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★アジアンツアー「オマーン」を制した金谷拓実(24)! 欧州ツアー「タイランド」で優勝戦線を戦った比嘉一貴(27)は次週「インド」へ!いま日本勢は何を求めて中東・アジアへ向かうのか!?

アジアンツアー「インターナショナル・オマーン」を圧倒的な強さで制した金谷拓実。海浜でうれしい優勝カップを掲げる(オマーン)=提供:アジアンツアー=

国内男子ツアーの開幕がまだ遠い(3月30日)いま、欧州・アジアツアーへ目を向ける日本の若手群像が増えています。2月に入ってビッグニュースが飛び込んできました。金谷拓実(24)が、アジアンツアー「インターナショナルシリーズ・オマーン」で同ツアー初優勝という快挙でした。高額賞金大会で金谷は36万ドル(約4700万円)の優勝賞金を手にしました。この試合には10人の日本勢が参戦し、久常涼、木下稜介が7位タイ、比嘉一貴は13位に入る賑わいでした。翌週、今度は欧州ツアー「タイランド・クラシック」(タイ)では比嘉一貴(27)が優勝争いを演じる奮闘。日本の賞金王の意地をみせました。この時期、中東・アジアでは2月~12月をシーズンとしているアジアンツアー(本部・シンガポール)を中心に、欧州ツアー(DPワールドツアー)も入り混じってゴルフトーナメントラッシュを呈します。話題のルーキー蝉川泰果(22)も米ツアー3試合に出場したあと中東戦線に参入、注目でしたがシンガポール(60位)、タイ(予選落ち)と意外な結果に終わりました。いま、日本勢は何を求めて中東へ向かうのでしょうか!

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常にフルスイングで天才的なショットを見せる金谷拓実。

国内のゴルフ界をアッといわせた金谷拓実のアジアンツアー優勝。勝ったインターナショナルシリーズは、「LIVゴルフ」で知られるサウジアラビア政府系ファンドの支援を受けており、賞金総額200万ドル級の高額賞金が用意されています。この試合、2日目にトップに立った金谷は、最終日久常涼に1差と迫られてのスタートでしたが「71」で回り、最後は2位に4差をつけ通算10アンダーで逃げ切りました。セルヒオ・ガルシアら世界の一流選手も出場している中東での海外初優勝。「タフなコンディションの中で、自分らしいゴルフができれば勝てると信じてやった。嬉しい」と金谷。  20年10月にプロ転向。すでに国内ツアー3勝、21年は賞金ランク2位の実績を持つ実力者。昨年から欧州・アジアンツアーに軸足を置いて戦ってきた成果を出しました。21年開幕戦「東建ホームメイト」以来、2年ぶりの勝星でしたが、今季はまた一段大きくなって、金谷は天才肌のゴルフをみせてくれそうです。

 

日本の賞金王の資格で欧州ツアーに参戦の比嘉一貴。「タイ・クラシック」では優勝争いに絡む大健闘。前週のアジアンツアー「オマーン」では13位と、中東でも安定ゴルフをみせた。

金谷の快挙に勢いをもらったように翌週(2.16~19)、比嘉一貴が「タイランド・クラシック」(欧州ツアー)でブレーク。初日53位から2日目、ボギーなしの「64」で一気に3打差3位に浮上。日本人の連続優勝も期待されましたが、4打差5位から出た最終日にスコアを伸ばせず惜しくも11位でのフィニッシュでした。「自分はいつも後半伸ばすゴルフなのに、今週は一つのボギーから立ち直れなかった」と、反省しきり。次週はインドへ飛び「ヒーローインディアン・オープン」(欧州ツアー、2.23~26)が控えます。「今度のコースはすごいトリッキーらしい。しっかり休んで体を整え次にのぞみます」(比嘉)。国から国へと移動していくハードスケジュールとも取り組む比嘉の旅です。一方、金谷は「サウジ」(35位)「オマーン」(優勝)「タイ」(28位)の3連戦を終えて一旦帰国。「少しずつ前に進んでいる感覚がある。今度は国内開幕戦に向けてしっかり調整します」と3月30日開幕の国内開幕戦「東建ホームメイト杯」を目指します。

