51歳の井戸木鴻樹が全米プロシニアで優勝、世間をアツといわせましたが、今度は58歳の中嶋常幸が、日本のシニアツアー(スターツシニア=茨城・スターツ笠間GC)で“天敵”室田淳(57)を降し、1打差の18アンダーで優勝しました。レギュラーツアー59勝の永久シード選手ですが、シニアツアーでは2008年の日本シニアオープン(狭山)以来久々の5勝目でした。今週は、アメリカ帰りの石川遼、松山英樹の出る日本ツアー選手権宍戸ヒルズに4週連続で出場「一泡吹かせてやる」と老体?にムチ打って吠えています!
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昨年中ごろまで95キロとマルマルと太っていた中嶋が、この一年で12キロの減量を断行、いまでは83キロまで落ちて顔つきもすっきりしてきました。食事療法と、このオフの懸命なトレーニングのおかげで体のキレを取り戻しました。2週前のダイヤモンドカップでは松山英樹と最終日最終組で優勝を争うまでの復調(6位)で周囲を驚かせました。永久シード選手は、レギュラーツアーのどの試合にも好きなときに出場できる特権を持っていて、58歳になった中嶋も試合を選びながらのシーズンを送っています。今回は珍しく4週連続のトライです。それもこのところの好調なゴルフがそうさせているのでしょう。
「もうクタクタ。限界だよ」といいながら出て行ったスターツシニアでは、3日間で1イーグル、17バーディー、1ボギーの18アンダーでの優勝ですから、だれも文句はつけられません。首位に2打差の3位からスタートした最終日。前半から飛ばし、5メートル1回、6メートル2回といいパットを沈め4番からは3連続バーディーでアウト31。同じ組で回る室田に2打差をつけて単独首位に。シニア入りして以来、室田とは何度も優勝争いを演じては室田に軍配があがってきました。「室田は天敵。あんなしぶとい男はいない。もう一緒にやりたくない!」ー“目の上のたんこぶ”といって苦手にしていました。お互い58歳(中嶋)、57歳(室田)とトシはとりましたが、この二人の関係はいまだに続いているのです。
いったんは中嶋がリードした展開も、インに入り室田が10番、12番ととってまた二人は並びます。「予想通り室田クンとの争いになった。オレがリードしてもすぐ追いついてくる。(室田とは)2度と一緒に回りたくないと思いながらやってたよ」と、またまたぼやくトミー。14番(パー5)では室田がまたバーディー。中嶋も負けじと第3打を80センチにつけて譲りません。続く15番(パー4)では、PWで第2打をピン奥3メートルあまりに落とし、バックスピンでカップ30センチに寄せる妙技で突き放します。中嶋の1打リードで迎えた大詰の17番(パー3)。室田が手前6メートルのバーディーパットをしぶとく入れて追いつきます。“またか”と思わせましたが、中嶋は逆のライン、上からの5メートルを絶妙なタッチで転がし、ジャストカップインさせるバーディーを打ち返してリードを守りました。この試合、最高のハイライトでした。
「最後にきて入れて、ヨシ勝負だ、と思った矢先に中嶋さんがあの難しいパットを決めるんだもん。あれは参った。つい拍手しちゃったよ。本当にすごい。オレは2位が多いからこんなものだよ。楽しかったけど、先輩に比べたらオレなんてまだひよっ子だよ」とちょっとキレ気味の室田。最後の望み、18番(パー5)では、グリーン横からのショートアプローチをザックリやってバーディーが取れず室田は涙を飲みました。
★中嶋常幸の勝利コメント
「僕が64で室田が65。お互いしびれながらすごい試合だった。1イーグル、17バーディーは大したもんだよ。グリーンが止まればこんなものだよ(笑い)。でもコースはいいコンディションだったから。シニアになって勝つのは公式戦だけで、(スポンサートーナメントは)初めて勝ったよ。スターツとファンケルの会長からは毎年、勝ってくれよといわれ続けていたものね。相手が室田だったからうれしいね。いま、ゴルフの内容がいいから自分の中で手ごたえがある。これが大事なんだよ。室田と二人で頑張ってるからできるんだよ。来週も宍戸で一泡ふかしてやろうじゃないか」
自分の試合をやりながら毎晩、毎朝、海の向こうの全米オープンのTVにくぎ付けになっていたという。「あの難しいメリオンをいくつで回れるんだろうと、気持ちは全米オープンだった」(中嶋)そうです。その刺激を受けた“全米OP効果”で、会心の勝利を自分に引き寄せた中嶋サンです。
今週は、全米オープンで10位と健闘した松山英樹が帰国早々、宍戸ヒルズで石川遼と対決します。この梅雨時、58歳の4週連続は厳しいものです。しかも優勝争いを勝ち抜いた心身の疲労は隠せないでしょう。しかし、ゴルフに執念を燃やすトミー中嶋の、レギュラーツアー挑戦を、先日のダイヤモンドカップに続いて注目しましょう!