宮崎市のトム・ワトソンGCを舞台に12月7日から4日間「男子ファイナルクォリファイング・トーナメント(最終QT)」が行われました。来季のツアー出場権のない選手たちが血まなこになって戦う過酷な戦い。前週、3会場で行われた3次QTを勝ち抜いた83人を含むシードを落としたツアープレヤーにアマチュア1人の計93選手が集いました。3次QT通過後にプロ宣言した平田憲聖(ひらた・けんせい=大阪学院大3年)や河本力(日体大4年、21=姉は女子プロの河本結)ら。唯一のアマチュアとして出場した米澤蓮(東北福祉大4年生)は、今年の日本オープンベストアマ。、注目の若者が多かった中に、ひとり53歳、今季レギュラーツアーのシードを逃がした手嶋多一の姿がありました。ヤング連に交じって27年ぶりに受けたQT。結果は3オーバー、29位と微妙な位置に終わり「もし出れなかったらチャレンジ(AbemaTVツアー)に出て、もう一度チャンスをつかみたい」と、53歳はレギュラーツアーへの執念をのぞかせました。泣き笑い、ゴルフ界のシビアな舞台をのぞきました。
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「変なドキドキ感があったね。一緒に回る選手の緊張感も伝わってきたし・・」と振りかえったプロ29年目の手嶋。最終QTは2日目に77をたたいて順位を落としたのが痛く、上位に食い込めませんでした。日本オープン(01年)、日本プロ(14年)。そして21年は日本シ二アオープンと日本のメジャーを総なめにしてきたレギュラー通算8勝のレジェンド手嶋。いまではレギュラー、シニア両ツアーを掛け持ちで行き来している“ゴルフの虫”です。18、19年に22年間守ってきたレギュラーのシード権を落とし、20~21年統合シーズンは、一度だけ使える「生涯獲得賞金ランク上位25位」の資格でレギュラーをプレーしましたが、賞金ランク74位で来季の出場権を失ったのです。
もうシニア1本でいけばいいのにーと思うのは凡人のあさはかさでしょうか?今季はレギュラー24試合、シニア7試合に参戦。レギュラーツアーの合間にシニアを入れるハードなスケジュールをこなし「ちょっと試合に出すぎたかな。脳疲労なのかな、大事なところでボーッとした」と、苦笑することも。9月の日本シニアオープン(優勝)を挟んで14連戦を強行。53歳とは思えぬ不死身さで、レギュラー(賞金ランク74位)1031万6737円。シニア(賞金ランク7位)2015万1050円を稼ぎました。
例年ならシーズン前半はほぼ出られる順位ですが、来季はコロナ禍で入国できなかった外国選手に特別保障制度の枠が用意されるため、例年通りの出場試合数は望めない可能性があります。
「それならそれで、Abema(下部ツアー)に行ってまた這い上がってきたい。工夫すれば、まだ(レギュラーで)やれると思うから」と、手嶋の上を見る意欲はハンパじゃありません。
来季もAbema、シニア、レギュラーと、どこかでは「手嶋多一」を見られるでしょう。
一方、ファイナルQTトップ通過のアンドルー・エバンス(豪)に次いで、日本勢最上位の2位で通過したのは、大阪学院大3年、21歳の平田憲聖。前半2日間は70台でしたが、後半2日間は連続60台をマーク。通算7アンダーでトップとは1打差のフィニッシュでした。今年8月の日本学生選手権をとった“学生日本一”。22年度のレギュラーツアー参戦権を手にした大学生ツアープロとなった平田は、世界アマランク1位の中島啓太(日体大3年)と同学年。来季は人気を2分するであろう期待の星です。
幼い頃からの夢が突然かなったこの平田は、3次QTを通過した12月6日に日本ゴルフツアー機構(JGTO)にプロ転向届けを提出しました。11月26日に21歳になったばかり。中島啓太には先んじてプロへの道に飛び込んだその意気やよし。今年の男子ツアーでは大学の先輩、木下稜介が賞金ランク3位に入る大ブレークしたのもうれしい。「みんなに魅せるゴルフができるプロになりたい。まだ実感はないけど、プロに転向するのに躊躇はなかったです」とキッパリ。人生新しい戦いのスタートラインに登場した楽しみなルーキーです。
3次QT後にプロ転向宣言をした河本力(日体大)は、通算11オーバーで74位。唯一のアマチュアで挑戦した米澤蓮(東北福祉大)は通算7オーバー55位で出場権獲得はなりませんでした。塩見好輝(91位)、藤本佳則(92位)らのシード選手が不振だったのも悔やまれます。最終QT、トップ通過者は翌年のツアートーナメントに年間出場資格。また上位20位あたりまでがツアー出場のチャンスをもらえます。待ち遠しい新シーズンです。
(了)