Monthly Archives: 4月 2024

「バックナインでは手も震えていた。強い気持ちでやった」!ー大逆転Vで再び海外挑戦への扉、こじ開けた桂川有人(25)  

所属先のオーナーでもあり大会スポンサー、ISPS半田晴久会長(左)と喜びの握手を交わす桂川有(右)。=静岡・太平洋クラブ御殿場コース(提供:JGTO)

167センチの飛ばし屋・桂川有人(ゆうと 25)が、欧州ツアーと日本ツアーの共催大会、ISPSハンダ「欧州・日本どっちが勝つかトーナメント」で、劇的逆転優勝を遂げました!並みいる欧州勢を抑えての大会日本人初優勝。日本、欧州(今季を含め3年)両ツアーのシード権を獲得する快挙です。3打差8位から出た桂川の最終日、7バーディー、ボギーなしの「63」で回り、通算17アンダーで2年ぶりの日本ツアー2勝目。富士山をバックに毎秋行われている「三井住友VISA太平洋マスターズ」の太平洋クラブ御殿場コース(パー70)を舞台に、桂川が演じたドラマは見ごたえ十分でした。欧州ツアーを制した日本勢では青木功、松山英樹、久常涼、星野陸也、中島啓太に続く6人目。国内ツアーでは最高額となる優勝賞金38万2500ドル(約5448万円)も獲得。欧州ツアー経由米ツアー挑戦という海外への扉を、力強くこじ開けました。

☆★      ☆★      ☆★      ☆★

大勢のギャラリー、報道陣に囲まれてホールアウトする桂川有人(「欧州・日本どっちが勝つか」・太平洋クラブ御殿場)

波乱万丈の桂川のゴルフ人生にまた大きな1ページが印されました。多数の欧州勢を迎えた欧日共催大会。昨年の茨城・石岡での第1回大会に続くビッグイベントは、初日濃霧のため開始が2時間50分遅れ、最後はサスペンデッドとなるハプニングでした。残り2ホールを翌日に持ち越した桂川は1R「70」で予選通過圏外の83位のスタート。2日目「65」で一気に17位に浮上。3日目も「65」を連発して8位へと急階段をのし上がってきました。首位へは3打差で迎えた最終日。欧州ツアーのコースセッティングでピン位置も難しいこの日。午前中から3、6番とバーディーを連発。午後に入った10番(パー4)で2㍍を入れて遂に単独首位。15番(パー4)は10㍍超のロングパットを沈め、16番(パー4)ではグリーンエッジに外した5㍍をパターで次々に決めて3連続バーディー。「15番で70ヤードから10㍍にしか寄せられなかったのに、それが入ってくれたのが大きかった。自分でもびっくりした。次の16番でもその流れでバーディー。ゾーンに入ってた感じだった」と振りかえりました。まさに“猛追”のバックナイン。爆発力のある“桂川ゴルフ”の本領がこの大事な試合で発揮されました。難しい17番(パー3)、池越えの18番(パー5)も慎重にパーキープ。ノーボギーのゴルフを完遂して2位には3打差をつけてのゴールでした。

 

167センチながら300ヤードを放つ飛ばし屋・桂川有人。武器のひとつだ。(JGTO提供)

愛知・清須市生まれ。通信制の愛知・ルネサンス豊田高から日大へ進みますが、高校時代にはフィリピン・マニラ近郊へ3年間ゴルフ留学。当時から海外志向が強かった有人クン。帰国後は日大に進学。1年生から優勝争いを繰り返し、2018年の「日本学生」では2日目に「60」を記録して優勝。ナショナルチームでも活躍し、19年の「ネイバーズトロフィー」では団体、個人の2冠を制して20年にプロ宣言。ABEMAツアー(下部ツアー)でも勝ち、22年は開幕4戦目。コロナ禍で日本単独開催となったISPS主催の「欧州・日本トーナメント」(PGM石岡)でツアー初優勝。この年は賞金ランク5位で最優秀新人賞を受けています。23年はQTから挑戦した米下部の「コーンフェリーツアー」を主戦場とし、1年間苦労のシーズンを送った末、“当確”にはほど遠いポイントランク130位。米国ツアーの出場権を得ることはできず、今季は帰国して「日本に専念」を宣言。開幕2戦目でいきなり大きな勝利を手にしました。国内での2勝はともに所属のISPS(国際スポーツ振興協会)が主催するホストプロとしての栄冠。半田晴久会長を喜ばす大会としました。

ISPS恒例の優勝カブトをかぶる桂川有人(太平洋御殿場)。

海外志向が強い桂川ですが、その性格は優しくてだれからも愛される柔和な男。特別な気負いもみせず、ごく自然体で生きていくプロといった感じです。スポンサーの半田晴久ISPS会長とともに大会の記者発表会に出席した桂川は「この大会は欧州からも大勢いいプレーヤーが来るし、ホストプロとしてもぜひ勝ちたいですね」と桂川は静かな口調で語っていました。

「これで欧州ツアーに参戦できると思うとすごく嬉しい。バックナインでは緊張で手も震えていたが、強い気持ちを持ってやった。この優勝をきっかけに2勝、3勝して、世界で活躍するプレーヤーを目指したい。上へ上へ高いステージに上がるために練習を重ねてきたカイがあった。欧州ツアーでランキングトップ10に入ると米ツアーに行けるのでそこを目指してやっていきたい。欧州はあまり行ったことがないので大変ですけど・・。昨年はアメリカでいい結果はでなかったが、後悔はしていない。自信がついた部分もあった。それがきょうの優勝につながったと思う」(桂川)。

桂川は今季から松山英樹のコーチも務めた目澤秀憲氏と契約を結び、ショートゲームやドローボール、フェードボールの精査に精力をつぎ込んできたという。この大きな勝利で、海外への道が再び見えてきた有人。準備が整い次第、欧州へ旅立つ予定とかですが、欧州ツアー(DPワールドツアー)参入の前に、次週は地元開催の「中日クラウンズ」が控えます。「欧州」を会心のプレーで制した桂川が、次、どんなゴルフをみせるか。見ものです。

(了)