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久々、男子ツアーに興奮を呼び戻した英樹vs遼の競演。 平成生まれのニューヒーロー、小平智にも脚光!!

スタートのティーグラウンドで石川遼(左)と松山英樹(右)=茨城・宍戸ヒルズ西1番ティーグラウンド
スタートのティーグラウンドで石川遼(左)と松山英樹(右)=茨城・宍戸ヒルズ西1番ティーグラウンド

 停滞気味の男子ツアーに興奮が高まったのはホントに久しぶりでした。松山英樹は全米オープン10位の勲章をつけて帰国したばかり。迎えるは、今季から米ツアー本格参戦の石川遼が、一時帰国して今季日本ツアー初参戦で満を持していました。ともに同い年の21歳対決。日本ツアー選手権(茨城・宍戸ヒルズ西コース)で予選ラウンド同組となった両雄を見ようと、初日から4000人を超えるギャラリーが追いかけました。女子プロ人気に押された男子ツアーが久々に燃えた2日間。期待に応えた英樹が、初日67で2位発進したのに対して、異様なムードにのまれたのか、80をたたいて初日最下位に沈んだ遼。2日目は、初日より15打少ない65で回る意地を見せましたが、カットラインクリアには2打届かずに予選落ち。両雄の対決は、2日間の淡い夢に終わりましたが、強い刺激を受けた日本ツアー選手権宍戸ヒルズでした。大会はプロ4年目、平成生まれのニューヒーロー、小平智(こだいら・さとし=23)がメジャー大会でツアー初優勝を飾りました。

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松山英樹のティーショット(茨城・宍戸ヒルズ西1番ティーグラウンド)
松山英樹のティーショット(茨城・宍戸ヒルズ西1番ティーグラウンド)

 丘陵コースの宍戸ヒルズ。西コースの1番もギャラリーにとっては歩きにくい傾斜地が続きます。右サイドは山側でギャラリーは入れません。上り坂のフェアウェイの左サイドのみにへばりつくギャラリー。ティーグラウンドからグリーンまで、右側を除きほぼ人垣で埋めつくされた1番ホールでした。初日、9時39分スタートは松山英樹、石川遼。それにディフェンディング・チャンピオンの藤本佳則(23)。藤本は英樹の東北福祉大の先輩です。拍手と“ウワーッ”という大歓声で3人はティーに迎えられました。

「全米オープン最終日みたいでびっくりしました」と、スタートホールの印象を話した英樹。2日前に帰国したばかりの時差ぼけにもめげず、気合のこもったドライバーは、まっすぐフェアウェイをとらえました。負けじとナイスショットをと飛ばした遼。フェアウェイに歩き出した二人を追って、1番ティーグラウンド付近にいたギャラリーと報道陣のほとんどがいなくなりました。こんな光景を見るのも久しぶりです。

石川遼のティーショット(日本ツアー選手権宍戸ヒルズ)
石川遼のティーショット(日本ツアー選手権宍戸ヒルズ)

 7メートルに2オンした1番のバーディーパットをいきなり沈めた英樹。遼にプレッシャーをかける意味のあるバーディー発進です。これを見た遼は、3メートルにつけていたチャンスを外しました。スタートの明暗。これはすぐ2番でさらに鮮明になります。左曲がりで、第2打からだらだらのぼりになるパー5。遼はドライバーを右に曲げ痛恨のOBです。逆に第2打の230ヤードを3番アイアンで狙った英樹は、ピン1.5メートル弱に見事な2オン。これを決めるイーグルでガッツポーズです。OBでダブルボギーを食った遼とは、この1ホールで4打差。1番のバーディーを含め2番までで5打差がつく厳しい明暗でした。二人の直接対決はこの2ホールで象徴されました。インでもバーディーを量産した英樹は、1イーグル、4バーディー、1ボギーで67。遼は2ホール連続で3パットを犯したり、17番ではまた右OBのダブルボギーが出て、バーディーは10番の1個だけ。アウト、インともに40をたたく屈辱の80で、なんと最下位に沈みました。2位に2打差の2位スタートになった英樹とは、初日から13打の差がつきました。

 英樹と遼の同組対決はこれまで5回あり、2勝2敗1分け。今回は英樹がプロになって初めての対決(6回目)でしたが、英樹は「コースが分からないことが多くて自分のことでいっぱい。遼のことはよく見てないけど、調子はよくないのかなと思った」と、久々の同学年対決にもサラりと一言。米ツアーですごい選手を目のあたりにしている遼の方は「どんなショットでも軸がぶれず、よどみなく一気に振っている。ショットの安定性はすごい」と、率直にライバル英樹を評価しました。

