話題の多かった2012年も暮れ、新しい年を迎えます。ゴルフ界も夢膨らむ多彩な年になりそうですが、中でも2013年期待の星は、東北福祉大の4年生になる松山英樹(20)の動向をおいてないでしょう。すでに同大ゴルフ部の新主将に就任することが決まっている松山ですが、一方でシーズン途中の中退⇒プロ転向の可能性も捨てきれません。年末の一日、都内のホテルで日本ゴルフ協会(JGA)主催の日本男女ナショナルチームの慰労会が開催され、松山も2012年最後のイベントに参加しました。2013年の初戦は、1月10日からハワイで行われる米ツアー開幕第2戦のソニーオープン・イン・ハワイ(ワイアラエCC)に決定、期しくも世界のトッププロ相手に勝負を挑む年明けとなりました。4月11日からのマスターズ前後に“松山英樹プロ転向”のビッグニュースが飛び込むかもしれません・・?
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暮れの東京・八重洲富士屋ホテル。将来は日本のゴルフ界を担う男女ナショナルチームのメンバーが顔をそろえました。女子の鬼頭桜(美濃加茂高3年=12年日本ジュニア優勝者)の挨拶に続いて、男子は松山英樹が日本代表チームの挨拶に立ち、堂々と12年1年間指導を受けたJGAへの謝意をのべました。12年の松山は、日本オープンローアマ(7位)をはじめ、日本学生優勝(2連覇)、サン・クロレラクラシック2位、三井住友VISA太平洋マスターズ4位、ダンロップフェニックス2位・・終盤は出場4戦連続ベスト10入り。4月のマスターズでは2年連続決勝ラウンドに進出して54位(11年は27位でベストアマ)など、華々しい戦績を残しました。11年には三井住友VISA太平洋でプロツアー初優勝を果たしていますし、すでに実力は“プロ級”の20歳です。
12年は予選落ちに終わったハワイでのソニーオープンに向けて、松山は周到な準備を進めてきました。シーズン終了後、ほとんど休む暇もなくトレーニングを続け、このJGA慰労会が終わった24日にはもうハワイ入りしました。東北福祉大の先輩にあたる元メジャーリーガーの佐々木主浩氏(44)らに体力トレーニングの指導を受けるためです。
「将来は米ツアーに挑戦したい」と、いまから大きな夢を語っている英樹です。一刻も早くプロになって実力を試していきたいのが本音でしょうが、松山には13年もう1年アマチュアの舞台も残っています。ここまできたら、もうどんどん実力を上げていきたい英樹には「もう1年」は長くもったいない1年間でもあります。
12年、マスターズと国内プロツアー6試合に出場した松山の「もしプロだったら」の仮想通算賞金は4872万4000円。国内賞金ランキングは片山晋呉に続く20位に相当する額です。08年からプロツアーに推薦出場している松山の仮想賞金総額は、9931万円。まさに1億円の大台目前の“稼ぎ”をしているのです。ダンロップフェニックスで、世界ランク3位のルーク・ドナルド(34)に競りかけて2位に入ったのを見るまでもない怪物アマ。13年ももう1年アマチュアで戦うとしたら、また何千万、いや億にも達するマネーをさらに水に流すことになります。
いずれはプロゴルファーとして人生を送る英樹が、大学生活の“1年”を捨てる決心をしてもなんの不思議でもありません。このオフ。東北福祉大ゴルフ部の阿部靖彦監督(50)とも自らの進路をよく相談するといっている松山は、JGA慰労会の席でも「プロ転向について考えてはいますが、まだ現時点ではなにもいえません。来年は(大学ゴルフ部の)キャプテンなので、しっかり努めなくては・・」と。固い口は変わらず、さらに「12年のシーズンでは、100ヤード以内のショートゲームとパターに課題が残った。来シーズンに向けてはその辺をしっかりやりたい。そして出る試合は優勝を狙えるようにしたい」と、強い意欲はみせていました。国内の男子ツアーが試合数が減るなど″危機〝を迎えていて、松山のプロ転向を望む声が高まっていますが、それについても「プロでもアマでも優勝は一緒。どこでも勝てる選手にならないといけません。結果を出せて日本ツアーを盛り上げられれば、うれしいですね」
と、話すにとどまりました。
松山があと1年のアマチュア生活を前にして苦悩しているのは明らかです。3年連続で狙っていたマスターズ出場の権利を逃がし、いまひそかに心待ちしているのはマスターズ委員会からの特別招待枠による出場切符です。12年、石川遼がこの特典を受けて出場しましたが、11年にはベストアマにもなっている松山に“もしかしたら?”の期待がかかっています。3月までにはこれがはっきりしますが、もしマスターズに出場できれば、4月のマスターズ終了後に「プロ転向宣言」の可能性があります。マスターズ出場が絶望となれば、その時点での転向もあり得ると思われますが、そのあたり英樹の胸中はいかがなものでしょうか?
いずれにしてもメジャー第1戦、マスターズが英樹の心を決める大きな“ヤマ場”となりそうです。マスターズ出場への最後のチャンスは、1月第1週に開幕する米ツアーでの優勝です。開幕からマスターズ前週までのツアー優勝者にはマスターズ出場資格が与えられますから、「出る試合は優勝を狙いたい」という松山には、もう遊びではなく、いきなり真剣勝負のハワイ初戦となります。2週間以上前に開催地ハワイ入り。“大魔神”の指導をうけてこの試合に備える英樹。マスターズへの思い、プロ転向への意思決定・・もう後へは引けぬトッププレーヤーの戦いが英樹には始まったといえそうです。