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★目覚めた新鋭・蝉川泰果(22)、プロ6戦目で圧巻の初勝利!「関西オープン」で 昨年のリベンジ果たす。

“優勝請負人”清水重憲キャディーと抱き合ってプロ初勝利を喜ぶ蝉川泰果(大阪・泉ヶ丘CC)

しばらく鳴りをひそめていた蝉川泰果(22=東北福祉大出)が、ついにプロ初勝利を挙げ国内男子ツアーに“喝”を入れました。日本最古のトーナメントといわれる「関西オープン」(大阪・泉ヶ丘CC、パー71)3日目に「64」と得意の爆発力を発揮して単独1位に浮上すると、最終日も手堅く4アンダー「67」と伸ばし、通算17アンダーで2位に4打差をつけての圧巻の逆転Vでした。アマ時代に挙げた2勝(パナソニックOP、日本OP)に続き、昨年10月プロ転向以来、国内プロツアー6戦目での初勝利。優勝賞金は1600万円と高額ではありませんが、プロとしての初勲章を得て蝉川泰果の本領はいよいよ発揮されそう。次週、欧州ツアー(DPワールドツアー)・日本ツアー共催の「ISPS欧州・日本どちらが勝つかトーナメント」(茨城・PGM石岡GC)でも“目玉選手”となって試合を盛り上げそうです。

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日本最古のツアー「関西オープン」。悔しい思いをした昨年のリベンジを果たして優勝カップを抱く蝉川泰果。

蝉川には1年前の忘れられない記憶がありました。同じ「関西オープン」。コースは今年とは違って「兵庫よみうり」でしたが、アマチュアで出た蝉川は2日目に単独トップ。最終日は最終組、3位スタートで史上6人目のアマチュアVを狙いながら「77」と崩れ(17位)、試合後は号泣した苦い思い出です。あれから1年。今年はプロとして再び首位を走ってきた最終ホール。3打のリードを保ってはいたものの、このパー5のホールをどう攻めるか。思えばプロ転向2戦目、11月の「三井住友VISA太平洋」でも3日目首位に立ちながら3打のリードを守れず「76」の失速。8位に転落してプロ初優勝を逃がし「実力が足りない」と嘆いた過去も重なります。
プロなって再び迎えたこの場面。蝉川は攻めのゴルフを貫きました。18番のティーショットを打ち終わったあと「もうめちゃくちゃ泣きそうでした」という。
「プロとして本当に初優勝できるのかなと。三井住友での悔し泣きした悪いイメージもあって、それだけに優勝したかったですね。リベンジをしたい気持ち。それに尽きますね。去年の関西オープンの自分とでは、すごく成長したんじゃないかと思ってます。グリーンもスピードが日ごとに速くなって、素晴らしいコンディションの中で勝てたのが本当に嬉しいです」

満面の笑みで優勝インタビューに答える蝉川泰果。(大阪・泉ヶ丘CCでの関西オープン)

最後は1メートルのバーディーチャンスを作り、これも慎重に決め最終ホールをバーディーで締める成長ぶり。最終ラウンドも5バーディー、1ボギーの安定したゴルフでした。今週バッグを担いでくれたのはベテランの清水重憲キャディー(48)。谷口徹や女子のイ・ボミ、上田桃子らが賞金(女)王になった時のキャディーで、男女ツアー通算39勝の“優勝請負人”です。今回は蝉川から連絡を入れて依頼し、今大会を含めて5試合でタッグを組む予定だという。「グリーンの読みもすごくて、的確なアドバイスをもらえている」(蝉川)と、心強い相棒と巡り合えたのも大きい。今週は昨年使っていたパターに変えたのもいいフィーリングが戻った原因のようですが、首位を奪った3日目など雨中戦でも好パットを連発、大量9バーディーを奪いました。

今年はプロになって国内本格ツアー参戦の年。年明けからハワイでの「ソニーオープン」(67位)をはじめ米本土に渡って「アメリカンエキスプレス」(予落)、「ファーマーズ・インシュアランス」(67位)。欧州ツアーに飛んで「シンガポール・クラシック」(60位)、「タイランド・クラシック」(予落)と海外5戦に挑戦しましたが、いいところなく“敗退”でした。しかし負け戦の中で得た貴重な経験は大きかったのでしょう。国内に戻って約1ヵ月半。みっちりと練習をし直した成果はてきめんでした。国内開幕の「東建」は13アンダーで11位。そして第2戦の「関西オープン」での17アンダーを出しての圧勝につなげました。

300ヤード超ドライブを武器とする蝉川泰果だが「ムチャ振りはしない」変化も!プロの辛酸をなめて進化する蝉川だ。

いま国内男子の勢力図は「蝉川泰果・中島啓太時代」へと移り変わろうとしています。昨年10月アマチュアとして国内最高峰の「日本オープン」を制した実力は伊達ではありません。300ヤード超のロングヒッター。“飛ばして曲がらない”といわれた蝉川のゴルフは魅力に富んでいます。攻めのゴルフに徹した蝉川ですが、この半年間で「攻め方でムチャはしなくなった。攻める守るのけじめをつけられるようになった」といわれます。今回の泉ヶ丘CCも起伏が強い関西特有のコースで、攻めどころが絞られるコースでした。その舞台で3日目などは「64」をマークした蝉川の爆発力は、成長した男の何よりの実証でしょう。

蝉川の「所属」はまだフリーですが、今年3月には引越し専業会社の「アート引越しセンター」とスポンサー契約を交わしました。キャップやバッグなどに同社のロゴを掲出。さまざまなマーケティング活動や広告キャンペーンに登場しますが、プロとしてスタートする蝉川の全面的なバックアップ体制も整ってきました。

同年の中島啓太とは何かと比較される二人。今季はともにプロとなって“蝉川・中島時代”の花を咲かせられるか?!

これからの目標も「複数回優勝を目指すことですね。それと去年の関西オープンで優勝した比嘉(一貴)選手が賞金王を獲っているので自分もそこを目指して頑張っていきたいですね」と、早くも狙いは日本一であることを明言しています。

名前の「泰果(タイガ)」の由来は、タイガー・ウッズ。同い年の同僚、中島啓太(22、日体大出)も「東建ホームメイト」8位、「関西オープン」9位とトップテンに入っており、今季蝉川との駆け引きは男子ツアーの大きな見どころとなりそうです。低迷続きの国内男子に活気を注入できるか、ご両人!です。

(了)