昨季ツアー、ドライビングディスタンス293.13をほこる松山英樹のドライバーショット(日本ツアー選手権宍戸ヒルズ)
昨季ツアー、ドライビングディスタンス293.13をほこる松山英樹のドライバーショット(日本ツアー選手権宍戸ヒルズ)

 日本ではプロ転向後トップ10を外したことがなく、すでに2勝して破竹の勢いで賞金レースとップを走る英樹。今回の全米オープンでもメリオンの難コースにもめげず10位フィニッシュを果たしたばかりです。反して遼は、初本格参戦の米ツアーで苦戦の連続。
最近6試合で予選通過を果たしてるとはいえ、相当な心身の疲労が蓄積していることは間違いありません。今回、シーズン初めての帰国で心機一転をはかりたかったのでしょうが、英樹に叩きのめされたのはショックです。予選落ちは決定的とみられた最下位から、2日目に不調だったパターを替え、初日より15打少ない「65」で回ってなんとか面目を保ちました。ショットも、16番(190ヤード、パー3)では、フェードボールであわやホールインワンかというピン30センチにつける米国仕込みのスーパーショットを披露しました。15、16番の連続バーディーのあと、最難関の池越えの17番でも、ピン下3メートルにつけるチャンスをつかみ、これが入れば予選も通過するかという場面でしたが、ボールがカップを覗いて止まる不運で天を仰ぎました。最終18番で初ボギーとしましたが、8バーディーを奪う65をマーク。しかし初日の大たたきが響いて予選通過には2打不足で涙を飲みました。「きょうのベストスコアを出せば予選通過するかもしれないと思ってスタートしたのですが、仕方がない。パットのリズムもつかめたし収穫があった」と、悔しさをにじませた遼クンです。

 2日目も初日を上回る4863人のギャラリーが二人を追いました。遼の逆襲にあおられたわけでもないでしょうが、2日目の英樹は2バーディー、2ボギーのパープレー。「集中力が出なかった。いいショットが出なかった。パープレーができたのはラッキー。遼は1日で修正して、明らかに違うショットが打てるようになるのはすごい。ああいうゴルフをしていれば米ツアーでも通用しますよ」と、英樹は初日のお返しをされた遼にエールを送りました。

英樹vs遼の同年対決を見ようと集まった大勢のギャラリー(茨城・宍戸ヒルズ西1番ティーグラウンド)
英樹vs遼の同年対決を見ようと集まった大勢のギャラリー(茨城・宍戸ヒルズ西1番ティーグラウンド)

 ファンの注目が集まった英樹と遼を同組にして競演させたペアリングも賛否両論でした。同組にすれば同時に競り合う二人が見られるよさもありますが、両雄を一緒にすることで、今回のように一方が崩れるリスクもあります。もし、共倒れになって二人そろって予選落ちでもしようものなら、大会の運営に支障がきたします。こういうケースは、二人を別々の組に分けてリラックスしたプレーをさせ、ギャラリーも分散させる方法もないとはいえません。成績順によって決勝ラウンドで両雄が同組になるのは理想です。主催者の思惑でどうにでもなる初日、2日目の組み合わせですから、一考する余地はあるでしょう。

 とはいえ、久々に若い2大スターの競演は
 ギャラリーやお茶の間のゴルフファンを熱くさせました。遼クンの方は、お国帰りは1試合だけでまた米ツアーに帰りました。休む間もなく27日からのAT&Tナショナル(メリーランド州コングレッショナルCC)
に出場します。いまのところ今後の日本での試合出場予定はなく、「今季の目標(125位以内のシード権確保)を達成するため向こうで数多くの試合に出たい」と話して米国へ向かいました。

 英樹は、7月18日開幕の全英オープン(ミュアフィールド)まで国内ツアーに専念します。今週のミズノオープンは、疲労をおして出場の予定ですが、ツアー選手権でプロ4年目でツアー初優勝を果たした小平智も23歳、平成生まれのニューヒーローです。遼は2日間で米国へ去りましたが、新しいスターの誕生で英樹らと好勝負を展開してほしいもの。男子ツアーには救世主が待ち望まれます。