まる3年、すっかりカゲを潜めていた諸見里しのぶ(26)が久しぶりに表舞台に帰ってきました。フォン・シャンシャン(中国)、アン・ソンジュ(韓国)の強敵2人を相手にプレーオフを戦い、惜しくも優勝は逃がしましたが、3年ぶりの復活Vへ確かな手ごたえをつかんだようです。meiji cup(北海道、札幌国際・島松コース)、3日間ともアンダーパーで回って通算7アンダー。
あと1打が足りずにPOとなりましたが、定評のある“きれいなスイング”は健在で、諸見里ファンを喜ばせました。今年も20試合中休んだのは1試合(ヨネックス)だけの“皆勤賞”ですが、トップテンは2試合だけ。賞金ランキングも35位と低迷が続いていましたが、今回の2位でランク21位に上昇。これからの後半戦、久々戦える姿をみせてくれそうです。
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シャンシャンとソンジュとの3人プレーオフは、久々の優勝争いの諸見里には“相手が強すぎた?”感もあります。18番(パー5)を使ったプレーオフ。2打目を右ラフに入れたしのぶはピンへ残り109ヤード。ウェッジでのここ一番のアプローチも、奥のピンへは7メートルも“ショート”。手痛いアプローチミス。バーディーパットを決められなかったしのぶに対して、ソンジュは6メートルのバーディーパットを気合で沈め、シャンシャンは3打目を1メートル強につけてイージーバーディーでした。1ホール目で諸見里が早々と脱落したあと、計4ホールを戦った2人は、最後シャンシャンが237ヤードを3Wで2オン。13メートルのイーグルパットを決めてソンジュを振り切りました。シャンシャンは日本国内で今季2勝目。6月の全米女子プロ選手権でも中国人初のメジャー制覇を果たしたばかり。日米を股にかけて戦う手ごわいハスラーです。
諸見里しのぶ
「もういっぱいいっぱいでした。このドキドキ感は久々で、楽しいプレーができた思いです。久しぶりのプレーオフを戦って負けてしまいましたが、2年間こういうゴルフをしてなかったので、すごく自信になりました。これに安心せずに、来週からも頑張っていけるでしょう。北海道は好きなんですが、今回もラフに入ってもフライヤーしなかったりで、北海道のラフは合ってるみたい。バーディーチャンスもいくつかつくれていたので、こんごもスコアメイクできると思います。大勢の方に期待していただいて応援もしてもらったのもうれしかったです」
明治製菓の「サバス」とサポート契約を結んでいるホステスプロでもあったしのぶは「プレーオフまで戦って、少しはトーナメントの盛り上げに貢献できてよかったと思います」と、スポンサーへの気遣いも忘れていませんでした。
諸見里しのぶといえば、飛ぶ鳥も落とす勢いで女子プロ界に君臨しました。05年にプロ入りするや、その年の日本女子オープンで5位に入り、史上最短3試合でシード権をゲット。すぐその秋には米ツアーのQスクール(予選会)を受けて9位で通過。史上初めて新人として日米両ツアーの出場権をつかみ、話題を独り占めしました。06年は日米半々のスケジュールを組み、太平洋を往復しましたが、米ツアーは甘くありませんでした。予選も簡単には通らない苦戦が続き、精神的にも追い詰められて、9月にはまた国内ツアーに。10月にはSANKYOレディスでツアー初Vを果たして元気を取り戻しました。
米ツアーに挑戦しながら、深追いしなかったのがよかったのかも知れません。07年には上田桃子、08年には佐伯三貴と組んで2年連続女子ワールドカップの日本代表にもなりました。07年には師匠の江連忠コーチと組んで、日本女子オープンをとる公式戦初Vも成し遂げました。08年は1勝でしたが、諸見里の絶頂は、プロ5年目の09年です。
5月のワールドレディスサロンパス杯に勝つと9月には日本女子プロコニカミノルタ杯にも勝ってメジャー年間2勝(通算3勝目)。シーズン6勝をマークする猛烈な勢いで最終戦まで賞金王を争いましたが、横峯さくらに敗れました。しかし、この年は賞金1億6,500万円余を稼ぎ出す1億円プレーヤーにも上り詰めました。
好事魔多し、とでもいうのでしょうか。日の出の勢いだった諸見里の優勝は、09年9月の日本女子プロ(通算9勝目)が最後になって大きな谷間に落ちてしまうのです。10年は勝利がなく11年は5月に全米女子オープンの予選に挑戦、出場権をつかんで帰国しましたが、帰国直後のヨネックスで08年9月以来の予選落ちの洗礼を受けます。続けていた連続試合予選通過は79試合でストップ。以降この年は10試合も予選落ちを連発、V戦線にからめない“変貌”をみせたのです。しかも最悪は、終盤6試合で3連続を含む4試合で予選カットされてシーズンを終わったことです。
10年、11年と2年間優勝から遠ざかり、予選落ちを気にしながら戦う悪循環の繰り返し。諸見里はこのオフ、心機一転の決意をしました。11年12月に静岡・修善寺で行った1週間の座禅と断食修行は苦しかったそうです。高校時代、山梨・七面山の山中で滝に打たれる滝修行も経験したことのあるしのぶが、久々に取り組んだ荒修行。体の揺らぎを抑え、無の境地を求めるこの行は「雑念ばかりが頭に浮かんで、なかなか無の境地になれなかった。座禅は40分くらいですが、あんなに我慢したことは人生でないですね。音を上げました。動けることがどんなに楽かを初めて知りました」という。
諸見里は、未勝利に終わった2シーズンをリセットしてやり直したいと、考えました。そのためには食事も見直しました。アレルギー体質への対策として、このオフから無農薬食材を使い、調味料も無添加のものを使用。トレーナーとも相談して自ら調理をする食事がグンと増えたそうです。並行したトレーニングとの相乗効果はあきらかで、シーズンはじめのころには体重は約2キロ減量。今季の諸見里は、見るからにすっきりした体形になっているのは、オフからの努力の表れといえるでしょう。それでいて「飛距離はキャリーで5ヤード伸びた」といいますから、ゴルフに取り組む体力は増強されたということでしょう。
3年間の長いトンネルにようやく一筋の灯りが見えてきた諸見里しのぶ。復活Vは近々にくるのでしょうか?