Monthly Archives: 3月 2015

「ローマの休日」を生かしたテレサ・ルー(台)の開幕戦V。韓国パワーに負けじと台湾新勢力!

通算14アンダーで逆転V。15年開幕戦を制した飛ばし屋、テレサ・ルー(台)
通算14アンダーで逆転V。15年開幕戦を制した飛ばし屋、テレサ・ルー(台)

いよいよ国内ゴルフツアーが始まりです。一足先に開幕したのは女子ツアーで、ダイキンオーキッド・レディス(沖縄・琉球GC)が3月第1週に行われました。その開幕戦を制したのはテレサ・ルー(27=台湾)。1打差の2位で出た最終日、7バーディー、ノーボギーの65で回り、通算14アンダーとして逆転優勝。昨年最終戦、LPGAツアー選手権リコー杯から年をまたいで2試合連続V。これは朴仁妃(パク・インビ=韓国、10~11年)以来2人目の快挙でした。久々台湾出身の強いプレーヤーの台頭で、今年は韓国パワーに加えて日本女子ツアーのトップ級で戦う選手になりそうです。

☆      ★      ☆

テレサは昨年、日本女子オープンを制し″日本の最高峰〝にまで登りつめていました。昨季の賞金ランクは、トップのアン・ソンジュ(韓国)に続いて2位。1億2000万円超を稼いだ実力派です。ここ数年、年々腕を上げて上位で戦うようになったこのテレサ。かって日本女子ツアーを席巻した大先輩、ト阿玉の再来か!?と思わせるような強さを見せ始めました。さほど大柄ではありませんが、均整のとれた体躯からコンパクトでムダのない美しいスイングを身につけています。メンタル的にも冷静でなかなかのプレーヤーです。

昨季11月に鎖骨を痛めた影響でこのオフは練習量不足。本格的にクラブを握ったのは「3週間前(2月10日過ぎ)」(テレサ)だそうです。それでも初日から連日60台で回り、最終日は3番までショットが不安定でした。しかし、巧みなバンカーショットなどでパーをセーブ。ホールごとに安定度を増して7番で3㍍を入れる初バーディー。9番でも同じ3㍍をものにして波に乗りました。後半は11番(パー5)で2オンしてバーディー。圧巻は14番(381ヤード、パー4)。残り90ヤードを58度のウェッジであわやホールインワンかという正確なショットをピンにからめてバーディー。最終18番(パー5)は、3打目のチップショットをピンオーバーさせ奥のカラーまで行ってしまいましたが、この4㍍をパターでねじ込んで7個目のバーディーで締めくくりました。1位にいた同組の穴井詩をかわし、迫ってくる森田理香子もグングン引き離し4打差をつけた圧勝でした。

☆年をまたいで2連勝のテレサ・ルーのコメント

年間3勝とブレークした昨季、日本女子最高峰の日本女子オープンを制した時のテレサ・ルー(14年10月、滋賀・琵琶湖CC)
年間3勝とブレークした昨季、日本女子最高峰の日本女子オープンを制した時のテレサ・ルー(14年10月、滋賀・琵琶湖CC)

「シーズン前、ケガ(鎖骨)もあったりでちょっと不安でした。今年はどうなるか分からない、と思っていました。最終ホールまで集中していました。穴井さん(昨季最終戦でもプレーオフを戦って勝った)と、また一緒でしたけど、彼女とはティーショットの距離が同じくらいなので、プレーしやすい。詩(らら)さんと回れてよかった。彼女はすごくいいプレーヤーなので、そのいいプレーに自分も引っ張られた。このオフは、ケガで胸のあたりが動くと痛くてよく練習できなかった。いまはようやくよくなってきましたけど・・。(13年の)ミズノクラシックに勝ってから、それまではいろいろ考えて自分を抑えきれなかったのが、自分の気持ちを抑えられるようになった。それから勝てるようになった(昨季は3勝)。今年はラッキーで初戦に勝てましたけど、勝ったからといって賞金女王になれるわけじゃない。シーズンが始まってみんながよくなって来ればわからない。自分もここで勝ったことで、もっとよくなっていければうれしい。自分のゴルフをしていきたいです」

しっかりした足腰で、飛ばし屋のテレサです。同じく飛距離の出る穴井との一騎打ちは、いいリズムで戦えたのでしょう。このオフは台湾での体力強化トレのあと、2月前半に宮崎で谷口徹や松村道央らのグループに入れももらって、練習やラウンドをこなしました。その前の1月には、「イタリアへ2週間遊びに行ってきました」(テレサ)という。「台湾とはまた違った文化を体験したかった。各地を回ったけど、中でもローマが素晴らしかった。町全体が遺跡。そんな環境に浸ってきて、ホントいい刺激になりました。今年もまた頑張ろう・・っていう気持ちになりましたね」(テレサ)。

オフの間、今回は鎖骨の負傷もありましたが、練習漬けになるのではなく、こうした″心の洗濯〝も忘れないテレサ・ルーのオフの過ごし方は、素晴らしいものがあります。「ローマの休日」は、激戦疲れのテレサを確実に癒したのでしょう。

今季、テレサが掲げている大きな目標の一つは、平均ストロークを上げること。14年テレサの平均ストロークは、70.6384でこの部門3位。賞金女王のアン・ソンジュ(韓国)も実現できなかった60台を目指しての挑戦が続きます。

2年ぶりの女王奪回を目指す森田理香子。最終日スコアを6つ伸ばしたが、テレサ・ルーには4打及ばず2位にとどまった。
2年ぶりの女王奪回を目指す森田理香子。最終日スコアを6つ伸ばしたが、テレサ・ルーには4打及ばず2位にとどまった。

11歳でゴルフを始め、アマチュア時代は台湾ナショナルチームの一員として海外遠征もこなたテレサです。05年、アメリカン・ジュニアゴルフ・アソシエーション(AJGA)の試合に出るために渡米。米国に滞在して11月にプロ転向。米女子ツアーQTにもトライしました。07年はウェイティング出場で賞金ランク63位で初シード獲得。以降10年まで4シーズン、米ツアーのシード権をキープしました。米ツアーでのベストフィニッシュは、08年ギン・オープンの3位タイ。台湾女子オープンは07年、08年と連覇。アニカ・ソレンスタムのコーチとして有名だったヘンリー・ライスに師事したこともありました。米ツアーで戦っているヤニ・チェン(台湾)とは、ジュニア時代からのチームメイトです。

日本のQTにも09年に受験して7位。10年は日米両ツアーかけもち。11年から日本ツアーに腰を据えて戦いシード選手に。13年11月のミズノクラシックで待望の日本日本初勝利。13年は年間最多タイの11イーグルで飛ばし屋を実証しました。
母国の台湾を含め、米ツアー、日本ツアーで9年間の苦節を味わってきたテレサが、ここへきてようやく本領を発揮し始めました。センスのいいウエアもテレサの魅力ですが、最終日にビッグスコアを出して逆転劇を演じる″魅せるプロ〝ーです。

主戦場としたことのある米女子ツアー復帰は、今のところないようです。「日本が好き。台湾にも近いし・・。食べ物もおいしい。イタリアより食事は日本が上よ!」と、いまではすっかり日本びいきで、日本のシード選手になり切っています。今回の優勝で、日本ツアー通算5勝目。1800万円の優勝賞金を早くも獲得して今季はロケットスタートをみせました。
多勢の韓国パワーに対抗し、いまでは数少ない台湾パワーの先頭に立つ手ごわい選手がまた一人現れましたー。