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「優勝というのは相当気分のいいものなんだろうなと思っていたら、そうでした!」 グリーンエッジ、20㍍から逆転サヨナラ・イーグルを決めた20歳・渡辺彩香(あやか)!!

最終18番グリーンエッジからの20㍍をチップイン。最大6打差だった藤田幸希をひっくり返す逆転サヨナラの劇的イーグル 。喜びの優勝カップを抱く渡辺彩香(あやか)=宮崎・UMKCC

女子プロゴルフツアーは、開幕4戦目。シーズン早々から劇的な″逆転サヨナラ・チップインイーグル劇〝のニューヒロインが現れました。83年のハワイアン・オープン。青木功が18番でみせた逆転サヨナラ・イーグルを思い出させるこの快挙。プロ入り3年目、ツアー本格参戦は2年目の20歳・渡辺彩香(あやか)。172㌢、65㌔の恵まれた体から、平均飛距離270ヤードの飛ばし屋が、グリーンエッジからみせた鮮やかな小技。女子プロ界にはまたまた世界基準のどでかい新星が名乗りを挙げてきました。優勝賞金1440万円のアクサレディス(宮崎UMKCC)最終日の奇跡でした。

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今季も多くのファン注視の中、幕を明けた人気の女子ツアー。
今季も多くのファン注視の中、幕を明けた人気の女子ツアー。

熱海の砂浜を走って育った熱海っ子。高校はゴルフが強い埼玉・栄高に入りたい、といえば「家から通うのが条件」と、月約6万円もの交通費がかかる新幹線&在来線通学を許してくれた父親・光章さん(53)の後押しも影の力でした。毎日片道2時間をかけた通学をやり通した渡辺彩香の強い精神力は、ゴルフにも通じるものがありました。最終日、2打差の2位から首位の藤田幸希を追いました。出だしの1番で第1打を右に曲げて池ポチャするボギー。3番でもボギーにして最悪のスタート。4番を藤田がバーディーとして最大6打差がついては、半ば諦めてもおかしくない状況でした。しかし彩香はギブアップしません。彩香の反撃バーディーラッシュは7番からでした。7、9番をとって5打差で折り返すと、13番でもバーディー。藤田もこのホール、バーディーで残り5ホールでまだ5打差がついていました。

「最後の18番がパー5だし、風もフォローになるのは分かっていましたから、18番までにもっと詰めたいと思っていたんです。でも、なかなかチャンスがこなくて・・」(彩香)。残りホールがだんだん少なくなって、逃げ足鋭い藤田はやはり捉えられないのかと見え始めた終盤でした。同じ最終組で回る藤田が、14番、15番を連続ボギーにする予想外の展開に。粘りに粘っていた彩香のチャンスは″残り5ホール〝になって突然灯りが見えてきました。藤田の連続ボギーで一気に3打差に縮まり、逆に彩香は、16番で4㍍を入れ、17番はフェアウェイバンカーからの150ヤードを7番アイアンで2㍍につけるスーパーショットをみせ、連続バーディーの逆襲です。なんと6打差あった藤田の背中に1打差と迫って最終18番を迎えました。

パー5の最終ホール。フェアウェイからの2打目は、ピンまで残り219ヤード。彩香が取り出したのは、フェアウェイウッドでもユーティリティでもありませんでした。「中学時代から使っている3番アイアンが、200ヤード前後のショットで一番イメージが出やすいんです」(彩香)という3番アイアン。バッグにいつも入れているこのロングアイアンを振り切って、ボールをグリーン左サイドまで運びました。いまやユーティリティクラブ全盛の時代。2番アイアン、3番アイアンといったクラブは、球が上がりにくくてミスが出やすい。振りぬくにはパワーもいるのでいまや″過去のクラブ〝。ところが彩香は勝負どころでこれを手にするのですから、よほど3番アイアンへの思い入れは強いのでしょう。

≪彩香がクラブ契約するブリヂストンスポーツの話≫

「彩香が使っている3番アイアンはプロトタイプ。市販はしていません」(BS広報ユニット)