中東には詳しい谷原秀人。アジアンツアー「カタール」ではベテランらしいゴルフをみせて
上位で争った。

また、「タイ・クラシック」と同じ週にはアジアンツアー「インターナショナルシリーズ・カタール」がカタール・ドーハGCで行われ、谷原秀人、木下稜介、久常涼、堀川未来夢、香妻陣一朗、池村寛世ら。それに米下部ツアー(コーンフェリー・ツアー)で予選落ちしたばかりの大西魁斗も遠路参戦するなど、日本勢9人が挑戦。ベテラン谷原秀人(44)が日本人最上位トップ10に入る踏ん張りをみせました。

日本選手の中東戦線への参戦が増えてきた要因の一つは、欧州ツアーと日本ツアーとの“接近”があげられます。昨年12月には、日本ゴルフツアーの賞金ランク上位3人に22~23年の欧州・DPワールドツアー出場権が付与されることが発表されました。この決定を受けて昨季の賞金王比嘉一貴以下、星野陸也(2位)、岩崎亜久竜(3位)のトップ3は揃って今春中東に向かったのです。ただし出場権が全試合にあるのではなく、出場順位をウエーティングで待たなければならないのが大変ですが、国内ではまだ試合がないこの時期、若者たちはビッグマネーと経験を求めて中東・アジアに足を向けるのです。ツアー序盤の2月1週目「ラアス・アルハイマ選手権」(UAE)にまず出場できた比嘉は36位。星野は「ラアス・アルハイマ」6位と健闘したあと連戦の「シンガポール・クラシック}では予選落ち。岩崎亜久竜も「シンガポール」の予選通過は成りませんでした。比嘉の2試合目は金谷が優勝したアジアンツアー「インターナショナルシリーズ・オマーン」の方を選び、13位でした。

 

米ツアー3戦のあと、欧州ツアーにも初参戦した蝉川泰果。その2試合ともプロの厳しさを味わった(シンガポール・クラシックで)

欧州ツアーに目を向ける日本人は、以前から少なくありませんでした。スポット参戦する選手

や、谷原秀人など18~19年は欧州ツアーを本拠にした経験があります。最近では“旅人ゴルファー”といわれる川村昌弘(29)が、プロ転向直後から足場をアジア・欧州にひろげ、18年には欧州ツアーのQスクールを突破して19年以降、欧州ツアーのシードをキープしています。今春も欧州・アジア各試合にエントリーして活躍していますが、今年注目の一人はスーパールーキー、蝉川泰果(22)でした。ソニーオープン(ハワイ)など米ツアー3試合で苦戦したあと、出直しの欧州ツアーで立ち直れたかどうか。欧州デビュー戦の「シンガポール・クラシック」で予選はクリアしたものの60位と振るわず、2戦目の「タイランド・クラシック」はアンダーパーを出せず4オーバーで予選落ち。300ヤード超の飛ばし屋も、ただ飛ぶだけでは難コースは攻略できないことを痛感したことでしょう。苦汁の連続に終わったプロスタートの海外遠征1ヵ月余り。この体験を今後の良薬にできるかどうかです【蝉川の米・欧ツアーデビュー5戦=67位、予落、67位、60位、予落】。

近年、欧州ツアー⇒米ツアーの優遇措置もあり、欧州ツアーを足場に米ツアーを狙っている選手も少なくありません。今季4月には日本ツアーの開幕第3戦は「ISPS HANDA欧州・日本どちらが勝つかトーナメント」(茨城・石岡)が開催されます。初めて欧州ツアーを日本に招いての共催による公式ツアーです。近くなった日本⇔欧州。ゴルフ界のワールドワイド化はますます密になるようです。

(了)