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「ピンポジ次第でこんなに難しくなるんだな」と、優勝圏外に脱落の星野陸也ー。欧州ツアーの“厳しさ”を肌で感じた日本男子ゴルフ!

 

最終日、優勝へ2打差を追ったが、スイングを乱して「75」と苦戦した星野陸也。(#10フェアウェイ)

日本で初めて行われた欧州ツアー(DPワールドツアー)。日本ゴルフツアー機構との共催試合はヨーロッパと日本のトッププロたちが参加し、ともに両ツアーの賞金ランク加算試合で注目の国際大会でした。ISPS(国際スポーツ振興協会)がスポンサーとなり、名づけて「ISPSハンダ 欧州・日本どっちが勝つか トーナメント」(茨城・石岡GC 7039ヤード、パー70)。金谷拓実と星野陸也が2差4位で最終日を迎えるという緊迫した展開でしたが、終わってみれば日本勢は優勝圏外に去り、オーストラリアの27歳、ルーカス・ハーバートが通算15アンダーで並んだアーロン・コカリル(カナダ)をプレーオフ2ホール目で制して歴史的な大会の初代王者に。優勝賞金は4420.3万円。日本勢の最上位は岩田寛の4位。金谷拓実は中島啓太らと12位タイ。星野陸也は「75」と失速して23位タイのフィニッシュとなり、“世界の壁”の高さ・悔しさを一身の浴びる結果となりました。(この試合、世界ゴルフランキングへの評価は高く、日本オープンやダンロップフェニックスの2倍を上回るポイントが付加されます)。

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たくましいゴルフで最終日、タフなコースを攻め抜いたハーバート(左)と見つめる星野陸也(右)=茨城・石岡GC、#10フェアウェイ=

トップへ2打差と迫り、最終日の逆転勝利を夢見た星野陸也のショックは大きかったー。会場は自宅から「車で30分」という地元開催。勝手知ったる石岡GCは、昨年大会(日本単独の大会)は通算23アンダーで1打差2位の好位置で終わっています。今回、それでも3日目までは何とか60台を保ち、連続60台のラウンド記録も「17」と伸ばしていたのです。その星野に“最終日の恐怖”が立ちはだかります。欧州ツアー仕様“世界基準”の芝生の管理から始まっていたこの大会。コースセッティング、ピンポジションは最終日に向かって厳しさが加わりました。晴天続きで速さを増したグリーンの端、端に切られたピンポジション。最終日を迎えた選手の緊張度も加われば、コースの難易度はよりシビアに変化します。
ボギーを先行させた星野のゴルフは「なかなかアンダーパーに持っていけなかった。焦りも加わり途中から自分のショットの精度に自信がなくなってきた」と星野。いつもの日本ツアーではありえないようなピンポジションも選手を追いつめていきました。
「いままで経験した大会のなかでも、一番グリーンは硬く、ピンポジもシビアだった。ピンポジ次第でこんなに難しくなるんだなと・・」(星野)。また石川遼も「日本のツアーもエッジからの距離が短いケースもあるが、そういう時は奥と手前に許容される部分がある。エッジまでの距離も縦距離のブレも両方許さない設定は、厳しいがしかし選手を育てることになる」といっています。コースの難易度やセッティングは、それほどにゴルフを変えてしまうのです。

 

星野陸也とともに2打差を追った最終日。得意のショット、パットに苦しんだ金谷拓実。12位タイに終わった。

最終日、星野は優勝したルーカス・ハーバートと2人組で一緒に回りました。ズルズルと後退する星野に比べ、ハーバートはたくましい攻めのゴルフをみせて“差”を見せつけました。
18番繰り返しのプレーオフは2ホール目。ハーバートはティーショットを大きく右に曲げて林の中。相手のコカリルはフェアウェイ。大ピンチのハーバートでしたが、ボールがギャラリーに触れてカート道の上。救済を受け、前にあった立ち木を避けたところにドロップ。ベアグラウンドからでしたが、ウエッジのフルショットでカップ3.5メートルにぴたりと止まるスーパーリカバリーでした。先に打ってバーディーパットを外したコカリルをみて「手が震えた」というウィニングパットを決めたハーバートの快勝でした。

 

決勝2日間、アーニー・エルスと同組で回った石川遼。収穫は多かった。左は石川遼のショットを見つめるエルス(#10テイーで)

豪州の選手ですが、いまや世界を股にかけてプレーするハーバートは2018年から欧州ツアーでシード選手。20年に「オメガ・ドバイデザート・クラシック」で初優勝。21年「バミューダ選手権」で米ツアー1勝。現在は米ツアーを主戦場としています。今回の優勝で欧州ツアー3勝目。世界ランク59位でしたが、このVでランクははね上がるでしょう。日本にはアマチュア時代「日本オープン」、プロになってからは「アジアパシフィック・ダイヤモンドカップ」でプレーしたことがあります。今回の優勝で日本ツアーのシード権も得ました。「またチャンスがあれば日本でプレーもしたい」とコメントしています。豪州勢では「アダム・スコットがヒーロー」ともいっていますが、キャメロン・スミス(22年の全英覇者)に続く豪州のつわものの一人といえそうです。

星野は「ハーバートとは5、6年前に一度回ったことがあるが、今度日本で久々に回ってすごくいいゴルフをしているので、ただただ悔しい思いです。この悔しさをバネにしていきたい」と、自らにいい聞かせています。

 

優勝カブトをかぶって喜ぶハーバート(中)とISPS半田晴久会長(左)、青木功JGTO会長(右)=茨城・石岡GC

日本で行われた初めての欧州ツアー。米ツアーだけでなく欧州ゴルフのレベルの高さも身をもって実感した日本勢です。欧州ゴルフの日本開催に尽力したISPS半田晴久会長は「この大会、3年間はやる(コースは未定)。日本男子ゴルフの活性化と発展につなげられればいうことはない」と、明言しています。
また、会場では表彰式に続いてイリュ―ジョンの「プリンセス天功」野外ステージのパフォーマンスを頂点に、中国雑技団、ドッグ・モンキーショーなど動物たちのパフォーマンス等、ゴルフトーナメントと豪華エンターテイメントを融合させたイベントでギャラリーを楽しませました。
ISPSはすでにこの種のイベントをゴルフトーナメントとドッキングさせていますが、これも
ゴルフツアーの新しい営業スタイルといえるでしょう。ドバイでの欧州ツアーで、昨年はコンサートと並行開催した実績があるようです。

(了)