今季国内ツアー唯一の出場となったダンロップフェニックス(宮崎・フェニックスCC)で世界ランク4位の松山英樹(25)が魅せました。最終日3番のパー3(180ヤード)で完ぺきなショットでホール・イン・ワン。ホールを取り巻いたギャラリーの大歓声は、コース中で聞こえるほどのフィバーでした。全米オープンチャンピオンでこの大会2連覇を目指したブルックス・ケプカ(27=米)が、通算20アンダーの強さで完全優勝の2連覇。最終日、69で回った松山英樹は10打差をつけられて通算10アンダー5位に終わりました。一年一度の日本のファンは″世界の英樹〝に酔いしれましたが・・。松山の今季は、30日開幕のタイガー・ウッズがホストを務める慈善大会「ヒーロー・ワールドチャレンジ」(バハマ)が最後となります。
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ピンまで最終日の実測175ヤードのパー3。8番アイアンで放った松山の1打は、ピンに真っ直ぐ伸び、グリーンギリギリのカラーに落ちると手前に切られたカップへ向かって3㍍ほど転がり、ストンと消えました。左手にクラブを持った両手を水平に広げ″入ったのか〝と確かめるように目をぎょろつかせる英樹。グリーン周りからの大歓声で初めてのエースを実感しました。
「ピンに真っ直ぐに狙った。(手前の)バンカーは越える自信はあったし、ぎりぎりいいところに落ちたから″入っちゃえ〝と思ったら消えた。一瞬、間があったので入らなかったのかなと思ったけど、そのあと歓声が上がったんでよかった。ホールインワンやったら、みんながフワフワするみたいといっていたけど、初めてフワフワ感が分かりましたね」(英樹)
最終組のケプカは、2番ホールで英樹の大歓声を聞いた直後に右のバンカーから直接入れるバーディーを奪いました。したたかな男です。「凄い歓声がして、多分英樹が何かやったんだろう、と想像はつきました。でも自分のプレーに影響を与えることはなかったよ」とケプカ。石川遼は18番にいたときに大歓声が響きました。「セカンドが入ったのかなと思いました。でも(あの歓声は)バーディーではないなと思いましたね」と遼。
とにかくコースにいたみんなが、松山のスーパーショットに目を白黒させた一瞬でした。
プライベートも含め3回目の松山のエースですが、トーナメントでやったのは初体験。スコアも「1」が記録されるイーグルだけに本人もうれしい出来事。4日間を通じて「今年はいいプレーっていうのがほとんどなかった」(英樹)中で、最後に″奇跡の一打〝を見せられてギャラリーが湧いたのが嬉しかったのでしょう。「気持ちがホッとしました」と、笑顔を隠さなかった英樹です。この日は1番でバーディースタート。3番ではホール・イン・ワンと快調な出足をみせて、8打差がついていたケプカ追撃を始めましたが、いま一つ乗り切れませんでした。
エースをとった次の4番パー5でもバーディーをとれず弾みをつけられません。続く5番(パー4)からは「ドライバーがなかなかうまく打てなくなってしまった。次のパー3(6番)も3パット。この3ホールがもったいなかったですね」(英樹)。ホール・イン・ワンをやった直後の3ホールで1オーバーして乗り切れなかったあたりが、勝負の難しさ、メンタル面の微妙さというところでしょう。それでも気持ちの落ち着いた12、13番で連続バーディーをとり、15番では8㍍の長いバーディーパットを決める回復をみせましたが、最後大詰め17番(パー3)でまた3パットボギー。イーグルも狙える最終18番(パー5)でも2㍍弱のバーディーパットもミスしてパーに終わるなど、ゴルフの難しさをたっぷりと味わいました。
「やっぱり練習が足りないのか、それを続ける力が足りないというか、試合でやってみないと分からない部分があるのがよくわかった。いい一週間だったなっていう感じですね」と反省を忘れない松山。さらに「スイングの修正をしている最中だけど、いいショットを打てたときの感じが、自分が理想としている″これだったら安心できる〝っていうところにきている。その回数を増やさないといけない。その差が(ケプカとの)10打差になっているんじゃないですかね。そのためには球数を打たないといけない。まあ、1ヵ月で2万球くらい打とうかなと思います」と、スイング改造中で目下しゃにむに打ち込んでいる僚友石川遼のコメントを意識した発言で笑いを誘っていました。松山も来年4月のマスターズに向けてスイングのフィーリングを「変えている」という段階。スイング改造と言われるのは、大げさ過ぎるといっていますが「いまから早めにやらないといけない問題。それが出来れば、アプローチやパットにもつながると思う」と、悲願のメジャー制覇に向けての意気込みはかなりのものです。
松山英樹。愛媛県松山生まれ。日本アマ出場経験のある父・幹男さんの手ほどきでゴルフを覚え、明徳義塾高時代に日本ジュニアなどに優勝。東北福祉大1年の2010年にアジアアマに勝ち、日本人アマとして初めてマスターズの出場権を獲得。翌11年のマスターズでは27位に入ってローアマに輝く。12年も連続マスターズに出場して2年連続予選通過。プロ転向した13年は、国内でいきなり4勝して史上初のルーキー賞金王の快挙。海外でも全米OP10位、全英OP6位と日本男子初のメジャー2戦連続トップ10をマーク。14年から米ツアーを主戦場とし今年4年目を終わって5勝。世界ランキング4位と世界トップレベルのプレーヤーにのし上がりました。11月初めには来日したトランプ米大統領と安倍晋三首相と3人による親善ゴルフ(埼玉・霞ヶ関CC)でプレーするなど日本を代表するトップアスリートでもあります。
今季は米ツアーで3勝。賞金ランキング4位で838万570㌦(約9億3862万円)を稼ぎ、シーズン総合順位も8位。来季はまだ手にしていないメジャー制覇が英樹の悲願です。日本で今年は1試合しかプレーできませんでしたが「来年も日本でやる試合は1試合か2試合。スケジュールに余裕があれば3、4試合出れるかなと思っています」という。男子ツアーが低調を続けているいま、松山の出場試合が増えればツアーに盛り上がりが増えるのは間違いないところですが
米ツアーでもトッププレーヤーになった英樹の国内戦を期待するのは、まだまだ先のことでしょう。松山に続く新鋭の誕生に期待したいものですが・・。(了)