勝てそうで勝てないもんもんの日々を過ごしていた22歳、森田理香子が、やっと勝利の女神に巡り合えました。ミヤギテレビ杯ダンロップ女子OP(宮城・利府GC)、最終日は1打差の2位から出て、67のベストスコアで逆転。10年10月の樋口久子IDC大塚家具レディスでは、雨のため2日間大会でのプロ初優勝でしたが、今回は3日間を戦っての堂々の勝利でした。今季は2位3回、3位も3回、トップテン12回と、たびたび優勝圏内にいながら最後の栄冠をつかめない不運続き。飛距離では女子プロツアーでもトップクラスに入るビッグドライブを武器とする大型プレーヤーです。プロ5年目でやっと両目をあけた理香子の、これからがブレークしそう!!
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数々のアマチュア時代の戦績はもうやめましょう。京都生まれの京都育ち。京都学園高時代からすでに頭角を現し、06年~08年はナショナルチームのメンバーとして活躍、07年には石川遼、宮里美香らと米国遠征し、国際試合でも“日本の顔”として腕をふるいました。08年に高校を卒業してすぐ受けた女子プロテストには一発合格。「迫力あるプロになって、将来は米国に行きたいです」と
、すでに大きな志を語ったものでした。その年末に行われた新人戦加賀電子カップでは、2打差2位から出た最終日に7バーディー、ノーボギーの65の猛チャージをみせて、同大会史上最年少の18歳11ヵ月でのプロ初逆転優勝を果たしました。まるでこれに似た今回の逆転劇です。
今回のミヤギテレビ杯。茂木宏美に1打差をつけられて出た最終日。7、8番と12、13番と2度の連続バーディーで通算14アンダー。2打差にしてトップを奪いましたが、15番(パー3)をボギーで落とし、茂木に並ばれました。しかし次の16番のセカンドをピン左4メートルにつけ、これを冷静に沈めると茂木がボギー。再び2打差をつけてトップに立ち、勝負を決めました。最終日に運がなかった理香子に久々の勝運です。圏内にいながらもなかなか優勝に届かなかったその壁を、ついにうち破った歓喜のV。キャディーはじめ表純子、服部真夕ら練習仲間と抱擁するともう涙が止まりませんでした。いつもは勝気で、なよなよするところをいっさい見せない理香子も、やはり22歳の女の子でした。8月、ニトリ、ゴルフ5と2試合つづけて最終日に65を出しながら優勝に届きませんでした(ともに3位)。そんな苦しみからようやく勝利の女神が微笑んでくれました。
「出られる試合はすべて優勝を目指したい」と、強気な宣言をしてプロデビューしたのも有名ですが、09年後半からは岡本綾子と知り合って門下生となりました。が、もともと森田理香子のゴルフを育てたのは、美しいスイングの持ち主たっだ京都出身の足立香澄プロです。そのアマチュア時代、京都学園高の1年先輩には桜井有希がいて、むしろ桜井の方が目立つときもありましたが、二人ともプロになった今では、大差をつけて理香子がトッププレーヤーにのし上がってきました。
岡本綾子の指導を受け始めて3年。上背のある体格を利して、高くトップスイングを作るアップライトなスイングでさらに飛距離を伸ばしました。いまでは270ヤードを楽に飛ばす飛ばし屋ですが、今回も同組の茂木らを30ヤードは置き去りにするダイナミックなゴルフを展開しました。岡本綾子からは「こうした大きなゴルフをする若手が勝ち進んでいく時代がきそう。理香子もその一人ですが、彼女はもっとアイアンを鍛えないといけない」と、つぎなる課題をつきつけられています。
大きなゴルフで常に上位にはきても、アイアンの乱れなどでスコアを崩す日があったのが、優勝が遠かった原因でしょう。今回のように3日間で17バーディーの量産。14アンダー、202での優勝は、大会レコードを4打も更新する理香子らしい勝ちっぷりでしたが、こういうことのできる潜在能力を秘めたプレーヤーですから、いつも理香子から目を離せません。岡本綾子師匠のいうアイアンにさらに磨きがかかってくれば、賞金女王も狙える逸材です。賞金ランクは9位から4位に浮上しました。
「周りからは2日目までだろうとよく言われました。ですから3日間、伸ばせたことがうれしいです。一生懸命努力して、もっと強い選手になりたいです」
1年11ヵ月ぶりに勝利の美酒を味わった理香子は、涙ながらに話しました。