″しぶこ効果”の女子ツアー。東京五輪の来季も37試合を実施。賞金総額アップは5試合!その裏側には″問題”も!

花の黄金世代・6人で今季10勝(左から勝みなみ、小祝さくら、浅井咲希、原英莉花、渋野日向子、河本結)=東京・六本木

日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)は来季のツアー日程を発表しました。東京五輪開催と重なる7月末から8月上旬の2週間はツアーを行わず、レギュラーツアーは今季の39試合から2試合減の37試合。賞金総額は1727万円減の39億3500万円となりました。しかし、注目は賞金総額をアップする大会が5つもあり、渋野効果は来季も衰えを知りません。撤退する2試合は、契約満了となるセンチュリー21レディスと北海道meijiカップ。五輪と重なるため中止するmeijiカップは、21年には復活する見通しです。賞金を増額する5試合の中でもアース・モンダミンカップとNOBUTAグループ・マスターズの2試合はそれぞれ4000万円の大幅アップで史上最高の2億4000万円になるなど、″しぶこ人気〝、女子プロブームは引きも切りません。その一方で渋野が「21年からの米ツアー挑戦」を表明するなど、他にも有力選手の海外流出が予測されます。繁栄の陰に潜む問題点も見え隠れする女子プロゴルフ界ともいえそうです。

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メルセデス最優秀選手賞はじめ最多の4冠をとった渋野日向子。

19年度の女子ツアー入場者は約68万人。92年のバブル期に記録した71万人に迫る勢いでした。前年比約12万5000人。年間60万人を超えたのは10年ぶりのことです。小林浩美会長も「黄金世代の台頭や渋野さんの活躍などで女子ゴルフの価値が高まった」と語気を高めています。試合数の違い(女子39、男子23=国内)こそあれ、男子ツアーは今季、女子ツアーの半数にも満たない32万7801人。ゴルフ界の人気は女子に席巻されていたのは歴然としています。

最優秀選手賞の最新鋭メルセデス・ベンツのそばに立つ渋野日向子。

毎年、新鮮な若手群が台頭してくる女子ツアーの魅力は強烈です。渋野を先頭に勝みなみ、原英莉花、河本結、小祝さくら、稲見萌寧(もね)、新垣比菜、古江彩佳、松田鈴英(レイ)・・。これら黄金世代に続く安田祐香(大手前大1年)、西郷真央(千葉・麗澤高3年)らのプラチナ世代がすでにスタンバイしている女子プロ界。宮里藍の出現で一躍人気を集めた05年当時、31.6歳だったシード選手(賞金ランク50位まで)の平均年齢も、来季はグンと若年層に占められそうな勢いです。

東京五輪開催に世間の目が注がれる2020年も女子ゴルフは健在です。ゴルフシーズン真っただ中の五輪開催。女子のゴルフ競技は8月5~8日(男子は7月30~8月2日)。その期間の2試合だけは女子ツアーも開催を自粛します。その分前年比2試合減とはなりましたが、ほかに5試合が賞金総額をアップするのですから大きな″痛手〝ではありません。アース・モンダミンとNOBUTAグループ・マスターズが総額2億4000万円のビッグゲームになり、優勝賞金はともに4000万円を超える男子ツアーも真っ青の高額大会が誕生します。選手にとっては一段とモチベーションが高まるツアーとなることは間違いありません。

 

シーズン表彰式で晴れ着姿でズラリ並んだ女子プロたち(年間表彰式で=東京・六本木)

とはいえ、女子プロ界が手放しで″わが世の春〝を謳歌してはいられない問題も裏には潜んでいます。AIG全英女子オープンを制し、国内ツアーでも4勝。″しぶこフィーバー〝を巻き起こした渋野は、シーズン閉幕後都内のトークショーに招かれ、来年の目標を一文字で求められると「進化の『進』です。21年には米ツアーを目指したいので、その準備のためにも進化しないと」と、改めて2年後の米ツアー挑戦を表明しました。すでに今季1勝している黄金世代の1人、河本結は米最終予選会を通過して来季からの米ツアー出場権を得ています。賞金女王の鈴木愛、今季1勝した大型プレーヤーの原英莉花や稲見萌寧。さらに小祝さくらら多くの若手が″第2の畑岡奈紗〝を目指して海外を視野に入れた戦いをしています。近い将来、有力選手の大量海外流出などの時代が来ないとも限りません。

 

2020年の女子プロゴルフツアー日程を発表する小林浩美JLPGA会長(東京・溜池)

さらに、今シーズン開幕前の日程作成時に、女子プロ協会と放映権問題で対立。一時は試合撤退を打ち出したスポンサーの主催者側。ファンの声などを考慮して開幕直前に現状に戻したいきさつがありますが、いまだにこの問題は平行線をたどったままです。現在は主催者側にある放映権ですが、協会は21年以降のツアーでは再び放映権の協会帰属を主張する構えをみせています。主催者側も一歩も引かない強い態度ですので、女子プロ界はこの「大きな問題」をどう解決するか。間違えれば大量の試合減にもなりかねない危機さえはらんでいる案件です。ブームの裏側にひそむこれら問題点の解消は不可欠といえそうです。

いつも大勢のギャラリーが集まる女子プロツアー(19年7月資生堂アネッサ=神奈川・戸塚)

◆2020年日本女子ツアー主な日程◆

3月5~8 ダイキン・オーキッド(沖縄・琉球)=開幕
5月7~10 ワールド・サロンパス(茨城・茨城GC東)
6月25~28 アース・モンダミン (千葉・カメリアヒルズ)
8月5~8 東京五輪女子競技(埼玉・霞ヶ関)
9月10~13 日本女子プロ・コニカミノルタ杯(岡山・JFE瀬戸内)
10月1~4 日本女子オープン(福岡・ザ・クラシック)
10月22~25 延田グループ・マスターズGC (兵庫・マスターズ)
11月5~8 TOTOジャパン・クラシック(茨城・太平洋クラブ・美野里)
11月26~29 LPGAツアー選手権リコー杯(宮崎・宮崎)=閉幕

(了)