レギュラーツアー18勝の″いぶし銀〝の藤田寛之(51)が、シニアツアーデビュー。初日単独首位で発進しながら、2日間競技の最終日、スコアを一つも伸ばせず2打差の3位タイで悔しいデビュー戦Vを逃がしました。太平洋・御殿場コースで初めて行われたシニア戦「マルハンカップ・太平洋クラブシニア」を制したのは、シニア2年目の″苦労人〝篠崎紀夫(50)。通算9アンダーで並んだ塚田好宣(51)をプレーオフで下してのシニアツアー初勝利でした。シニア世代となった藤田寛之は、まだレギュラーツアーのれっきとしたシード選手(昨季賞金ランク25位)。主戦場はレギュラーに置いていますが、シニアの資格を得て両ツアーの狭間で気持ちの整理が難しそう。次戦の予定は9月3日からのレギュラー「フジサンケイ・クラシック(山梨・富士桜CC)」。シニア次戦のターゲットは、日本シニアオープン(9月17~20日、兵庫・鳴尾GC)。両ツアー制覇が成りますかどうか!?
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20代1勝、30代5勝、40代12勝・・年齢を重ねるごとに勝ち星が増してきた藤田寛之のゴルフ人生は、特異な経歴でもあります。2012年には年間4勝を挙げ、43歳にしてついに賞金王の座にも就きました。その12年の「日本シリーズ」では大会史上初の3連覇を達成。平均ストロークでも初めて1位に君臨しました。2度のマスターズプレーヤーも経験。13年には右わき腹の疲労骨折で苦しみましたが、それも克服、50歳になった19年は5年ぶりに優勝はなかったものの、5試合で5位以内に入るなど賞金ランクは25位をキープ。23年連続で賞金シードを維持するトッププレーヤーです。特に大きな飛距離はありませんが、168センチの小柄で独特のハイフィニッシュを身につけたショットメーカー。手堅いパッティングも武器に、史上6人目の生涯獲得賞金15億円突破の偉業も果たしています。昨年6月16日に50歳の誕生日を迎えた藤田は、その時点でシニアツアーも出場資格を得ましたが、デビュー戦は51歳になった今季に繰り越していました。
舞台となったマルハンカップ・太平洋クラブシニアは、昨年まで太平洋クラブ六甲コースで行われていましたが、今季初めて太平洋・御殿場コースに会場を変えて注目の1戦になっていました。また御殿場コースは、レギュラーツアーの三井住友VISA太平洋マスターズの舞台。藤田はこの大会、2003年には2位タイと健闘した思い出もあります。御殿場コースには、師匠である芹澤信雄のゴルフアカデミーが活動しており、藤田は何度も足を運んで練習ラウンドやスイングチェックを行っている親しみのある場所でもあります。
で、シニアデビュー戦となった大会初日、藤田は4つのパー5を全てとる9バーディーを量産。14番(パー4)でグリーン手前の池に落とすダブルボギーとしたものの「65」で回って堂々の単独首位に立ちました。1打差の2位には岡茂洋雄と塚田好宣がつけましたが、2日間競技で藤田の優位は不動と思えました。しかし、ゴルフは分かりません。一夜あけると、藤田のプレーが思うように展開しません。前日入ったパットが入りません。
「きょうはセフティーにいこうと思っていました。セフティ―にいっても後半に入って3つや4つはいけるという計算でしたけど、ショットやパットがコントロールできない感じになって逆に作用してしまった」(藤田)。
ゴルフとは微妙なもので安全にーと思うと逆作用が起きて自分のゴルフができなくなる。「自分がトップにいたので自分次第だと・・。4つ以上だったら勝てるかなと思っていた。自分がいいゴルフをすればいいという思いでしたが、それができなかった。2つは伸ばさないとダメですね。主戦場はレギュラーだと思っているから、頭の中がそうなんですね。シニアを主に考えていないんですね。ゴルフも違います。スピードやセッティングも違いますしね。シニアの試合に出続けるのもどうかなという気落ちもあるんですが、こういう試合がないと普段の練習に身が入らない。今回も、違うといいながら緊張したし、プレッシャーの中でショットやパットを打つのはやはり実戦、本番じゃないとダメですから、出てこないといけないなと思います。実際お客さんに見てもらっているのは凄く嬉しいです」
レギュラーとシニアの狭間に立ち、あれこれ考え過ぎて自分のゴルフを失ってしまったという藤田プロ。「今回は御殿場なので出たいと思ってお願いしましたが、自分はどこまでお願いできる立場なのか。自分の立場ってなんだろうという思いがあります。レギュラーが主戦場といっておいてわからないですね。シニアの人たちはシニアとしてちゃんと出ていますし、同じプロとしてどこまで・・と考えるところはありますね。自分はレギュラーなんで、シニアは出たい試合だけ出ればいいんじゃないですかね。ダメですか(笑)」
次戦はレギュラーツアーで9月3日開幕の「フジサンケイ・クラシック」。「こんなのではレギュラーにいっても予選も通らない。練習してコンデイションを上げるしかないです」(藤田)。シニア世代には入ったものの、まだ頭の中や体が切り替わらない難しさを藤田プロは訴えました。心の痛む逆転負けだったようです。
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レギュラーツアーでは2007年9月のANAオープン、37歳で1勝。昨年から参加のシニアツアーは2年目50歳でシニア初優勝の篠崎紀夫(50)。
「調子は上がっていたけどまさか優勝できるとは。同期の藤田クンがまだレギュラーで活躍してる選手なので、どれだけ追いつけるかという気持ちでやっていた。(今年3月のシニア予選会で)1位通過して今年の最初の目標をクリア。でも、コロナでどんどん試合がなくなっていき、周りからは残念だねといわれるんですけど、試合がないわけではないし・・。まあこんなに早く勝てるとは思ってもいなかった。自分は北谷津という練習場で育ったのでラウンドはしなかってけど、3密を避けながらゴルフ練習はずっとできていました。18番は奥のカラーから6㍍くらいあった下りが入ってくれた(これでプレーオフとなって逆転勝ち)。次はエージシュートができればいいですね」 (了)