ボールは僅かにグリーン左に外れましたが、カップへは約20㍍の距離。ロフト50度のウェッジでのチップは、グリーンエッジから10㍍付近に落としてあとは転がすプラン。その狙い通りに糸を引いたボールはスルスルと滑って直接カップに消えました。一気に2打縮め藤田を追い抜くイーグルです。右手を高く上げ、クラブを持った左手も同じように高々と掲げてバンザイポーズの彩香。前日の18番でも、最終日とほぼ同じところに3打目を外し、そこからチップインのバーディーを奪っていた彩香の連日の快挙。前日のイメージも残っていたのでしょうが、このオフ、徹底して練習したグリーン周りのアプローチが見事に実ったテクニックでした。第3打でグリーン脇に外していた藤田は、ひきつる顔で打ったチップがカップを外れ、彩香の逆転イーグルは勝利を呼び込みました。ここというときに何かをしでかす女。強い運を持ている彩香です・・。

渡辺彩香の優勝コメント

昨年、断然の強さをみせ、23歳で初の賞金女王となった森田理香子。今季もすでに1勝して本命視されているが、 突然20歳の渡辺彩香が挑戦状をたたきつけた。女子ツアーは今季もヒートアップしそう。

「信じられない優勝でした~。足がずっと震えていました。すぐには実感が湧いてこなくて、ホッとしたというか力が抜けたのが大きくて涙も出ませんでした。(仲のいい同期の比嘉)真美子たちやみんなが待っててくれたときはちょっと泣きそうになりましたけど・・。18番のチップは、上りのほとんど切れないフックライン。最後、止まっちゃうかなというのがあって、もうちょっと行け、もうちょっと行け、という感じだったんですが、最後までしっかり転がってくれました。狙いにいったというよりは、(バーディーで)プレーオフにしっかりいけるようにと、セカンドショットのときから考えていました。まさか私の課題だったアプローチが優勝に繋がるとは思わなかったです。3番アイアンは、中学時代からずっと使っているクラブですから・・。2打目、グリーンエッジまで199ヤード。ピンまでは219ヤード。フォローの風。キャリーで届くクラブではないのでグリーン左端くらいが狙いどころ。外すなら左サイドという気持ちでした。グリーンを外したあの位置は、ミスじゃなくて許容範囲です。今日は前半私がもたついて藤田(幸希)さんのショットがキレキレで、ほとんどピンを指していたので、正直今日は厳しいんじゃないかと前半思っていました。でも強い風の中でハーフのうちにイーブンに戻せたので、あと半分で少しでも差を縮めようと、攻める自分のゴルフに徹しました。その結果が最後のイーグルに繋がったと思います」

小学時代のスイミングクラブでは熱海市大会で2位に入ったりしましたが、中3の08年にはゴルフの日本ジュニア12~14歳の部で優勝。埼玉・栄高時代の10年には関東高校選手権、11年には東日本女子パブリックアマ選手権を制し、3年生では女子主将で全国高校選手権団体優勝に貢献。09年からはJGAナショナルチームのメンバー・・とアマでも活躍しました。高校を卒業した12年に、比嘉真美子らとともにプロテストに一発合格(8位)。最終QTでは29位で13年度からツアー本格参戦。ルーキーイヤーから賞金ランク46位に入ってシード権を獲得。ツアー本格参戦2年目の開幕4戦目に劇的な初勝利をゲットするなど、″飛ばし屋・彩香〝はトントン拍子でプロの道を歩み始めました。

「去年、(比嘉)真美子の初優勝したプレーオフをナマで見ていて、優勝というのは相当気分がいいんだろうなと思っていたんですけど、そうですね。真美子はもう2勝していますし、すごい刺激になっています。開幕からすごく調子がよかったので、早く勝ちたいとずっと思っていました。夏までにできたらいいなと、思っていましたから。一つ勝って、やっぱり2勝目をしたいなと思います。オリンピックに出るのが私の最後の目標ですが、アメリカにも早く行きたい。全英リコーも、去年真美子が行ってすごく楽しかったと言っていたので、そんなに楽しいんだったら私も行ってみたい」

思ったことを何でもそのまま表現する快活な現代っ子・彩香。並み居る有望な若手群、韓国パワーのあふれる女子プロ界に、また一人突然の殴り込みをかけてきました。今季の女子ツアーの見どころが増えました。