らしい、ピンを攻めていくゴルフができていなかった。同組のお2人(イ・ミニョンと申ジエ)がパットを決めらえなかっただけです」(浅井)。最終18番(パー5)にも彼女らしい思いをぶつけます。「ピン2㍍につけた第3打がダメです。(82ヤード)レイアップした3打目なんだから、OKにつけてバーディーをとらないといけない」距離は2㍍でも難しいピンの奥につけたアプローチについて、厳しい目を自分に向けた浅井。こんなところに21歳ながら粘り強いゴルフを身につけた黄金世代の強さを見る思いです。

一緒に回った″世界の〝申ジエに意見を求める貪欲さも持ち合わせた浅井です。パッティングで右手の力を″殺す〝ために右手はシャフトを握らず、手のひらを開いたままシャフトに添える「クロ―グリップ」を採用する浅井について、申ジエからは「(最後は)しっかりラインに乗っていたけど、あのグリップは手に力を入れないため、最後のところでボールが転がらないことがあると教えていただいた」(浅井)という。今季2勝目を挙げたイ・ミニョンからは「(浅井は)距離は出るしパットもうまい」と高い評価をもらった浅井です。

″世界の〝申ジエ(韓)。今季も賞金レース、トップを走っている。最終日、浅井咲希と同組で2位タイ。

イ・ミニョン、申ジエと二人の韓国トッププロと最終日を同組で回り、最後まで優勝争いを演じた浅井咲希の実力は実証されました。151㌢、54㌔の体躯。大柄ではありませんが、コンパクトに振り抜くシャープなスイングは安定感があります。ツアー1勝目から2週間後にはもう次の優勝争いに加わったメンタル面の強さも見ごたえがあります。兵庫・尼崎出身で滝川2高卒。17年7月のプロテストに合格。ツアー1年目の18年は5試合に出て予選通過は2回。賞金は176万8000円(ランク120位)。今季はQT(予選会)2位の資格でツア本格参戦。すでに1勝して賞金も3000万円超とブレークしました。シード権も確保して明るい未来が約束されています。
渋野日向子だけではない。二人目の強烈な黄金世代成長株の登場。次週はメジャー大会の日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯(兵庫・チェリーヒルズ)。地元で暴れる咲希のゴルフが楽しみです。

(了)