今季、米ツアーに本格挑戦する賞金王、松山英樹が、心が晴れないまま1月3日渡米しました。暮れの12月27日には、昨年末の世界ランキング23位で得た2年ぶり3度目のマスターズ招待状が届き、プロとしては初めてのゴルフの祭典に出場することが本決まりになりました。一躍スターダムにのし上がった松山には、昨秋から次々と大手企業との億単位のスポンサー契約が続き、トヨタ自動車(レクサス)とは所属契約まで交わして万全の態勢が整っています。そのうちの一つANA(全日本空輸)とのスポンサー契約発表も3日、出発前の羽田空港で行われ同夜の便で今年の第1戦ソニーオープン・イン・ハワイ(1月9日~12日)に向けての渡米でしたが、その表情がいま一つさえなかったのは、心配です。昨年11月下旬に痛めた左手親指付け根関節炎の回復がままならず、まだフルスイングも練習ラウンドもできないままの渡米になったからです。プロゴルファーにとって致命傷にもなりかねない左手親指痛。渡米はしたもののソニーオープン出場の可否は、ハワイでの様子をみてから・・という悲痛な状況です。
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スポンサー契約を交わしたANAが、3日夕、松山のハワイ出発前に羽田空港内ターミナル講堂で記者発表会を設定しました。ANAの常務取締役執行役員の西村健氏はじめ女性アテンダントも出席させて松山とのスポンサー契約をにぎにぎしく発表しました。西村常務は最初に“松山選手の魅力は?”と問われ「ズバリ、ケツのでかさです」と笑わせたあと口を開きました。
「これからのANAは世界で勝負したい。同じように、今年から世界の舞台に挑戦する松山選手のグローバルを目指したひたむきな努力、結果を出すという心構えがすばらしい。メジャー制覇を目指すそういう選手と一緒に世界を目指して戦っていきたい。スポンサーというより、アメリカツアー、東西6000キロを飛行機移動する松山選手が最高のコンディションで安心してゴルフに集中できるように支えていきたい」
ANAとのスポンサー契約は、関係者によりますと、2014年1月からの3年で1億円(金額は推定)。国内外の移動費を含め年間5000万円クラスのビッグなサポートを得られるようです。飛行機移動の多いプロゴルファーにとって航空機会社との契約はありがたいものです。また松山は、米国内では石川遼も契約しているプライベートジェット機の斡旋会社「ネットジェット」とも契約を結ぶ予定。広大な米国内の移動にはプライベートジェット機の優先使用契約を確保できれば万全の臨戦態勢といえます。
昨年は最優秀選手賞、賞金ランキング賞、最優秀新人賞、平均ストローク賞など9部門でトップを奪い、僅か16試合で4勝を挙げて2億円超の賞金を稼ぎました。ルーキーにして米ツアーのシード権を獲得。昨年末の世界ランキングは23位。今季、4大メジャー出場の可能性も十分で松山にかかる期待度は上がる一方なのです。
そんな英樹に水を差すつもりはありませんが、昨年11月下旬に痛めた左手親指根元の関節炎の回復度が遅いのは心配の種です。昨年12月1日に終わったカシオワールドでは、親指つけ根が痛い左手を一瞬離してしまうショットをしながらも優勝。4勝目を挙げたのですが、それ以降は松山からゴルフの話は途絶えたままです。カシオの翌週のツアー最終戦、日本シリーズJT杯も欠場。12月15日、1日だけの大会、3ツアーズも辞退。クラブを握れない状態のままシーズンを終えました。16日に松山は「きのう久しぶりにクラブを振ってみたら、まだ左手親指根元に激痛が走りました」と、苦しい心情を漏らしました。米ツアーはすでに昨秋10月から始まっており、松山も10月、3試合に出場しています。12月の中断期間を経てツアーは新年3日からの現代自動車チャンピオンズで再開しています。新年2戦目がソニーオープン・イン・ハワイ(ワイアラエCC)ですが、短いシーズンオフをクラブも握れず、ろくな練習もできなかった松山への不安は隠せません。
★羽田空港での松山インタビュー。
「左手親指の状態はよくわかりません。いろんな治療をしてますが、詳しくはいえません。クラブだけはときどき振ってましたが、痛いときもあり、そうでないときもあってバラバラ。まだフルスイングはしていません。ラウンド練習もしていないのでソニーオープンに出てもそんなにいい成績はのぞめないと思う。いまゴルフをしても(練習してないので)体力もない。しっかり練習できる状態に戻すことが大事。マスターズの招待状は目標としていたものが届いたのは嬉しい。でももう3回目なんで特にドキドキもしなかった。どうってこともない。嬉しいけど、いまは気持ちが入ってないないから早く練習して体づくりをしていかなくては・・。いまが勝負どころではないと思うから、ムリしても仕方ない。ケガの具合がどれくらいか分からないですが、気持ちに体がついていけるよう4月に向けて調整していきたい。アメリカではまずはシード権をとり、それから優勝を目指したい」
マスターズ招待状のうれしさを語りながらも、どこか不安げな言葉がつい口をついて出てきました。1ヵ月あまり、ラウンド練習はもちろん、クラブもろくに振っていない状態でのハワイ入りは厳しいものがあります。温暖なハワイとはいっても、少々の練習で9日からのソニーオープンの本番に出場できるのでしょうか。
ソニーオープンのあとは翌週の試合には出ず、気候や環境のいいハワイに留まって体づくりからの練習を始めます。そして新年4戦目、23日からのファーマーズ・インシュアランス・オープン(トーリーパインズ=カリフォルニア州)を目指す予定です。新年から米ツアーは毎週のように試合が続きます。松山ももう立ち止まっていることはできません。憧れの米ツアー本格参戦を勝ち取ったのに、万全でない体調を抱える英樹の胸中は察するに余りあるものがあります。すべては左手親指つけ根の状態次第ですが、数多くのスポンサーを抱えた松山英樹が、生きるか死ぬかの瀬戸際です。米国でスポーツ医学の名医でも見つけられないでしょうか?